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目からビーム!9 ウルトラマン望郷編~誰がための平和なのか
ウルトラマンやウルトラセブンは地球での使命を終えたあと、傷ついた体を抱えながら故郷である星へ帰っていく。それを見送るムラマツ隊長以下、科学特捜隊員たちは「これからの地球の平和はわれわれ地球人の手で守っていこう」と決意を新たにする。
ヒーロー物の最終回の定番ともなった、このパターンを作り上げたのも金城哲夫だった。その金城も『マイティジャック』放映終了後、円谷プロダクションでの任務を終えたかのように、故郷・沖縄へ帰っていった。昭和44年のことである。
「本土復帰は郷里・沖縄で迎えたい」。周囲にはそう語っていたという。この言葉にむろん嘘はないだろうが、突然の帰郷の決意には第一次ウルトラ・シリーズが終わり、低迷期に入った円谷プロでの彼自身の微妙な立場も影響していた。リストラで同プロ文芸室が閉鎖され、脚本家として書きたい作品が書けなくなっていたのである。
沖縄に帰った金城はラジオのパーソナリティをはじめ、海洋博の構成・演出、沖縄芝居の脚本・演出など活躍の場を広げた。しかし、故郷に根を張ろうとすればするほど、故郷沖縄との間にある目に見えない距離を実感してしまう。高校時代から単身本土で暮らし高度成長のただ中に身を置いていた彼の思い描く故郷と、長くアメリカの軍政下にあった沖縄のギャップ。県民の間には、復帰を迎えても米軍基地が残ることへの複雑な思いがあった。さらに自衛隊も配備されることになった。
「米軍基地の撤退を実現させるなら自衛隊配備による自主防衛の選択肢も問うべきだ」
金城は自身のラジオ番組でそう発言した。「地球の平和はわれわれ地球人で守るべきだ」とムラマツ隊長に言わせた彼の発言としては何の矛盾もそこにはないし、一般的に見ても常識的な主張に過ぎない。しかし、これが沖縄では大問題となったという。当時の沖縄は米軍以上に自衛隊に対するアレルギーが強かった。戦後作られた『鉄の暴風』史観によれば、旧軍は侵略者であり、米軍はむしろ解放軍なのである。そして自衛隊は旧軍の後裔に他ならなかったのだ。結局、この発言がひとつのきっかけとなって、金城はのちにラジオ番組を降板することになる。苛立ちはつのり酒量は増え続けた。その後の悲劇はよく知られていることである。
「地球の平和は地球人の手で」。今さらながら、この言葉をかみしめてみたい気がする。
(初出)八重山日報
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