SPH/MPHの授業のご紹介
SPHでの授業で、「エビデンスを理解してどう使うか」を検討する授業がありますので、そのご紹介です。
参加者のバックグランド
クラスサイズは25名程度、参加者のバックグラウンドは(イメージ)医者7割、医療関係者3割(薬剤師、看護師、医薬関連企業/CRO)。この25名が、いくつかのグループに割付られ、好きなエビデンス(基本的にはパブリッシュされた医学論文)をセレクトし、その内容を批判的吟味というか、あーだこーだ議論します。
議論する対象論文
例えば、今回はEdoxaban versus Warfarin in Patients with Atrial Fibrillation(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1310907)という論文がチョイスされ、担当グループからの発表と、それに対する質問、先生による解説等がなされました。
議論される内容は、例えば、ランダム化が適切であったか、割付時の目隠しはなされていたか、介入時のブラインドはなされていたか、エンドポイントは適切か、安全性のみ服用しなかった人を排除した形で分析されているが何故か、結局外部妥当性があるの? とかとか。
私は医療者ではないので、医療者がこの論文を読んで、どんな受け止め方をして、治療方針に影響を受けるのか/受けないのか、みたいなところを気にしながら参観しています(笑)
気になること
ところで気になったのが、この論文。2万人を超える参加者と複数の国での実施、かつ各国のレギュレーションに従って行われていること、などを考えると、この試験ていくらかかったんだろうか、、というところ。
第一三共さんがスポンサーしており、ワーファリン(昔からある安―いお薬。@9円くらい)に対してエドキサバン(第一三共さん@400円強)がイケてるから、是非使ってね、という結果を求めて実施されているはずです。
本論文のプロトコルが2008年に作られていて、2013年に論文がパブリッシュされているので、まぁph3として6−7年くらいかけて実施されていそうです。
https://www.daiichisankyo.co.jp/ir/library/annual/pdf/valuereport2019jp.pdf の97−98ページを見ると、毎年研究開発費に2,000億円弱くらい使ってますね。同20ページあたりを見てみると、この間、かなり新薬が上市されているので、エドキサバンにいくら研究開発費を投入したのかは見えないですし、費用の発生期間=RCT実施期間で分割する必要もあるし、いくらくらいなんでしょうね。
Ph3だと、RCT一本100億円で、日本1本、米国2本、欧州2本で、500億円くらいとかって言われますけど、もっとかかってそうですよね〜。国も人数も多いですし。
エドキサバンはこれ(https://www.daiichisankyo.co.jp/ir/library/annual/pdf/2019/14.pdf)によれば18年から売上高が1,000億円を超えていますね。さらにこれ(https://www.tokkyoteki.com/2020/05/daiichisankyo-2019.html) によれば、27年までは特許がありそうですので、トータル売上で2兆円くらい行くんですかね。
粗利率は6割(https://www.daiichisankyo.co.jp/ir/files/005108/2018年度%20有価証券報告書.pdf) くらいなので製品の利益も1兆円を超えてきそうですね。
あたり前ですが、開発費が1−2千億円かかったとしても、全然ペイしますね。ただし、失敗しているものもあるでしょうから、5−10開発に一つは成功しないと、というところですが。
結論?
やはりRCTの結果は超重要なので、バイアスをできるだけ排除して、望ましい結果を出し、かつ患者数の多い慢性疾患の開発は、良いことですよね。
履修者は内的妥当性・外的妥当性をグリグリ検討している方が多いので、お金のことを考えて授業を受けている人は多くないと思いますが。
Author: S