目からビーム!94 沖縄? いえ軍艦島~サニー千葉逝く
チャーリー・ワッツ、ジャンポール・ベルモンド、ジェリー藤尾……訃報が続く。
中でもサニー千葉こと、千葉真一氏の逝去は新型コロナによる肺炎が原因だっただけに衝撃も大きかった。あんなに体を鍛え上げた人でもコロナにやられるのか、というのが第一報を聞いたときの正直な感想である。同時に82歳という年齢にも驚いた。子供のころ憧れていたスターというものは齢を取らないものと、意識に思い込んでいた自分に気がついた。まあ、そんな自分も確実に齢を取っているのだが。
数多い千葉氏主演映画の中では、小粒な作品かもしれないが、なぜか忘れられないのが『冒険者カミカゼ』(81)である。共演は氏の愛弟子の真田広之、そして秋吉久美子。一攫千金を狙った男女3人組が海に陸にギャングと戦いながら大冒険するこの映画、タイトルも含めて、アラン・ドロン、リノ・バンチェラ、ジョアンナ・シムカス主演のフランス映画『冒険者たち』(68)にインスパイアされている、というか、はっきりいってパクリ。オリジナルの原作はジョセ・ジョバンニだが、『カミカゼ』のタイトルロールにクレジットがないところを見ると、やはりパクっちゃったのだろう。まあ、そのへんはおおらかな時代ということで。
余談ついでに書けば、このジョバンニ、元マフィアのメンバーで脱獄囚。フランスでは脱獄の罪は重く、死刑判決を受けたこともある。のちに作家、脚本家を経て映画監督になったという異色の経歴の持ち主だ。
『カミカゼ』だけど、クライマックスの舞台は「沖縄」である。といってもそれは設定だけで、実際は、あの軍艦島で撮影されているのだ。何も知らないでこの映画を観た人は、沖縄というところは、海に囲まれた廃墟だらけの島と早合点したかもしれない。僕も、軍艦島出身の友人から指摘されるまではわからなかった。
その軍艦島をロケ地に使い、実銃ではない銃撃戦はいいとして、廃墟ビルの屋上での火薬をつかった爆撃シーンなど、よく許可が下りたものだと思う。友人もスクリーンで観てぶっとんだらしい。まあ、そのへんはおおらかな時代ということ……で、いいのかな。
それはさておき、世界遺産登録前の軍艦島の風景を堪能できるということで、廃墟マニアにはお勧めの珍品である。
初出・八重山日報
▲こちらが本家『冒険者たち』。ドロンがまさかの振られ役。