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海軍予備学生で元特攻隊だった方との会話

―学問を放擲されてまで海軍に志願された理由は何だったのですか。
「新聞で戦況を読むたびに、我が国が追い詰められているのがひしひしと伝わってきました。このままではいけない。われわれ若い者が立ち上がらねば、という必死の思いですね」
―あのう、当時の新聞は大本営発表を垂れ流すだけの、威勢のいい記事ばかりだったと聞きますが。
「ハハハ、確かに敵機何機撃墜なんていうのは誇張された数字でしたけどね。でも、新聞の隅々まで読めば、日に日に戦況が悪化しているのはわかりますよ」

だよな。当時の大学生といえば、超インテリゲンチャ、次代を担うエリート候補。それくらいのリテラシーはもってて当然。
それ以来、僕は特攻隊員や戦死者に対し、「軍国主義に騙されたかわいそうな人」という言葉だけは使ってはいけない、と強く思い、今も思っている。
「かわいそうな人」=哀れみは、現代の人間の上から目線でしかない。これほどの侮辱はあろうか。
ピタゴラスの定理は中学の数学で学んで誰でも知っている。だからといって、現在の中学生がピタゴラスより頭がよいというわけではないだろう。

そしてこうも思うのだ。
ひょとして、「騙されたかわいそうな」のは、戦後生まれの僕らなのかもしれないと。

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