山本太郎氏のコロナ15兆円の経済政策の財源を考えてみた

※素人の見解なので一部認識が間違っているかもしれないので遠慮なくご指摘ください。

私が大嫌いな山本太郎氏の政策で15兆円規模の経済政策を公約に選挙活動をしている。
その15兆円の財源は都債つまり、東京都の地方債を発行することで財源を確保するとのこと。
あまりにも大胆で前代未聞の政策であり、非常識な政策ですが一応理論的には可能であることを訴えている。

この政策は突拍子もないように感じるが100%間違っていると批判することは難しい所があり、反山本派の方々が間違った批判をして相手に正当性を与えている部分があると感じる。

彼らの理論の中にはMMTという概念が存在する。
MMTを100%理解している訳ではないが、シンプル化すると国家の借金が回りまわって個人の資産になるという考え方である。

もう少し細かく言うならば政府の支出は家計(国民)か企業に対して支払われるので家計(国民)か企業にとっては収入になる。
逆に政府の収入は家計や企業にとっては税金という支出によって受け取れる。
つまり、政府の支出が増えると国民や企業の収入が増え、国が豊かになるという考え方である。
その上で政府の借金である国債が増えると財政破綻するのではないかと考えるかもしれないが、市中に流れる資金が増えれば当然ながら一定のインフレが起きる。
インフレによる物価の上昇率(正しくは通貨価値の下落)が支払う金利を上回れば実質的な借金の額が低下するため、いくら借金が増えても財政破綻しない仕組みである。

いまいちピンとこないかもしれないので極端な例を出してみる。
もし、100万円借りて金利が1%と仮定すると1年後には101万円返さなければならないがインフレによって物価が10%増えると100万円の物が110万円になる。
そうするとインフレによって今の100万円と1年後の110万円が同じ価値になるため、金利で増える1万円分を差し引いた9万円分が実質的には増えるため、借金をすればするほど実質的に借金が減るという訳である。

という考え方を踏まえると都債を発行して経済政策をすることは一見間違っているとは言えないように感じる。
なので借金=悪という短絡的な批判は意味がなく相手にとってはむしろ善であるのは理解できる。

さて、前置きのせいで山本信者と思われそうだが私は何回でも言うが山本太郎が嫌いである。
論理的に批判をしなければ単なる愚かな感情論になってしまうので苦言を呈したい。(どうせ殆ど誰も見ないと思うので好き勝手言う)

まず15兆円規模の都債を発行することはそもそも難しいのではないかと考える。
実質公債費比率などそういった指標を出して理論上は可能だという主張は面白い側面であると感じるが、仮に15兆円の都債を発行しても買い手がいないのではないかと言うのが一つ目の懸念である。
単年度で起債するとは考えられないが毎年数兆円規模で都債を発行するとなると債券市場で供給過多になることが考えられる。
確かに東京都の財政を鑑みれば安全性としては十分なので買い手が確保できると考えることは不自然ではない。
しかし、買い手も資金は限度があり、長期間資金が拘束されることを考えると高い金利でない限り買うことは難しくなるだろう。

また、15兆円規模の都債は30年債で借りるため、5年や10年債よりも高い金利が必要になる。
一般的に債券は借りる期間が長いほど金利は高くなる。
これが第2の懸念である。
15兆円とまではいかなくても半分の7.5兆円を金利を低めに見積もって0.5%で都債を発行するならば1年で7.5兆×0.5%=375億円の金利を支払いが余分に発生しそれが375億円×30年=1兆1250億円が必要になる。
つまり、1兆円以上のお金が借金返済の利息で失う事と同じである。
一般財団法人地方債協会の全国型市場公募地方債(個別債)で東京都が発行した30年債の金利は0.48%だが、規模は50億円程度であるため、0.5%の計算は一見妥当だが、規模が大きくなれば希望通りの金利では売り切れず金利が上昇することが考えられる。
適切な例えとは言えないが大量に仕入れた商品を賞味期限切れまでに売り切らないといけない状況でセールをして売り切りたいという状況と同じである。
債券の場合、1万円分の債券を9000円で売ることで差額の1000円分を実質的に金利として扱う方法があるので同じような事をしなければ財源が確保できないとなれば多少割り引いて実質的な金利を高くすることになるだろう。

もちろんこれは東京都にとっての影響のみを考えた場合である。
資金が有限であることを考えると副次的な影響が考えられる。
例えば他の地方自治体の地方債が買われるはずの資金が都債に流れてしまうことが考えられる。
都債の金利が上がらなくても他の自治体の金利が都債よりも高い金利でしか市場では買われなくなり、地方債の債券価格が暴落する……と言えば言い過ぎだが懸念材料に十分なるだろう。
市場に流さない事を前提にすればこの問題はないと言えるが、数兆円規模の都債を1円も市場を介さず調達が可能なのか疑問が残る。
因みに日銀に引き受けされるという安易な考えがあるが、日銀は公債の引き受けは原則禁止なので一度市場に流してから買い上げる必要があるため、上記の問題が出てくる。

結局のところは、山本氏の政策が実現可能かという問に関しては不可能ではないと主張しているが、それは副作用を無視する事が前提となる。
金額の規模としても東京都だけの問題ではないため、都民ではない筆者も考えさせられる点がある。
そういった意味では戦略として上手であるが、左派ポピュリズムに迎合することはないと思う。
しかし、政策の問題点を解消することが出来て否定もしようもないなら考えるが恐らくそれはないだろう。

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