週刊誌は朝日問題をどう伝えたか
植村隆を北の大地に飛ばした週刊文春の記事
1月9日(2015年)、慰安婦問題の火付け役のひとりでもある植村隆元朝日新聞記者(現在・北星学園大学非常勤講)が「救う会」会長で東京基督教大学教授の西岡力氏と文藝春秋社を相手取り1650万円の損害賠償を起こしたニュースが飛び込んできた。
なんでも、週刊文春2014年2月6日号の特集記事で、西岡氏が植村氏の慰安婦記事について(女子挺身隊と慰安婦を意図的に混同しているとして)「捏造」と断言したことが名誉棄損にあたるという。植村氏がこの期に及んで、なぜこのような挙に出たは不明だが、この訴訟劇自体は、まさしく朝日新聞社対保守言論の代理戦争、番外編と位置づけていいかもしれない。
該当記事は「 "慰安婦捏造"朝日記者がお嬢様女子大学教授に 」。
「お嬢様女子大学」とあるのは、当時、植村氏が教授職で内定が決まっていた神戸松陰女子学院大学のこと。結局、今回の"捏造"記事騒動がきっかけとなり、内定は取り消し(文春側は自社の記事がきっかけとなって大学に批判の声が殺到したとしている)、現在は札幌市の北星学園大学の非常勤講師に落ち着いているのはご承知の通り。もっとも、同じ「大学の先生」でも教授と非常勤講師ではその待遇は天と地の差がある。「授業1コマなんぼ」の講師職である植村氏の月収は推定で5~10万円といったところだろう。
慰安婦問題を巡る対朝日論調に関しての追及の鋭さ、斬れ味のよさにおいては、新聞では産経、週刊誌では週刊文春が群を抜いている印象がある。版元の文藝春秋社は同年10月(3日号)には「朝日新聞は日本に必要か」と題した臨時増刊まで出すほどの意気込みぶり。執筆者は前出の西岡氏の他に、秦郁彦氏、櫻井よしこ氏、西尾幹二氏、黒田勝弘氏らという強烈な布陣だ。
実は、週刊文春ではこれに少し先立つ9月4日号で、「朝日新聞『売国』のDNA」なるほれぼれするようなタイトルの特集記事を企画、朝日新聞が同号の広告掲載を拒否し、文春側が朝日側に厳重抗議するなど、両者の遺恨はヒートアップしていたのである。
どちらにしても、文春対朝日のバトルは新しいステージに入ったといってよかろう。
朝日の紙面広告で伏字にされた週刊新潮の見出し
紙面広告のトラブルということでは、文春のライバル誌でもある週刊新潮も同様のケンカを朝日に売られている。
朝日は、総特集「おごる『朝日新聞』は久しからず」を組んだ週刊新潮9月11日号の紙面広告を一部文字を黒塗りにして掲載。黒塗りにされた部分は『売国」と「誤報」という部分だった。朝日にとってこの二つの文言はタブーということらしい。それはともかく、同号の電車中吊り広告を見ると、総特集タイトルを含め、「朝日新聞の慰安婦虚報を共に囃した政治家・言論人・知識人」「朝日はもはや生き残れない」「ワイド朝日は昇らない」など、「朝日新聞」あるいは「朝日」という単語が8箇所も。まさに朝日づくしの新潮スペシャル・エディションといったところか。
興味深い見出しは「部数がドーン!に過剰反応は『不買』と『部数減』恐怖症」。
これは同誌9月4日号の記事「長年の読者が見限り始めて部数がドーン!」を朝日が問題視、「部数激減は事実でない」として広告掲載を拒否すると通達してきたことに対する新潮側の反論記事だ。
《この見出しを〈虚偽です〉と訴える。それでいて“事実”を数字で示さないのが、 朝日たるユエンであろう。 とまれ、朝日は焦っているようだ。》と、新潮さんも実に皮肉たっぷり。
また同記事では「もうひとつ朝日が恐れるのが広告主の行方で」とした上で、山田養蜂場、小林製薬といった広告主企業の実名を挙げ、消費者から朝日への広告出稿をやめるよう電話やメールがあったことの「証言」を紹介している。朝日としては、触れられたくない部分まで触れられたわけで、打ったジャブがカウンターのボディブローとなって返ってきたかっこうだ。
朝日はその後も週刊新潮10月16日号の「新聞協会賞『手抜き除染』キャンペーンに自作自演の闇がある」の記事に事実誤認があると噛みついており、文春同様、こちらの対朝日論調も今後大いに注目したい。
アサヒ対朝日
文春、新潮といった大手二誌だけではない。現在進行形の週刊誌朝日包囲軍には、アサヒ芸能、週刊大衆といった、いわゆる中堅・大衆誌も名乗りを上げている。
まずはアサヒ芸能。名前からして、朝日新聞系の週刊誌と思っている読者もいるかもしれないが、発行元は保守系書籍を多数出版している徳間書房だ。
同誌は渡邉哲也氏の「本当にヤバい朝日新聞社」を集中連載するなど、大衆誌の中では対朝日の斬り込み隊長といった風情がある。
8月28日号の同誌の巻頭特集は「『国賊メディア』朝日新聞への弔辞」。
《まさかこんな形で、朝日新聞が、大マスコミの看板を下ろす日が来るとは思いもよりませんでした。あまりにも急な別れで、言葉もありません。》で始まる、その名の通り弔辞形式の、いうなればパロディ記事だが、植村記事、吉田証言のあらましや、それによってわが国がいかに国益を失ってきたかが、わかりやすく説明されており、なかなか読ませてくれる。
結びの言葉はこれだ。
《創刊から135年、「社会の公器」としての役割を終え、どうか安らかにお休みください。合掌》
週刊現代に躍る「不買」「廃刊」の文字
アサ芸と並ぶ大衆誌の雄・週刊現代8月26日号は「『従軍慰安婦』記事を30年たって取り消し 日本を貶めた朝日新聞の大罪」、続く9月2日号は「『慰安婦報道』で韓国を増長させた朝日新聞の罪と罰 不買運動、廃刊要求が拡大中!」を特集。
《慰安婦に関する嘘だらけの報道をタレ流してきた朝日新聞。国際社会における日本の信用を傷つけた罪は限りなく思いが、謝罪の言葉一つない。その傲慢体質に愛想を尽かす人が続出している。》(9月2日号リード)と容赦ない。
返す刀で「慰安婦報道で韓国を増長させた朝日新聞の罪と罰」と題し、川村二郎氏(元・週刊朝日編集長)と河内孝氏(元・毎日新聞常務)の対談を2週にわたって掲載している。
週刊実話は傑作見出しぞろい
週刊大衆9月8日号の特集は「朝日新聞“慰安婦記事訂正”で激化!韓国メディア『ひどすぎ反日報道』スッパ抜き」。
サンデー毎日9月7日号は「朝日新聞慰安婦問題 なぜか『声欄』に“投書ゼロ”の不思議」。
と、やはり朝日ネタ全開。
傑作記事が並ぶのは週刊実話だ。昔から「『実話』とつく雑誌に実話なし」などと揶揄されるが、実はこの手の雑誌の一見胡散臭い特ダネに真実が隠れているものなのだ。見出しだけでも紹介の価値アリだろう。
「やっぱりW市川解任 朝日新聞“誤報”問題で収まらない粛清の嵐」(9月30日号)
「『社長即刻退陣』の怒号 社員集会でも浮き彫りになった朝日新聞のゲス体質」(10月26日号)
「朝日新聞新社長人事に社内で飛び交う『ワンポイント尻拭い役』」(11月27日号)
「100億円減収の防御策 創価学会池田大作会長に擦り寄る朝日新聞の断末魔騒動」(2015年1月1日新年特大号)
「笑い」を意味するネット言語「w」を使うのは、大衆誌にありがちなオジサン臭さを払しょくするためか。最後の記事は経営難に陥った朝日が藁をもつかむ覚悟で今年2月から池田名誉会長の手記を連載する予定だという怪しげな情報。ま、本誌が書店に並ぶころにはことの真偽ははっきりしていることだろう。
女性セブンは「朝日エリート妻」を直撃
最後に紹介したいのは、女性セブン10月2日号のこの記事、「哀切ルポ・ああ落日の『朝日エリート妻』」。
《家のポストに朝日新聞の批判記事が載っている週刊誌の記事が入っていたこともあります。誰が入れたのかはわかりません。主人の職業については、特に周囲に話しているわけではないし、誰がどうやって調べたのか…ちょっと怖いです。(中略)主人は主人で、『うちの会社はもうダメだな。辞めようかな』と弱気になっているし、内も外も大変です》
という「朝日エリート妻」の告白から始まる、このルポ、他人の不幸は蜜の味的のぞき見趣味がなんとも女性誌らしくて笑える。
週刊誌を中心とした朝日包囲軍、今後ますます広がっていくことだろう。朝日の文春訴訟も合わせて、目が離せなくなった。
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初出・『反日マスコミの真実2015』(オークラ出版)
※若杉大と本誌特捜週刊誌見出しウォッチャーズ名義
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(追記)
その後、植村隆元記者は「週刊金曜日」社長に就任したのは周知の事実。すっかり、左翼の姥捨て山、再処理工場となった感の同誌。桜ういろうも死に水を取ってもらえるな。それにしても、段々と雑誌の”顔”が小物化していくなあ。