やさしさに思う
近ごろ「やさしさ」について思うところがある。といっても筋道だててまとめるまでの考えは無い。深く考えていないため障ったらご勘弁ねがいたい。
時間を無駄にしないのがやさしい
さきほどウォーターサーバーの電話営業を受けた。無料でサーバーを設置できるので私が得をするという。「みなさん」とやらも安心して使っているらしい。電話を受けてから5分。歯切れが悪い。よくよく聞くと無料ではない。サーバーの中の水を定期的に買わなければならないし電気代もかかる。電話口の方の会社を3度たずねたがまともに答えなかった。何も無料で恩恵を受けられると思っていない。単純にウォーターサーバーの価値が何なのかを伝えてほしかった。何より相手も何が価値なのかをわかっていなかった。私と相手の時間が無駄になっただけだった。
想いを打ち明けて断られた友人がある。意中の人に「お前なんて全くありえない」と告げられたそうだ。こたえは1%でなく0%。返す言葉もなかったが、そうとわかれば諦めるのに時間はかからなかったという。
ウォーターサーバーの売り手は愛想が良いがお互いの時間を無駄にした。意中の人はその場の空気を固めたがふたりの時間に配慮した。
どちらがやさしいだろう。前者のようなことをしてしまうのが大半ではないか。
伝える側:相手目線がやさしい・のめり込むのもやさしい
よく落語を聴く。白状すると噺がよく伝わってくる方・伝わってこない方がいらっしゃる。よく伝わってくる人の代表格が春風亭一之輔師匠だと思っている。聴いていると目の前で情景が浮かぶ。かなり緻密に聞き手のことを考えて落語をやっているそうだ。言葉の一つひとつにこだわっている。聞き手にまったくストレスを与えない。
柳家小さん(5代目)師匠には面白いエピソードがある。屋外で落語をしていたら犬が寄ってきて吠えたそうだ。ところが小さん師匠は気にしておらず、お客さんも大爆笑。噺を終えた師匠に弟子が「犬は大丈夫でしたか?」ときいたら小さん師匠は気づいていなかった。曰く「噺に入ってしまえば気づかない」。
落語のことを日常に昇華してみる。日常は特に仕事はコミュニケーションで成り立つ。情報がすっと伝わると仕事は効率的にすすむ。一之輔師匠にも小さん師匠にも見習うところがある。相手の視点に立つことに加え自分の話に入り込むかも大切だと思う。情報だけ伝えようとしてもうまくいかない。自分の感情が動かなければ伝わりづらい。相手のために伝え方にこだわること・工夫することもやさしさである。
友人の二村さんがコミュニケーションに関して考察をしている。きちんと企業間の間に入り込んでいる人の文章だ。
リーダー:ある種の暴力性がやさしい
ニトリ創業者の似鳥昭雄さんは勢いがある。ニトリがいかにして生まれ成長をしていったかを社長の視点で書いている。目的のために手段を選ばない思い切った行動が特徴だと思う。師匠の渥美俊一さんから3階建て以上の店舗を禁じられていたが教えを破ってまで出店を決行したり社内の反対勢力と戦って組織を正常化したりと読んでいて気持ちが良い。
キリンの伝説のマーケター前田仁さんは徹底した顧客視点と推進力を持っていた。六本木に店舗をつくってまでハートランドビールの顧客層を観察した。ラガービール主流だった社内の反対をにこにこと笑いながら受け流し、原価が他社とくらべて高い一番搾りを市場に導入しヒットさせた。
働いているとリーダーにはある種の暴力性を感じることがある。論理で説明できないところを思い切りや信念で突き破っているように見える。そうして利益を拡大していく。似鳥さんや前田さんの例を見ると、職場でのリーダーの暴力性は実は社員へのやさしさなのではないか。
社会人:学ぶのがやさしい
あるシステムの講師をしていたことがある。受講生は日本でも有数のビジネスパーソン。私も張り切っていた。しかし、私の知識・経験が不足していて受講生から大クレームをいただき講師を別の方にお願いするまでになった。
知識や経験の不足で不利益を被るのは相手だ。知識・経験があれば相手を適切に導ける。相手をより良いところに導くために努力をすることは世間への思いやりでありやさしさだと思う。