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【コラム】望遠鏡のはなし|ハワイのすばる望遠鏡

人類は古くから夜空を見上げ、宇宙の謎に想いを馳せてきた。その探求は「より遠く、より詳細に見る」ための技術革新として結実し、今なお続いている。地球を離れ、宇宙空間から観測する望遠鏡もあれば、地上に設置しながら高度な技術で大気の揺らぎを克服し、鮮明な宇宙の姿を捉える望遠鏡もある。その代表が、ハワイ・マウナケア山頂に設置された「すばる望遠鏡」だ。

標高4,200メートル。ハワイ諸島最高峰マウナケア山は、世界有数の天文観測地として知られる。この山頂に、日本が誇るスバル望遠鏡がそびえ立つ。直径8.2メートルの巨大な単一主鏡を備えた光学・赤外線望遠鏡で、1999年から本格的な観測を開始した。開発・運用は国立天文台が担っている。

すばる望遠鏡の真骨頂は、その巨大な単一鏡にある。多くの大型望遠鏡が、重量や製造技術の制約から主鏡を複数に分割する中、すばるは単一の巨大鏡を採用することで、より安定した光学性能を実現した。また、大気のゆらぎによる像の乱れをリアルタイムで補正する「補償光学システム」を搭載し、地上望遠鏡でありながら宇宙望遠鏡に匹敵する鮮明な画像が得られる。

その成果は枚挙にいとまがない。「ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)」という超広視野カメラを用いた観測では、130億光年以上の彼方にある銀河の姿をとらえることに成功した。これは宇宙誕生からわずか数億年後の銀河の様子を記録した貴重な発見である。また、太陽系内の小惑星探査や、系外惑星の発見にも大きく貢献している。

望遠鏡とひとくくりにしても、観測する場所や波長の違いによって、その特性は大きく異なる。地上の望遠鏡は大きな主鏡で精密な観測を行う一方で、大気の影響を受けるため、補償光学のような技術が不可欠となる。宇宙望遠鏡は大気の影響を受けずに観測できる利点があるが、打ち上げや運用のコストは格段に高くなる。

すばる望遠鏡は、地上に設置された可視光・赤外線望遠鏡として、他の望遠鏡と協力しながら宇宙の謎に迫っている。望遠鏡それぞれが持つ特性を活かし、組み合わせることで、私たちはより多くの宇宙の姿を理解できるようになるのだ。

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