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僕が語っておきたい下北沢⑮~黄金色の至福

 既に代一元なく大昌なく、在住時代から常連にしていたラーメン屋も一柳と珉亭ぐらいになってしまった。両店とも、超有名店で食べログなどでも多くの人が紹介しているので、くわしくはそちらを参照されたし。
 一柳はオープンのころから通っていた。カウンターだけの小さな店で、お昼どきにいくと店の前に列ができていたりする。とにかく食い物屋に並ぶのが嫌いな僕は、時間をずらして再び訪れたりしたが、タイミングを間違えると店が休憩時間に入ってしまい、食べはぐってしまうこともあった。夜も7時くらいには滑り込まないといけない。
 開店当時の値段はラーメンが600円だったと記憶する。現在は850円である。ラーメン一杯に1000円はかけない主義の僕からすれば、ギリギリのラインなのだが、たとえ近い将来1000円を超えることがあっても、ここと桂花は例外に入れてしまいそうである(と書いたが、お気に入りメニューのワンタンめんは既に1000円になっていた)。
 一柳がオープンする直前まで、西口、すなわち井の頭線改札近くの白洋舎の前に、おなじ「いちりゅう」と読む一龍なる屋台ラーメン屋が立っていたが、両者に関係性はないようだ。一龍のラーメンもおいしかった。

一柳のラーメの特徴といえば、やはり、そのビジュアル、スープの色である。

  一柳 一柳  一柳のワンタンメン 白い器のもやけむる黄金色の水面
  麺の葦にからむ白衣の水死人(オフィーリア)
  レンゲの舟を浮かべ箸もつ私をしばし悩ませよ

カバネル『オフィーリア』

この店は餃子も絶品である。ビールは冷えたグラスともに出してくれる

一柳 一柳  一柳の餃子 さなぎの形に眠る充実 
熱き肉汁が 喉を流れるときの 咆哮にも似た歓喜
それを追って流れる滝のようなビールに絶頂

 こんなこともあった。いつもの満員のカウンター、ふと隣を見ると、そのカウンターの上に乗っかるほどの大きな女性のバストが。小池栄子嬢だった。そういえば、彼女、実家は下北沢のパチンコ屋で、自身も一柳ファンであることを公言していたっけ。このときばかりは、箸をあやつる僕の肘の先がバストをつついてしまいそうで、窮屈なカウンターでさらに身を縮めながらラーメンを啜ったものである。



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但馬オサム
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