90年に一度の奇祭があるんだ。こない？

　雑監督こと、アリアスターがおくるヒーリングシネマ。それが「ミッドサマー」。

　以下、鑑賞した際に書いた覚え書きを元にしております。

　アリアスターは別にホラーを撮っているわけではないと思うし、これは過去の恋人への強烈壮大な意趣返しなんだろうなって思いながら見てたんですが、雑監督の割には、「ホラーにおける被害者の男女逆転」にこだわっている。

　あと、パンフレット、美麗作家ヒグチユウコさんが描いたので、売り切れてました。あと、凄い大きなシネコンでいっぱいだった。それとみんな怖いっていうけど、私、半分寝てたんですけど。とにかく編集をもっと頑張ってくれ。もっと切っていいところがいっぱいある。だらけた。

【雑エピソード】
骨が焼けるほどの温度の火に備え付けられていた鉄板を素手で持つ。
突然、ハエがたかる描写。
熊がアニメ版ゴールデンカムイ並にへぼい。
精神疾患がありそうな主人公にハッパ勧めるとか、どうなん？

【ヒーリングシネマたる所以】
呼吸を整えるのが流行っているのか？(鬼滅の刃）
ダニーの苦しみをみんなが共有して表現するところで、ダニーはセラピーを受けているようなもの。
個人が受けた傷を共同体で癒やすんですが、あの同調行動って何かセラピーであるんですかね。
しかし共同体の不気味さを知っている私は反吐が出そうだった（新興宗教にぶち込まれていた過去持ち）。
結局、女王になったダニーも結局、共同体の中の閉塞感で死んでいくだろう。

【ホモソーシャルな男性たち】
ダニーの彼氏、クリスチャンをはじめ、みんなホモソーシャルで女のはなしをして貶めることで共同体を保っている。
ダニーの気遣いにイライラする面々にイライラ。
しかしダニーにもイライラする私。
一番てっぱんな奴は嫌な顔つきをしているウィルポルターくんだが、子役の時は可愛かったし、メイズランナーでも良い役だったと思う（吹き替え：浪川大輔）。何より彼は「デトロイト」って酷い映画で悪徳警察官を演じてその役が辛すぎて泣いちゃったんだよ、頑張ったね。
とにかくクリスチャン、お前は駄目だ。学者として学徒として駄目すぎだろ。論文ぱくろうとしてるとことか、もうほんとに屑で、別の意味でラスト、私が清々しい。

【共同体セックス】
男を種としか見ないところはなかなかうまいと思った。ってか、そういう目にあったの？　アリアスター？
しかし、「感じるわ！　赤ちゃん！」って、どこのオメガバースだよ（すいません適当なこといいました）赤ちゃん感じたことないよ？
役者さんすげえなあ……全裸……。
陰毛を入れるってどこの世界でもやるんだ（知人がバレンタインチョコに入れられた）
生産性のないセックスはこの共同体では許されないんだろうね。
バースコントロールも凄いんだろうな。
占星術で生まれてくる子供って考えたら、多分、陣痛促進剤とかバンバン使って「いいホロスコープの子」を作ろうとしてるよ。そういう人いるもん、しってるもん。

【その他諸々】
人間が一番こわいってのがダサい。いや、そこに重きは置いてないのかもしれない。
実は精神障害でした、もしくは精神障害を入れてくる、この二点のホラーは弊アースでは認めていません。そんなん、ホラーとちゃうわ。（だからホラーではない、この映画）
ちょっと「くる」とリンクするところがあった。妻夫木のね、あの感じ。嫌な奴って感じ。クリスチャンのね。「ああ、あいつがああいう目に遭うのは仕方ないかな」って人物造形……。
老人二人が自死するところ。机の形が遺産、故郷、伝統を示すオセルのルーン文字だったのは面白かった。
もうちょっとルーンを勉強すると面白いかもしれない。
ダニーの最後の衣装は「メットガラ」狙いか（笑ったんだよ）。

【アリアスターの狙い】
ヘレディタリーでも割とはっきりしたけど「被害者男女逆転ホラー」なんですね。そしてへレディタリーでも笑っちゃった。どっちにしてもお笑い要素を入れてくるあたり、アリアスターって真面目なのか変人なのかよく分からんね。
祖霊信仰、ルーン、障害がある子を「神」として見るのは、非常に勉強したな、と言う印象です。
男が自分の体をどうしようもない、他者に扱われる。これ、割とホラーでは女性側が受ける被害だったと思われるけど、そこを変えたいんだろうな。

　あと、熊を着せられるところで「……あれ、これってヘラクレス？」とか、「羊たちの沈黙？」とか考えちゃった。

　でも雑。劇伴だめ。寝なかっただけ褒めて欲しい。
　自裁するおじいさんがビョルン・アンドレセン。透明感半端ない。THN