『母をたずねて』と人間発電所
アルゼンチン・バックブリーカー。アントニオ・ロッカやブルーノ・サンマルチーノといったイタリア系プロレスラーが得意としていた必殺技だ。イタリアなのに、なぜアルゼンチン?
ずばりいえば、アルゼンチンにイタリア系移民が多かったということである(ロッカはイタリア系アルゼンチン人の息子)。
19世紀中ごろ、産業革命によって欧州の人口が爆発。食い扶持をもとめて新興国の南米諸国に出稼ぎに出るイタリア人も多かった。
アルゼンチンという国名はラテン語の「銀」を意味するArgentumに由来する。ゴールドラッシュならぬシルバーラッシュに沸いていて、好景気だったのである。土地も肥沃で、小麦もよく獲れた。
わかりやすい例をあげるなら、『母をたずねて三千里』。主人公マルコの母もジェノバからアルゼンチン・ブエノスアイレスに出稼ぎに行っている。結局、マルコが訪ねていくと、そこには母はおらず、マルコは南米北上の旅を余儀なくされるのだが。
ちなみに、フランス語で「お金」を意味する単語はargent。これは「銀」と同義である。欧州で、金貨でなく銀貨が一般的だった時代のながりだろうか。まあ、その金もスペイン人が南米からかっさらっていくのだが。
出稼ぎ労働者の中にはそのまま移民としてアルゼンチンに定住する者も多かった。人口構成では、イタリア系は先に移住したスペイン系、ギリシャ系を抑えてダントツだという。他にインディオもいるが、混血が進んでいるようだ。
イタリア系移民がアコーディオンを持ち込み、苦しい労働のあと、、酒場で歌い踊ったのが、アルゼンチン・タンゴの始まりともいわれている(異説あり)。
▲南米ということで、フォルクローレ調。70年代アニソンの中でも名曲中の名曲。
▲「母をたずねて」の原作が、アミーチスの『クオーレ』の中の「今週のお話」のひとつであることはよく知られている。他にも「投げられたインク瓶」など日本でもよく知られたエピソードが満載。但馬が生まれて初めて手にした文庫本がこれだった。