『マグマ大使フォトアーカイブ』
『特撮秘宝』でお世話になった小沢涼子さん編集の『マグマ大使フォトアーカイブ』(金田益実監修/ホビージャパン刊)が届きました。
大判ハードカバーのズシリとした作り。表紙がマグマでなくアロンという、マニア泣かせなサバキの妙。
手塚治虫原作、『ウルトラマン』に先んずること2週の本邦初カラー巨大ヒーロー番組として特撮史に燦然とその名を刻みながら、リピートの少なさからか、知名度の点では一歩譲った感のある作品だけに、こういう出版物は心から歓迎したい。
大橋史典造形の名獣アロンは数ページにわたって登場し、そのディティール、独特の乾いた皮膚感などがよくわかる。マグマ怪獣のゴジラ型の傑作がアロンなら、ラドン型の傑作はバドラ。さしずめモグネスはアンギラス型か。モグネスのモチーフはモグラというよりセンザンコウのようである。後期怪獣でいえば、サソギラスにダコーダ、カニックス。意外と正当恐竜型の多いマグマ怪獣の中でこれらは異彩を放っていた。さらに、トドメのバルザス、『マグマ』のヒドラ的ポジションながらトラウマ度は数倍上の海坊主。
宇宙の鬼とも形容できそうな帝王ゴアのデザインと造形。悪の化身なれど子供好きという心憎い設定がキャラクターに奥行きを与えていたと思う。マサ斎藤の顔を見るたびにゴアを思い出していたのは僕だけではないだろう。
『マグマ大使』が、これだけは『ウルトラマン』に勝っていたといえるのは、入江義夫による精巧な建造物のミニチュアセットである。カニックス編の新宿西口の完全再現もすごいが、ストップゴン編での奈良東大寺は、中に大仏まで仕込んでおくという芸コマ。そのリアルさあって、放送当日は寺側から局にクレームが来たというのもうなずける。ストップゴンは国宝を破壊した罰当たり怪獣第一号の
第二次怪獣ブーム以降になると、特に円谷プロは顕著だったが、番宣やスチールで、いわゆる「怪獣広場」を見せすぎのきらいがあった。天井ライトやスタッフの手が写り込む以上に、子供心を白けさせてくれたものである。そんなことを思いながら改めて確認すると、入江ミニチュア(ジオラマというべきか)のすごさがわかる。画面に映らない部分までしっかりと作り込んであり、バレがない。また、第一次ブームのころは、スタッフも外部カメラマンも極力、子供の夢をこわさぬよう神経をくばっていたのではないか。
本書の最大のウリは、マグマ大使のスーツアクター魚澄哲也氏のインタビューと第1話の絵コンテ完全収録だろう。魚澄氏のインタビューが活字になるのはこれが初めてではないか。近影も載ってるが、その眼光の鋭さにはちょっと驚かされる。俳優という職業は生涯現役とはよくいったものである。
絵コンテは魚澄氏秘蔵のもので、ピープロ総帥うしおそうじ直筆のもの。手塚治虫の原作のキャラを使いながら、まごうことなくうしおタッチなのがうれしい。よくぞ保管しておいてくれた、と思わずページに手を合わせた。
正直、なぜ今『マグマ大使』本?というオールドファンもいるだろう。ただでさえ出版不況の中、発売は英断だったに違いない。むしろ、今出さなければ次はない!、という版元の心意気に感謝したい。小沢さんは相変わらずよいお仕事をされている。
毎年、桜のころ、芝・正源寺にうしお師の墓前に参るが、今年はうれしい報告ができた。ぜひ本書を持参しよう。