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クリソツのメロディ⑦ ボブ・ディラン『イッツ・オール・オヴァー・ナウ、ベイブー・ブルー』
You must leave now, take what you need, you think will last
(必要な物はすべて持って出ていくがいい)
Look out the saints are comin' through
(外を見ろ 聖者が通り過ぎる)
And it's all over now, Baby blue
(すべては終わったんだ、ベイビー・ブルー)
痛切な別れの歌である。そして、この歌は怒号飛び交う伝説の65’ニューポート・フォーク・フェスティバルで歌われ、頭の固いプロテスト・フォーク・ファンとの決別の歌となった。
ディランは『ベイビー・ブルー』でも『くよくよするなよ』でも『悲しきベイブ』でも、去り行く恋人をなじる傾向があるが、イヴェット・ジローの52年のこのヒット曲では、新しい女を連れて出ていく恋人に、精一杯の微笑みを浮かべてAdieu(さよなら)と送り出す。女の最後のプライドが切ない。
Celle qui t´a pris à moi, je devrais la maudire
(あなたを奪った、あの女を呪うべきなのか)
Pourtant, vois-tu mon amour, je me force à sourire
(でも、愛する人 私は微笑むよう努めるわ)
Elle est charmante et tu l´aimes, cela doit suffire
(彼女は魅力的だし、あなたが愛するのに充分だわ)
Puisque ton bonheur est là, c´est fini, oublie-moi
(あなたが幸せなら すべては終わったの 私を忘れて)
朝倉ノニーさんによれば、『Adieu』にも元歌があるらしい。
51年にカルロ・イノチェンツィ作曲のカンツォーネ『Addio, Sogni Di Gloria』(さらば栄光の夢)がそれ。こちらは、若いころは栄光を夢みながらも、ただ時が過ぎ去り今は、役所の簿記係、と人生を振り返るという中年男の歌。僕も身にせまらされマス(簿記係が悪いとは申しませんが)。
It's all over now, Baby blue
c´est fini, oublie-moi
すべては終わったのさ…。
(追記)
ディランの伝記映画『A Complete Unknown』がいよいよ日本公開される(2025年2月28日~)。むろん、ニューポート・フェスティバルのあのシーンも再現されるゾ。
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