デュエマAdvent Calendar2024 17日目 自由を求めた旅路の果てに-ジョー編と共に歩んできた2022年度2ブロックフォーマットメタ変遷-
皆さんこんにちは。Fei (@Fei1020)です。
今回はあーくん(@suiyotao)(敬称略)が企画したデュエマAdvent Calendar2024 の17日目を担当させて頂きます。
企画内容を簡潔に説明させて頂きますと、
「毎日デュエルマスターズに関する面白記事がアップされて最終日までカウントダウン形式みたいに楽しめるよ〜」
というイベントです。そしてその中の1日を自分が担当しているということになりますね。詳細はこちらから。
16日目のカジュアる(@Casual_DM_GAMEs )さんの記事はこちらから。勢いがありつつも、向き合うカードのかわいい点に悪戦苦闘しているのが絶対笑える内容になっています。やっぱYoutuberをやってるデッキビルダーは面白い。
そして自分からは2022年の2ブロック環境を振り返ってみる記事を。
今年からエリア予選が復活して盛り上がりを見せる2ブロックですが、2021年から2023年までは一部の地域でしか行われない過疎フォーマットだったので、どんなメタゲームだったのかを知っている人は少ないだろうと。年度によってカードプールも毛色が違うのですが、この年はなかなかはっちゃけ気味の年だったので面白いはず。
だからもし当時のカードプールでどんなデッキが組めたのか、自分だったらどんなデッキを組むかについて思いを馳せながら読んでみてください。それでは本編です。
2022年度2ブロック環境変遷
ここからはほぼやわたCSの結果を振り返るだけなので、結果ツイートを見ていく流れになりますね。
基本的には王来編・王来MAX編・GOA編のカードプールになります。主要拡張パックはこちら
ヤバそう〜
というか名場面BESTと英雄戦略パーフェクト20のカードリストがヤバくて..…まぁ見ていきましょう。
4月30日
2022年4月1日。
様々な新ギミックで2ブロックフォーマットを支え続けてきた十王編が2ブロックフォーマットからスタン落ちして使えなくなり、使用カードプールは前年度の王来編と王来MAXへと切り替わりました。
ちなみにこの王来MAXは半年で終了し、切札ウィンが主人公として世代交代するGOA編も含まれる3ブロックで行われた異例の年だったりします。まぁ2年間のカードプールなのは変わりないけど。
昨年度の主な環境変遷については過去のこちらの記事を参照してください。ナイス過去の自分。
使用可能なカードプールが王来・王来MAXへと変わったことで十王編のカードが2ブロック落ち。それまで2強環境を形成していたドラサイ5cからは<ドラゴンズ・サイン>が、
アナカラーハンデスからは<水の魔術師マジックス>といったデッキの核となるカードが使えなくなったことで、プレイヤーは新たなデッキを模索することになりました。
そしてこのアナカラーハンデスは<Q.Q.QX. / 終葬 5.S.D.>を上手く使うことができたせいでビッグマナやコントロールデッキの目の上のたんこぶとも言える天敵だったので、これらデッキが環境からいなくなるということはつまり、誰もが自由に「自分の考えた最強のビッグマナ」を考えることができることでもありました。
<天災デドダム>も<ドンドン火噴くナウ>も<切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー>も<神の試練>も<終末王秘伝オリジナルフィナーレ>も全部刺さるんだなこれが。
しかもこの時は<天災デドダム>や<ドンドン火噴くナウ>はまだ使えたため、これにより2ブロック環境はしばらくビッグマナ環境になります。まぁディスペクターを使いこなすのが上手い奴だーれだ選手権ともいう。
当時はこのカードの相場が4000円の時代だったので神のような再録でしたが、今思えば2ブロックのバランスを考えると、なんともいえない気持ちがあったような気がします。
プレイヤーがまず目をつけたのが、昨年度のラスボスである、5cヴァラモルド。
キングセルという、多色デッキのマナ基盤に革命を与えた能力を存分に活かして、手札・マナのどこからでも現れてはド派手に相手のシールドを吹き飛ばす。
赤単などの速いデッキに対しては不利なものの、単純明快にして強力な動きはまさにラスボス。ビッグマナの一つの形として立場を確立しました。
ふたつ目は、前年度2ブロックフォーマット覇者である、<龍風混成ザーディクリカ>を中心に据えた5cコントロール。
受けにもなる<ドラゴンズ・サイン>こそ使えなくなったものの、依然として<ロスト・Re・ソウル>は使用可能なため、コントロールデッキ最高峰の地位を確立していました。
また<伝説の禁断ドキンダムX>と<オール・デリート>が使えたこともあって、安定したフィニッシュ手段も持っていたことは大きかったです。まぁ<聖魔連結王ドルファディロム>で止まったり、相手もドキンダムXを使っていると弱かったりした場面もありましたが。なんでオリジナル環境でできるデドダムドラサイザーディロストのパッケージ全部揃ってたんだろうね。他のデッキの存在意義消されたけど。
しかも王来編といえばこのカード。
はい。こいつも使えました。色基盤強すぎな?
あ、ちなみにファイナル革命三銃士ももちろん使えます!!20周年記念の集大成の年である王来編で参戦しないわけがないんだなこれが。王来編最強!!!
というわけで3色カードが多い多色デッキが強い年でした。
そしてこれらのコントロールに速度勝負を挑んだのが、赤単我我我。
オリジナル環境のように<“罰怒”ブランド>などの<我我我ガイアール・ブランド>の5枚目以降になるカードがほとんどなかったためデッキの安定性は下がってますが、<カンゴク入道>や<斬斬人形コダマンマ GS>などのリソース札は問題なく採用することが出来たため、問題なくデッキとして成立してました。
<BAKUOOON <5000GT.Star>>が<我我我ガイアール・ブランド>の5枚目以降として採用されてたりしてました。まぁ赤単使いは大体ガガガゴゴゴしてたけど。
というか“轟轟轟ブランド”もいたなそういえば。なんでもアリやん。
当時の僕はどうやら<砕慄接続グレイトフル・ベン>と<ヘブンズ・ゲート>で4c天門を組んでいたらしいです。<霊宝ヒャクメー4>もあるので、踏ませて勝てるカード8枚で速攻耐性もあります。
<砕慄接続グレイトフル・ベン>の効果でマナの<禁断竜王 Vol-Val-8>を捻ると赤マナになって出せるんだよね〜。というかこの日の僕、決勝負けしてるじゃん。2024年でも決勝戦負けは克服できてないよ.…何がいけないんだろうね。最後まで勝ち切れる人羨ましい。時の運もあるとはいえ、来年の目標は大会優勝にすべきかも。
というわけでみんな新環境を手探りで始めた感じの日でしたね。
5月14日
いやーこのパックが凄すぎてですね。<キングダム・オウ禍武斗 / 轟破天九十九語>なんかも使えたんですよ。双極編ぶりに2ブロック復帰って感じでしたね。まぁ選手がすごかったのも大きいですが。
この時くらいから現在のアドバンスで鉄板ムーブである<インフェル星樹>と<伝説の禁断ドキンダムX>のコンボが採用されるようになった気がします。まぁビッグマナが環境を支配していましたね。
5月20日
依然として5c最強!って感じだったんですが、ここにきて2つ新デッキが登場。
一つが赤単バイク。基盤はほぼ赤単に近いですが、<轟く侵略 レッドゾーン>が使えたこともあり、3点割るギミックとして登場。<覇王速ド・レッド>で3ターン目に飛んできました。
3ターン目に3点割っておいてから赤単のSA基盤で押し込む、といった感じの動きをします。<カンゴク入道>や<赤い稲妻 テスタ・ロッサ>初登場も王来編だったりするので現役でした。もちろん<伝説の禁断ドキンダムX>でデッキ圧縮やとどめの押し込み性能もあります。
そしてもう一つがネクラケンジ。今ではあまり見かけなくなりましたが、理不尽ガチャデッキとして大暴れしていました。
この当時で当たりとなるカードは<The 邪悪寄成ギョウ>や<偽装縫合ヴィルジャベリン>などでガチャが出来なくても<「正義星帝」 <鬼羅.Star>>と<Disカルセ・ドニー>で盤面展開して押し切れるように組まれています。
ちなみにこの日の大会は<王来MAX最終弾 切札!マスターCRYMAX!!>発売の1ヶ月前なので、最強フィニッシャーである<CRYMAXジャオウガ>が搭載され始めるのはまだ先の話.…。ケンジキングダムはまだまだ伸び代が残されていたデッキだったのです。
7月2日 王来MAX最終弾 切札!マスターCRYMAX!!発売後
ここで王来MAX編の第2弾が発売。<CRYMAXジャオウガ>や<自然の四君子ガイアハザード>など、2ブロックフォーマット的にも環境が動く新規カードがたくさん登場しました。
しかし超絶強化を受けたのは2コストのメタクリーチャーを豊富に獲得したアナカラーハンデスでした。
2ターン目からデッキを見る効果を封じるメタカード、マナ加速によるランプを許さないメタカード、<龍風混成ザーディクリカ>や<神羅ケンジ・キングダム>などの踏み倒しを妨害するメタカードが配られたことで大幅に対応力がアップ。コントロールデッキに対して強いデッキが出てきました。しかも全部GS持ってるのが恐ろしい。
そうなるとあとはビートダウンにも勝率を担保する方法があれば..…となるのは自然な流れ。しかしアナカラーハンデスの天才はこれを解決するカードを発掘してきます。
お呼びがかかったのは、なんの変哲もないアンコモンのカード。だが、これ1枚で赤単我我我を封じることができました。<轟轟轟ブランド>以外では突破が困難なパワー8000かつタマシードがあればSトリガー化、タップしていればプレイヤーが攻撃されなくなる効果まであります。つまり進化できればおおよそ勝ち。
こうしてアナカラーハンデスの弱みであった防御力に関しても課題が解消され、この後もメタの一角に躍り出ます。
こうして大ディスペクター対戦と化していた2022年2ブロック環境も緩やかに環境が動いていきました。
7月16日
前週から頭角を現したアナカラーハンデスが上位を占める中、デイガライオネルが優勝。
<ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり>なんかはまだ存在しなかった当時、<禁断英雄モモキングダムX>を止められるカードは限られており、スター進化クリーチャーを駆使して攻撃を仕掛けていくデッキとして活躍していました。
それまで猛威を振るっていたJO退化の2大看板である<アルカディアス・モモキング>と<キャンベロ <レッゾ.Star>>の合わせ技を防げるデッキも結局少なかったのもありますが.…
しかしこの週に入ってアナカラーハンデスのデッキもほぼ基盤が固まり、<ブレイン・コンチェルト>+<ナーガの海黒環>+<神の試練>無限EXターンコンボのパッケージは確立していました。いやぁデッキに無駄なカードが本当になくてすごいんだよなこれ。
7月30日
ここまで開拓されてもまだ新しいデッキが登場します。まぁ僕が考えた最強デッキ発表会でもありますからね。しかしどちらのデッキもどちらかといえば殿堂環境で活躍していたデッキから基盤を流用したものに近いです。
まずは2位につけたJO退化。この頃はまだコンビ殿堂ではなかったので、高速でアルモモキャンベロを叩きつける凶悪さは変わりませんが、ここも名場面BESTが凄すぎてですね.…
退化用のカードがたくさん使えたんですよ、そのため、<禁断英雄モモキングダムX>設置から3ターン目に自壊札でレッツゴーという動きが出来ました。
そして<生魂転霊>が使えるということはハザード退化もデッキとして成り立つんですよね。冒頭でも言いましたがデドダムジルコンのアナカラー基盤が使えるということはそういうことです。マナを伸ばしたら締めは<CRYMAXジャオウガ>で。まとまったデッキでしたね。
また1位の赤緑タマシードもアグロのニュースタイルとして登場してくれました。<センメツ邪鬼 <ソルフェニ.鬼>>が面処理と手札交換、侵略元にもなっていたれりつくせり。メタビートとしての側面が大きかったですね。
8月6日
相変わらずアナカラーハンデスつえぇーというはありますが、面白いのがMAX-Gジョラゴン。
<MAX-G ジョラゴン>の効果で<モンキッド <ライゾウ.Star>>の効果をコピーしながらマナにある進化レクスターズを次々に重ねていって、
進化元が9枚以上になったら<マニフェスト <ファイナル.Star>>に進化しながらプレイヤーに向けて5点!!!と言いながらEXターンを獲得してワンショットするコンボデッキです。いきなりやられたら相当不機嫌になるというか実際にやられて不機嫌になった記憶があります。
<星空に浮かぶニンギョ>などがキツいという弱点などもありましたが面白いデッキとして名を刻みました。
8月20日
なんかランキング上では開催してたらしいけど、結果のツイートが見つからなかったので割愛。
10月8日 GOA第1弾伝説の邪神発売後
しばらく期間は空き、GOA編が参戦。アビスロイヤルが大躍進を果たします。
継戦能力があり、除去されにくい<深淵の三咆哮 バウワウジャ>が複数走ってくるのが凄くてですね…ほとんどのデッキを蹴散らしていました。まだあのドラゴンが来てないのに.…
そしてこの時期になって2ブロック落ちしていた<ドラゴンズ・サイン>がプロモで再録され使えるようになりました!!!バカ!!!!5cザーディクリカが再びフルパワーの状態になって帰ってきます。
そして個人的な話をすると、この大会から僕はカバレージを書くようになりました。本当に毎回毎回人数ギリギリで開催していた時期だったこと、常に「ここがやらなくなったら公式にフォーマットごと消される」のが頭をよぎるなかで、いい宣伝方法がないかと始めてみた気がします。今読み返すと「拙いなぁ〜」と感じますが、当時の自分の感触は1本書き上がったところで
「ログを追うだけならそんなに難しくないし、意外と書けるぞ!!」
だったんでしょうね。まぁそれまで公式サイトが更新されるたびにカバレージを読んでいたのがここで活きてくると。
人生何が起こるか分からんね..…
10月22日
ここにきて今まで活躍したデッキ大集合!みたいな結果に。アビスロイヤルが躍進した以外は特に話すこともないかな。
カバレージはこちら。1回目がそこそこ効果があったので活動を継続していくことに。
12月10日 GOA編第2弾発売
この時はGOA編第2弾が発売され、アビスロイヤルが完全体になりました。
<邪龍ジャブラッド>と<深淵の壊炉 マーダン=ロウ>の登場です。<邪龍ジャブラッド>により高速で墓地を増やしてそれを除去耐性にする効果がワンショット性能を大幅に向上させて、<深淵の壊炉 マーダン=ロウ>でハンデスまで可能。正直それまで環境トップだった5cザーディクリカも<深淵の壊炉 マーダン=ロウ>のハンデスとシビルカウントで完封出来たのでとても強力でした。
この次の開催は次年度の2023年を待つことになります。ここからの記録は全て残っていますので、気になる方は見てみてください。
おわりに
いかがでしたか?僕としてはあまり知られていない環境のことを振り返ることが出来て面白かったと思っています。これより前の年度に関しては下記の記事を参照してください。
しかしこの企画であるデュエマAdvent Calendar2024はまだまだ続きます!!
明日の18日目はしいか(璃光園)さん (@shiikadm_00)の記事があがります。新弾のカードを使ったデッキをたくさん紹介してくれるとのこと!楽しみですね。
それでは、やろう、2ブロック。ありがとうございました〜
おまけ
自由を求めた旅路の果てに
2022年、1人の主人公の旅が終わった。
デュエルマスターズにおける3人目の主人公である、
切札ジョーの旅が終わった。
思えば切札ジョーは、2017年から約5年の間、デュエルマスターズの歴史のひとつとして、我々プレイヤーと歩んできた。そして前代の主人公達に負けず劣らずの爪痕を残して去っていった。
そんな切札ジョーの仲間である「ジョーカーズ」が初めて戦果を上げ、新時代の到来を告げたのは、切札ジョーがカードを生み出してから間もないDMGP4thでのことだった。
当時の環境としては前代主人公であった切札勝太の切札である、<超戦龍覇モルトNEXT>を中心とした赤緑NEXTと、
圧倒的な速度によるループをメイン戦略としつつも、場合によってはビートプランへと作戦を切り替えることが出来、多くのプレイヤーから嫌われていたであろう赤ん坊である<ベイBジャック>を中心に据えた緑単ループの2強環境であった。
モルトNEXT対策で受けに寄せるデッキを組むと、ベイBジャックに勝てなくなり、ベイビBジャックを狩ろうとすると、モルトNEXTに勝てなくなる。どちらに対しても一定の勝率を出すデッキは当時存在せず、プレイヤーはそんなジレンマに頭を抱える環境だった。
しかし突如現れた無色のクリーチャー達はそんな環境に文字通り風穴を開けた。
<ゼロの裏技ニヤリーゲット>や<破壊秘伝ナッシング・ゼロ>といった、無法者達が生きた時代の遺産を味方に、新時代のビートダウンとして、前年の覇者であるモルトNEXTとGP決勝の舞台で激闘を繰り広げたのだ。
それ以降も<ジョット・ガン・ジョラゴン>や<ジョラゴン・ガンマスター>、<勝熱英雄モモキング><未来王龍モモキングJO>と、ジョーカーズは主人公が変わってもその系譜を受け渡しながら環境を象徴し続けた。ジョー編の終わりを迎える年の大型大会であるデュエルマスターズ全国大会2019では、ジョーカーズの最終形態とも言える、<未来王龍モモキングJO>を主軸としたJO退化が有終の美を飾った。
ジョーカーズは登場してから物語の終わりを迎えるまで、常に環境の最前線を走っていたのだ。デュエルマスターズというコンテンツを前代主人公と同じように牽引してくれた。
それがどんな場所、レギュレーションであっても。
そしてDMGP4thでの激闘の翌年、ジョー編の始動に合わせてデュエルマスターズに新たなフォーマットが追加される。その名は2ブロックフォーマット。
2ブロックフォーマットはジョー編の歴史と共に歩んできたものである。
2ブロックフォーマットが始まったのは2018年。双極編の開始と共に新しい競技向けのフォーマットとして作成された。もともとは全国大会の店舗・エリア予選で行われていたブロック構築戦の整備の過程で生まれたフォーマットであり、直近の2年間で発売・収録されたカードプールでのみ戦うことを目的とした新ルールだったが、徐々にCSやGPなどの大型大会でも導入されていった。実際、DMGP7thと8thでは多くのプレイヤーが2ブロックフォーマットというゲームで盛り上がっていたし、毎年行われる全国大会のエリア予選では季節の風物詩としての地位を確立していた。
だが、2019年と2020年に2ブロックフォーマットに大打撃を与える出来事が起きてしまう。新型コロナウイルスによるパンデミックと、オリジナルフォーマットの誕生である。
新型コロナウイルスによって世界中の人々の生活はもちろんだが、我々カードゲーマーの生活すらも変わってしまった。大会は開催されなくなり、対人でカードゲームを楽しもうとしても、周囲からの「感染症対策は大丈夫なのか」といった目に常に晒される。相手のデッキをカットすることだけでなく、感染症が流行する以前までのように普通に楽しむことすら許されなくなった。こうして我々プレイヤーの戦う場所や、ゲームを楽しむ場所は奪われていった。「デュエル・マスターズをプレイする自由」は失われつつあった。
そして殿堂レギュレーションだけでなく、2ブロックフォーマットも感染症の流行による影響をモロに受けるようになっていった。2019年以前であれば開催出来ていたCSも人数制限や感染症の流行度合いによっては突如開催が出来なくなった。ただ、そんな状況でも、プレイヤーは自由を求めてデュエルマスターズを楽しみ続けた。2ブロックフォーマットを遊び続けること、継続することしか次につながるものはなかった。それがリモートCSであれ、リアルのCSであれ。デュエル・マスターズが、いや、カードゲームの文化を残すにはプレイヤー側で火を灯し続けるしかなかった。また自由にカードゲームができる日が来るまで。
そして時は2022年。
根強く2ブロックCSの開催数を維持していた首都圏でも、1つ、また1つと2ブロックフォーマットで大会を行う店舗は消え、日本で2ブロックフォーマットによる戦いが行われる戦場は最後の一つとなってしまった。それが千葉県のやわたCSである。2ブロックフォーマットでCSを開催している場所は、DMGP8th覇者であるおんそく選手が主催している、ここだけになってしまった。しかも参加者の約半数はほぼ常連の同好会のようなイベントになりつつあったし、参加者が足りなくて受付時間を延長した日すらある。
はっきり言ってプレイ人口が少数で、わざわざこんな過疎化を辿るルールでCSをやろうという方がおかしいし、置かれている状況は最悪だった。例えるのであれば、高校でギリギリの人数で存続し、常に廃部の危機にある部活動や同好会のようなものだ。いつ潰されてもおかしくはない、ギリギリの状況で活動を続けている。
それでも月2回行われるイベントとして和気あいあいとしている楽しいCSを求める人や、いつもとは違ったカードを使ってみたい人、フォーマットの部門ランキングで上位を狙う人やたまたま出場してみた人。一昔前、いや、2015年にDMPランキングが施行され、毎週のようにCSが開かれるトーナメントシーンへが発展した現代DMの中で唯一、ここだけが穏やかで緩やかな雰囲気の中、コミュニティ独自のゲームが展開されていた。始めたきっかけはなんであれ、この独自のルールで楽しんでいる人たちが集まっていたのだ。
主催であるDMGP8th覇者を先頭に、そのゲーム性や楽しさに賛同する者、2019年以前から同じ時を過ごし、エリア予選の熱狂を忘れられない者、変わったデュエマの世界に迷い込んだ者、そして新世代のDMPが集まって、この素晴らしいフォーマットで同じ時間を過ごしてきたのだ。
公式の大型イベントや大会のように、カバレージすら存在せず、オリジナルやアドバンスよりも情報が少なく、自分たちの手で模索しながら環境の答えを探していたプレイヤーの記録を、今、ここに、残そうと思う。
そうでもしなければ、ここで起きたドラマや戦いを石板に刻む者はおらず、人々の記憶からも消え去りそうだと思うのだ。
2022年12月17日。
JR本八幡駅近くにある、ときわ書房本八幡スクエア店+GEOには2ブロックフォーマット対応のデッキを持った、総勢32名のプレイヤーが集まった。いや、正確には何名かは2ブロックフォーマット自体が初めてで、主催のおんそくにデッキを借りて参加している人もいたのだが。
この日は2つの特別な意味を持つ日に開催された2ブロックCSだった。
一つは新弾の「轟炎の竜王」で追加されたカードプールが使える日であったこと。もう一つは2022年、いや、GOAシーズンに開かれる恐らく最後の2ブロックCSであること。この日より前の週、デュエル・マスターズ公式よりアナウンスがあったからだ。
CSの開催制限の撤廃に伴う、CSサポート人数の変更である。新型コロナ感染症が流行してからの緊急的な措置であった、CSを開催するための最低人数をコロナ禍以前に戻す内容であり、それまで少人数でも開催することのできた公認CSが、突如として開催するためのハードルを上げられた格好になった。これまでCSサポートプロモを配布するには25人いれば配布できたものが、最低ラインが50人からに変わり、景品となるプロモーションカードが配られにくくなった、ということだ。小規模CSで大会の上位賞品が変わることは単純にCSの魅力が下がることにつながる。
この施策はユーザーから猛反発を喰らい、現在では変更がなされたが、プロモーションカードの内容も相まってそれまでに地方などでCSを開催していた所だけでなく、全国各地でCSがサポート定員に満たず、中止になる場所が増えていった。
そしてこれは2ブロックフォーマットを楽しんでいた我々にも実害が及んだ。これまであの手この手で参加者をなんとか32人集めながら開催していたのに、急に開催すら危ぶまれる内容を突きつけられてしまったのだ。
それまではどんな状況下に置かれても頑張っていた我々だが、「2ブロックフォーマットで参加者を64人集めるのはさすがに無理だ」と誰もが思った。ここは部員数が少なく、いつ廃部になってもおかしくない中学高校の部活動とさほど変わらないのだから。だから今日が2022年度最後の2ブロックCSとなってしまったわけだ。
2ブロックフォーマット存続を目論む我々の算段としては全国大会のエリア予選が行われるまで、ひたすら、ただひたすらに2ブロックフォーマットで遊び倒すことだった。人を掻き集め、CSを定期的に開催する。そんな抵抗を長すぎる春の到来まで続ける。残された道なんてそれしかなく、それだけが望みだった。
客観的に見れば、無駄であると思われるだろう。今更マイナーな遊び方で遊んで、廃れゆくゲームを残そうと足掻くだなんて。公式がその気になれば一瞬で終わりを告げられるギリギリの中、慈悲で残っているフォーマットだなんて。世の中には都合のいい女(人)という言葉があるらしいが、置かれている立場はそれに近い。
だけど、それを承知でおんそくは走り続けた。自分の想いに賛同してくれる人がいる、2ブロックフォーマットのデュエマの楽しさを理解してくれる人がいると信じて。
そしてその努力は実った。2ブロックフォーマットでの戦いの場を求めてやってくる人、他の人に影響されたり、興味を持って参加しにきた人。理由は様々だが、2021年から2022年までの間にやわたCSには人が集まり続け、コミュニティが形成され、2ブロックCSは定期的に開催され続けた。
だが、
あと半年。あと半年届かなかった。
全国大会の代わりに開催される最強位決定戦が行われたり、他のTCGでも大型大会を開催するようになるなど、世界は以前の姿に戻りつつあるなか、エリア予選が開催される日まで2ブロックを継続し続けることは叶わなかった。本八幡でも開催されなくなるということはつまり、日本の2ブロックCSは滅んだことを意味する。
だが、この日はたくさんの参加者が会場に集まった。
これまで継続して参加していたメンバーはもちろん、様々な人が参加者として会場に集まった。
その光景は2ブロックフォーマットがかつての熱狂を取り戻し、ゲーム性が評価されたことを示すのに十分だと、デュエル・マスターズは楽しいゲームだということを証明するのに十分だった。
CS自体は着々と進行し、その日の予選突破者が出揃った。
そして本戦1回戦、準決勝と続々と脱落者が出ていく中、最後に残った対戦カードを見て、会場はざわつく。
かたやデュエル・マスターズ黎明期からアーキタイプとして存在し、デュエマの歴史と共に歩み続けた王来編を語る上で欠かせない赤単我我我が、
そして相対するは主人公交代とともに登場し、デュエマに新たな風を吹かせる新時代の闇のデッキ、黒単アビスロイヤル。
旧世代代表の高速ビートダウンと新世代代表ミッドレンジが決勝でぶつかる構図に、何か世代交代を感じさせる対戦に思えた。
初戦は赤単我我我側が先に仕掛けるが、アビスロイヤル側が<秩序の意思>を駆使して1本先取。ゲームを優位なものにする。
続く2本目は赤単我我我側が<クミタテ・チュリス>、<一番隊 チュチュリス>、<烈火大聖 ソンクン>からの<轟轟轟ブランド>で攻勢に出る。アビスロイヤル側はこの段階で2ターンをマナチャージのみでパスしており、場にはなにもない状態で絶望的な状況だった。
殿堂カードまでもが絡み、これで赤単側が概ねゲームをイーブンに持ち込んだであろう、と誰もが思ったが、「逆転こそが、カードゲームだ。」というテーマを掲げているのがデュエルマスターズだ。最後まで何が起こるかは分からない。
まずは<クミタテ・チュリス>がシールドを1枚ブレイク。
S・トリガーで<ハンマ=ダンマ>。<一番隊チュチュリス>が破壊される。だが、<一番隊チュチュリス>が破壊されたことにより<烈火大聖 ソンクン>の効果が発動し、効果によりシールドブレイクする。ここではトリガーなし。
続けて<轟轟轟ブランド>がwブレイク。
またしても<ハンマ=ダンマ>がトリガー。<烈火大聖ソンクン>が破壊され、破壊された時の効果でもシールドをブレイクする。
いくらトリガーの嵐だったとはいえ、ここの赤単側のプレイは正しい。シールドを割り切っておけば、あとはトップのSAを投げつけるだけで勝ちだからだ。
だがここまでの流れでアビスの眷属が場に複数並んだことで深淵の邪神が場に舞い降りる。最後のシールドから現れたのはシビルカウント2によってSトリガーとなった<邪侵入>!!
デッキから墓地に送られた4枚の中から<アビスベル=ジャシン帝>が場に現れる!!
そこからはアビスロイヤルの独壇場だった。
アビスロイヤル側が赤単側の手札と先のターンに繰り出されたクリーチャーを処理するのに1ターンを費やしたのちに赤単側のターンになるが、トップのドローは有効ではない<凶戦士ブレイズ・クロー>。
アビスロイヤル側のラストターン。<アビスベル=ジャシン帝>の効果によって呼び出されるアビスロイヤル軍団が、相手のシールドを次々とブレイクしていき、力強く勝利をもぎ取っていった。
その光景はまるで、ブランドというジョー編を常に第一線で戦い続けた男に向けて敬意を表し、これからの時代はGOA編の我々アビスロイヤルに任せてくれとバトンを受け取っているようにも感じられた。これからのデュエル・マスターズを牽引していくクリーチャーとして、邪神はとても頼りになるだろう。
あれから約2年。時は王道編へ変わって、邪神は自身の体のパーツをバラバラにされ、その素材をもとにバロムが魔誕しようとしている。今年度も様々なキーワード能力が登場したが、今年度の総決算として悪魔神、復活がリリースされるということだろう。
基本拡張パックが4弾まで発売し、その年で最もカードプールが多いなかでエリア予選が行われるこれからの2ブロックは絶対に面白い。
新しいカードを触る機会の一つとして、オリジナルやアドバンスとは異なるゲーム体験があり、他のユーザーとの関わりがあり、色んな人と限られたなかでいろんなアイディアを出してデッキを構築していく。最高のゲームの中の1つとして、これからもあり続けてくれるだろう。
自由を求めた旅路の果てに、僕らの望んだ今があるのだから。
おわり
今回のこれ、実は数年前に途中まで書いてお蔵入りしていたものを掘り起こしたものだったので、文章が全体的に暗いです。当時マジで絶望してたんでしょうね。
しかしその後のことは皆さんがご存知の通り2ブロックフォーマットは公式に消されることなく今日に至るまで存続し、ついにはコロナ禍の前のようにエリア予選で採択される状態に帰ってきました。とても嬉しいです。
そしてこの話を最後に、僕が話せる大体の秘蔵の話しが終わりました。自分くらいしか知らないネタが尽きたというイメージが近いですかね。
なのでこれからは自分の力で情報発信をしていけたらと思います。よろしくお願いします。
本当におわり