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いたずら

劇場版→→→https://www.youtube.com/watch?v=bQqZl7GQ6oU



男は背中で語るべからず。

縁側で一人、朝から甚兵衛を着こなし、退屈そうに男が雑誌を読んでいる。

彼の名はたいちゃん。昨日、仕事を失った。

たいちゃんが雑誌を読み進めていると、スーツを着た小太りの男がニヤついた表情で近寄ってくる。

「やぁやぁ。今日からニート君。どうだい?調子は」

彼の名前はバハマ。たいちゃんのルームメイトである。

たいちゃん「う〜ん、まぁまぁだなぁ」
バハマ  「まぁまぁか、なんか良いことでもあったか?」
たいちゃん「なんもないからまぁまぁなの!」
バハマ  「ごめんごめん笑」

二人は普段から適当な話しかしない。バハマはたいちゃんを小ばかにしているのではなく、いつも通りを演じることで、彼なりに失職したたいちゃんを気にかけているのだ。

バハマ  「そういやぁこんな時間か、もう行かなきゃ俺。ちょっと昨日、
      リビングで鍵無くしちゃってさ、探しといてくれない?」
たいちゃん「やだよ!めんどくさ~い!」
バハマ  「いいだろぉ〜お前ニートなんだし暇なんだからよぉ~」
たいちゃん「俺さ、昨日仕事なくしたからさぁ、職探しといてくれない?」
バハマ  「やだよ!お前!自分の職くらい自分で探せよバカ野郎!」
たいちゃん「そーゆーことだろぉー!!お前よぉ~!!」
バハマ  「お前よぉ、そんなこと言ってるけどよく聞け、たいちゃん。
      まぁ確かに、前の職場をなくしてな、残念な気持ちもわかる。
      けどこのご時世な、売り手市場なんて、職なんてすぐ見つかる
      よ」

たいちゃんの肩に手を回し、明後日の方向を見つめて語りだすバハマ。たいちゃんは面倒くさい話がはじめる事を予感すると同時に、上から目線のバハマに多少のいらだちを感じ始めていた。こいつをどう懲らしめてやろうか。そして、身の毛もよだつ恐ろしいアイデアが閃いた。

バハマ  「インターネットで応募しちまえばパパッと!簡単に終わっちま
      うわけよ!」

たいちゃんはポケットからペンを取り、読んでいた雑誌に何か書き始めた。

バハマ  「5分もありゃ終わる。今日やることが5分で終わってみろ!
      もうやることなくなって、、そういやぁ相棒が鍵無くした
      っていってたな。探してあげようかな。探したくなってきたな
      ぁ~、ちったぁ探してやってもいいかな」

突然たいちゃんが雑誌の一枚を破き、その一枚の上端にテープを張った。バハマは自分の語りに酔いしれてるようで、紙を破く音にも気づかない。

バハマ  「よし!探してやろう!って気持ちに、ならないかい?」

渾身のドヤ顔をみせるバハマとたいちゃんの目が合った。

たいちゃん「なったぁ!!!」
バハマ  「なってきただろお前ぇ!!」

たいちゃんは説得された振りをし、バハマの背中をドンドンと叩いた。

バハマ  「よし!頼んだぞお前!」
たいちゃん「あそこにあるんだね?」
バハマ  「俺は仕事行ってくるから」
たいちゃん「あぁわかったわかった。いってらっしゃい」
バハマ  「じゃあな」

家を出るため背を向けたバハマの背中には
           大きく【うんこ】と書かれた紙が貼られていた。

たいちゃん「いってらっしゃ~い」

一枚足りない雑誌の続きを読み始め、満足そうに、薄気味悪く笑っていた。


            【~いたずら~】


その日夕方。たいちゃんは特にやることもなく、縁側で黄昏ていた。これからきっと退屈な日々の連続なんだろう。しかし、今は違う。そろそろバハマが帰ってくる時間だ。これからきっと、面白いことが起こるんだと、たいちゃんは確信していた。

バハマ  「よう!たいちゃん!今日はサボり!仕事終わり!」
たいちゃん「おかえりぃ!」

時々する適当な挨拶みたいなものを適当に済ませながら、たいちゃんは不思議な感覚に陥っていた。何も気づいてないのか?

バハマ  「聞いてくれたいちゃんお前、やっと来たぞ俺にも」
たいちゃん「なにが?」
バハマ  「モテ期ってやつ」
たいちゃん「まじで?」
バハマ  「仕事場のなぁ、同僚たちの目が皆違うんだよ」

たいちゃんに背を向けるバハマ。背中を見るたいちゃん。

たいちゃん「えぇ!!!!!???」

      そこには、全く信じがたい、ありえない光景があった。

バハマ  「どうした?」

バハマの背中には【うんこ】とかいてある紙の下に【ちんこ】とかいてある紙が付け加えられていたのだ。そもそも会社へ向かっている最中に誰かに気づかれてばれる手はずだった。もしそのまま会社へ行ったとしても、同僚が背中の紙に気が付いて声をかけるはずだ。

たいちゃん「増えてる!」
バハマ  「なにが?」
たいちゃん「ちんこが!」
バハマ  「ちんこがぁ?!!!」
たいちゃん「ちんこが増えとる!」
バハマ  「ちんこが!?ちんこが増えてんのか?!」

ズボンを降ろして確認しようとするバハマ。

たいちゃん「いや!ちょ!そっちじゃない!」
バハマ  「そっちか?!」

たいちゃんのちんこを指さすバハマ。

たいちゃん「違う違う違う!一回忘れてくれ!忘れてくれ!!」
バハマ  「いや忘れらんねぇよ!だって俺ちんこが2本に増えてるもん」
たいちゃん「いや、そうなんだけどさ!」
バハマ  「じゃあ3本か?」
たいちゃん「いや違うんだよ!お前今日さ、会社で何も言われなかった?」
バハマ  「いや、言われてない」
たいちゃん「いつも通りだった?」
バハマ  「いつも通り」

ここでたいちゃんは確信した。こいつは会社で嫌われている!と。そして決心した。まだ気づいていないなら、この件はなかったことにしよう!と。
おもむろにバハマの背中に手を伸ばすたいちゃん。

その手をはたき落とすバハマ。

たいちゃん「痛っっったぁい!痛ぁぁい!」
バハマ  「なんだよお前今日おかしいぜ!」
たいちゃん「お前のほうがやばいんだって!」
バハマ  「いやちんこが2本に増えてるってやつのほうがおかしいだろお
      前!」
たいちゃん「ちが!お前はちんこにうんこ乗せてんだよ!」
バハマ  「俺が!、、俺のちんこにはうんこなんか乗ってないし!
      ちゃんと一本だろお前!!!」

意味の分からない話に憤ったバハマが突然ズボンとパンツを降ろした。

たいちゃん「うわぁ!うわぁぁあ!」
バハマ  「一本だろお前ぇぇぇぇぇえ!!」

たいちゃんは人間ではない声を発しながら困惑している。

バハマ  「一本だろお前!!」

たいちゃんはひどい拷問に耐えているような表情で人外の声を発し続ける。

バハマ  「しっかり見ろ!座って!お前!」

目を背けるたいちゃん

バハマ  「一本だろ?!」

苦しそうに立ち上がるたいちゃん。


たいちゃん「、、、悪かった、、、」
バハマ  「、、、一本だろ?」
たいちゃん「一本。悪かった。落ち着いてくれ」
バハマ  「俺は落ち着いている。一本だろ?」
たいちゃん「そうだな。俺が悪かった。俺がどうかしてた」
バハマ  「お前が悪かった!」
たいちゃん「だから、パンツは履いてくれ」
バハマ  「、、、パンツだけだぞ」

ズボンは履かずにパンツだけ履くバハマ。二人は落ち着きを取り戻したが、バハマの背中には【うんこ】と【ちんこ】がついたまま。お互いにタバコを一本取り出し、縁側に座って火をつけた。

バハマ  「、、、どうしたお前、なんか変だぞ」
たいちゃん「うん、考え事があってね」
バハマ  「就職のことか?」
たいちゃん「違う」

すれ違う二人に沈黙が流れ、【うんこ】と【ちんこ】が風に揺れる。

バハマ  「、、、なんか、悩んでるなら、話聞くぜお前」

たいちゃんはこの言葉にハッとした。もしかしたら生活を共にするほどの友人にとんでもなく酷いことをしているのではないか。またいたずらが過ぎる癖が出てしまった。よく考えれば、こいつが今の俺の境遇を気にかけてないはずがない!と。

たいちゃん「、、、そうだな、、」

バハマの背中の【うんこ】と【ちんこ】を剥がして、二人の前に並べていくたいちゃん。

バハマ  「えっっっっっっっ!!!!!」

2つの紙をまじまじと見つめるバハマ。

バハマ  「お前これいつから?!」
たいちゃん「朝から」
バハマ  「朝から?!!!!!!!!!!!」

唖然とするバハマ。

バハマ  「ひでぇよお前こんなの!!」
たいちゃん「わりぃ!わりぃわりぃ悪かった!」
バハマ  「お前がやったのか?!!」
たいちゃん「俺がやったんだよ!でもさ!お前がさ!ニートニートって、」

憤るバハマが震えた手で二つの紙を後ろへ投げ飛ばしながら、たいちゃんを睨み付ける。

たいちゃん「、、、ニートニートって、バカにするからさ、、でも」

バハマがたいちゃんの胸ぐらをつかんだ。

たいちゃん「違うよ!あの、ちんこは、、、ちんこは!」
バハマ  「ちんこは?」
たいちゃん「、、、俺が、、書いたよ、、」
バハマ  「だよなぁお前!」
たいちゃん「、、、俺が書いた、、」

反省の色を感じたバハマは胸ぐらを離す。確かに、ニートニートとたいちゃんをからかっていた。たいちゃんが無職になったことでこれまでの生活が変わってしまうのではないかと恐れてたからだ。どんな境遇でも、バカを言い合う関係でいたかった。しかし、本当の気持ちはいつだって体験した本人しか分からない。これまでの発言や言動を一瞬、後悔するバハマがいた。

バハマ  「でもごめんな。昨日の今日のことだしな。気にしてるよな」
たいちゃん「、、いや、でも、俺もさ、ちょっとやりすぎたな、、
      、、ごめん」

ポッケから何かを取り出そうとするたいちゃん。

バハマ  「、、なに?」
たいちゃん「はい。鍵」
バハマ  「ありがとう、、」
たいちゃん「いいって」

タバコを蒸かす二人。さっきまでの殺伐とした雰囲気が一変し、なんだか落ち着かない、こっぱずかしいような雰囲気が流れた。

不意にバハマが後ろに投げた2枚の紙を手に取り、ある違和感に気づいた。

バハマ  「、、でもこれ、朝からついてたんだよね?」
たいちゃん「そうだよ?」

バハマがタバコを深く吸った。


バハマ  「、、、なんで俺の、会社の同僚は」
たいちゃん「考えるな!!!!!!!!」

         いつもの二人である。

         【~いたずら~】

END        ↓↓↓劇場版↓↓↓

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