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皇室にまでケチをつけはじめた女子差別撤廃委員会 藤井実彦(論破プロジェクト)

(はじめに)
 実は国連の女性差別撤退委員会が、皇位継承を男系男子とするわが国の皇室典範に対し「女性差別にあたるのではないか」と、いらぬ干渉をしてきたのは、今に始まったことではない。私の知る限りでも過去2度ほどあった。最初は2016年である。論破プロジェクトを主催する藤井実彦さんからその情報をもらったとき、ちょうど私(但馬)は『国連発世界反日時代』(メディアソフト)というムックの企画準備中だった。
『国連発世界反日時代』というタイトルの意味から説明すると―。当時、日韓最大の懸案であり反日プロパガンダが慰安婦問題だった。その慰安婦問題は、「クマラスワミ報告」という形で国連人権委のイシューとして取り上げており、本来は日韓間の問題であるはずの「慰安婦」が国際問題に発展しかねない状況にあった。これに危機感を覚えた私は、国連は既に反日プロパガンダの発信基地と化し、情報戦の戦場と化しているという警告の意味で、同ムックを企画したのである。
 藤井さんは慰安婦問題のカウンターとして藤木俊一さんらとともに何度もジュネーブの人権委に足を運ばれている。2016年のジュネーブ行きでは、浪人中だった杉田水脈さんも参加、熱弁をふるったこでも記憶にまだ新しい。
 とにかく、国連での慰安婦問題にだけ全神経全知力を振り絞ってきた藤井さんたちにとって、皇室典範への干渉は寝耳に水のことであった。さっそく、私は「国連人権委と皇室典範」というテーマで藤井さんに寄稿を願った。それが、本編である。改めて読み返してみても貴重な内容で、この問題がどのように仕掛けられていったのかがよくわかるものとなっている。われわれが、反日情報戦の風下に立っていることも。
 多くの人に読んでいただきたく、藤井さんのご厚意でここに転載させていただく。

(リード)
神聖にして侵さざる存在はある。ローマ法王、ダライ・ラマ、そして日本の天皇。反日勢力はついに一線を超えた? フェミニズムが唯物史観と結びつくとき、これは最悪の兇器(狂気?)となる。そして、やつらを背後で操る者とは――。
 
国連が皇室典範改正を勧告?
 
 今回の話は、国連がいかにおかしく、偏っていて、滑稽なものかを伝える良い事例になるかと思う。
 2016年2月16日、われわれ国連派遣団は、国連内で行われる、女子差別撤廃委員会の最終会合に足を運んでいた。
 そこでは、昨年来懸案となっていた、慰安婦問題への日本政府の最終弁論が行われることになっていた。
 杉山外務審議官は、委員とのやりとりで「『性奴隷』といった表現は事実に反する」ということ、「慰安婦の捏造を広めたのは朝日新聞であり、20万人という根拠も存在しない」と明確に否定し、国連内における「慰安婦=性奴隷」という虚偽を払拭しようと精力的な発言を行った。画期的な発言だったし、その場の派遣団も喜びに包まれた。
 今回の話は、その1ヶ月後、3月8日に産経新聞がスクープとして報じたニュースによって明らかになった。3月7日に国連女子差別撤廃委員会から日本政府に対する勧告が出たのだが、その3日前に女子差別撤廃委員会副委員長・鄒暁巧(すう・ぎょうこう)氏から以下のような話が出ていたというのだ。
 「日本の天皇制における男系男子継承のスタイルは女子差別にあたるのではないか?それを勧告の中に含めたいが、問題ないか?」
 これに対し、ジュネーブの公使が反論し、「女子差別を目的とした制度ではないことを理解して欲しい」と述べたというのだ。そしてこの内容を産経新聞は《男系継承を「女性差別」と批判し、最終見解案に皇室典範改正を勧告 日本の抗議で削除したが…》という見出しで報じた。
 

2016年2月の国連女性差別撤廃委員会にて。糸数氏の隣の赤いジャケットが鄒暁巧(ゾウ・シャオチャオ)氏。中共のエージェントだ。

委員会で議題にならなかった皇室問題
 
 この事実はわれわれ保守の側からしてみれば、不遜甚だしいことであるのは明白だ。
 安倍首相も3月14日の参院予算委員会で「わが国の皇位継承のあり方は、条約の女子に対する差別を目的とするものではないことは明白だ。撤廃委員会が皇室典範について取り上げることは全く適当ではない」と猛烈に反論した。さらに安倍首相は、「わが国の皇室制度も、諸外国の王室制度も、それぞれの国の歴史や伝統があり、国民の支持を得て、今日に至っている」、「議論の過程で皇室典範が取り上げられたことは一度もなかった。手続きの上からも疑問を感じる」と続けた。
 結果的にこの文言は日本政府側の抗議で削除されたわけだが、実に腹立たしい内容を含んでいた。
 さらに記事によると《「特に懸念を有している」として「皇室典範に男系男子の皇族のみに皇位継承権が継承されるとの規定を有している」と挙げた。その上で、母方の系統に天皇を持つ女系の女子にも「皇位継承が可能となるよう皇室典範を改正すべきだ」と勧告していた。》 とされる。
 
反日左翼が国連で踊る
 
 このニュースはことここに及んでおかしな話であることに気づく。
 問題点は2点ある。ひとつは、われわれが女子差別撤廃委員会に参加した際、この皇室典範改正の話は、2015年7月の予備委員会の際も、今年の2月の本委員会でも話題になっていなかったということ。安倍首相も指摘しているように、われわれもどちらも参加しているから間違いはない。話題に上っていなかったのだ、一切。
 もう一点はなぜこの副委員長がそれほどまでに日本の皇室の情報を知っていたのか? それもフェミスト的な視点で偏った形で提言、勧告まで行おうとしていたのか、ということだ。
 どちらも腑に落ちないが、この2点の原因について話を進める。

国連人権理事会とは 
 
 そもそも、この女子差別撤廃委員会をはじめ、国連人権理事会とはどんなところかを説明してゆかないとこの話の意味はわからないかもしれない。国連自体が壮大なパロディーであることがこの話でお分かりいただけると思う。
 国連人権理事会は2006年にできた新しい組織で、それまでは国連人権委員会という組織が世界各国の人権問題などを扱っていた。
 この人権理事会は4年に1度大きな総会が開かれるが、この理事会の下部組織として国際人権条約ごとの委員会が9つ設けられている。それは以下のようなものである。
 
・自由権規約人権委員会
・社会権規約委員会
・人種差別撤廃委員会
・女子差別撤廃委員会
・拷問禁止委員会
・児童の権利委員会
・移住労働者委員会
・障害者権利委員会
・強制失踪委員会
 
 この委員会は各国の代表が15名ほど選ばれ、3年から5年周期で条約批准国の人権状況を調査する。
 調査の際には各国のNGO団体がジュネーブまで訪れ、政府の問題点などを指摘する。その指摘を委員会が調査し、各国政府に反論の機会を与え、最終的に勧告を出してゆくのだ。
 と話すと何やらきちんとした勧告のように感じるが、それが全く違うのだ。

国連マッチポンプ詐欺
 
 日本における事例が顕著だが、わざわざ日本からジュネーブに行き、日本の人権状況を伝えようとする組織の大半は、日本を貶めようとする集団であるのが実情である。
 最近では、朝鮮学校無償化の依頼とか、ヘイトスピーチの問題、特定秘密法の問題、原発で実は1700人も死んでいる、という虚偽の情報、選択的夫婦別姓の問題、LGBT問題など、当時はあまり話題にもなっていなかった問題を、反日NGO団体がわざわざジュネーブまで赴き、ロビー活動するのだ。
 政府以外にはそのNGOが言ったことは反論できる余地もないわけで(その場で反論しなければ、委員には一切伝わらない)、政府が強力に否定しない限り、その提示された事案は、国連勧告として、日本政府に突きつけられるのだ。
 最近ではこの事例により、ヘイトスピーチ法が国会で可決される端緒になったり、LGBT問題などが突然クローズアップされるきっかけになっている。
 これは言ってみれば、マイナーな事例を国連で取り上げて、勧告さえもらえば、なんでも言いたい放題になる、ということなのだ。
 反日マスコミである朝日新聞や赤旗、そして琉球新報などは、ことさら上記のような問題を、「国連で勧告が出たのだからすぐに日本政府は改善しなければならないのだ!」と記事にする。
 しかしそもそも、このNGO団体が国連に提出していた資料こそ、この反日マスコミが書いた有象無象の嘘情報に満ちた記事を参考文献にしてレポートにしているのだ。
 つまり、この反日マスコミと、反日NGOはグル、ということだ。
 国連という錦の御旗を徹底的に利用し、間違った情報を自分たちで拡散し、政治利用しているわけである。 これを私は「国連マッチポンプ詐欺」と呼んでいる。 

うごめく慰安婦問題の影
 
 特にこの中で慰安婦問題に関する主張を日本の反日左翼が行い、国際社会に害悪をばらまいている委員会が自由権規約委員会、女子差別撤廃委員会、児童の権利委員会、人種差別撤廃委員会などである。
 その事始めは、1992年に日弁連の戸塚悦朗氏が人権理事会の前身である人権委員会の差別防止少数者保護小委員会、さらにその下の現代奴隷制作業部会で「慰安婦=性奴隷」であると主張し始めてからだと言われている。
 ここから24年間にわたって、反日左翼は国際NGOという国連認定団体を隠れ蓑にして、積極的に慰安婦プロパガンダを国連を通じて広めてゆくことに成功したのだ。
 ちなみに、最大の反日的な活動をしているNGO団体は「日本弁護士連合会」(日弁連)と、部落解放同盟が母体の「反差別国際連合」である。
 この2団体が反日左翼のまとめ役となり、かなりの数の反日団体が国連に足繁く通っている。
 例えば、最近ユネスコの記憶遺産に慰安婦問題を申請した団体として日本の代表となっているのが「アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館(Wam)である。そして2015年10月に、国連特別報告者のマオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏は、「日本の女子高生の30%は援助交際をしている」という誤った情報を発信し、謝罪に追われたが、その情報を提供していたと思われるのがNGO団体である「ヒューマンライツ・ナウ」である。その代表、伊藤和子弁護士は、かなりの回数ジュネーブにて、慰安婦問題に対する発言をしているものと思われる。

マオド・ド・ブーア=ブキッキオ。児童虐待とネグレクトの撲滅をライフワークとするオランダ出身の法律家。彼女もまた日本の反日勢力に踊らされているのか。

 上げればきりがないほどの反日左翼団体が毎年のように大挙して訪れる国連人権理事会とは、一体どんな場所なのか、本当に驚くばかりである。
 2014年の自由権規約委員会には大挙して70人以上の反日左翼が来ていたし、2016年2月の女子差別撤廃委員会では100人近く、さらに糸数慶子などの反日的な活動を沖縄で行なっている政治家なども多数来ている。
 これはもはや、左翼祭りであり、毎年このジュネーブで言いたいことを言って、国連人権条約の各団体の委員を騙してきた、彼ら反日左翼の最後の楽園であったのではないかと思われるのだ。 

委員長は林陽子、日本人!?
 
 話を戻すと、この左翼祭りが盛んなジュネーブにおいて、女子差別撤廃委員会の委員長が一体誰であるのか、というのは大変に重要である。
 皇室典範改正を提案したとされる副委員長は鄒暁巧という、中国の代表である。慰安婦問題に対して、オーストリアのホフマイスター議員とともに必死で文句を言っていた人物で、反日左翼のNGO団体の人間とは、終始仲良く写真を撮ったり、会話を楽しんでいたのが印象に残っている。
 そもそも、彼女が日本の皇室の男系天皇、女系天皇の話を知っていること自体が非常におかしなことだと思うのが普通だ。
 そこで一番の問題になるのが、同委員会の委員長が、なんと日本人であったということだ。
 彼女の名前を林陽子という。早稲田大学を卒業後弁護士資格を取り、ケンブリッジ大学大学院に留学、その後トントン拍子に出世し、内閣府男女共同参画会議「女性に対する暴力専門調査会」の委員をはじめ、政府の要職につくようになる。2008年から国連女子差別撤廃委員会の委員に選ばれ、連続当選、2015年には委員長に就任している。
 その彼女が、いわばフェミストとして、バリバリの活動家でもある、ということは履歴を見るとわかる。
 彼女はAsia Pacific Forum on Women Law and Development(APWLD)の運営委員を1980年代から10年ほど務めた。この団体はアジア最大規模のフェミニスト団体として有名である。
 この委員には、なんとクマラスワミ報告書で国際的に慰安婦問題を広めるきっかけになったラディカ・クマラスワミ氏が含まれている。
 さらに朝日新聞元記者で、2000年に「女性国際戦犯法廷」と称する劇を開催し、昭和天皇を被告にして裁判を行ない、昭和天皇に強姦罪による死刑を宣告した松井やより氏もこの組織の委員であったことがわかっている。
 林陽子氏はインタビューの中で、松井やより氏に「アジアの女性運動について多くのことを学びました」と尊敬の念をはっきり述べていることから、フェミニストとしての活動と、反日左翼的な皇室廃止論者の系譜を受け継いでいる可能性が高いと考えるのが常識的だ。

 さらに林陽子氏は部落解放同盟がバックボーンの反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)の顧問も兼務している。反差別国際運動日本委員会は、反日左翼陣営の中心勢力の一つである部落解放同盟と日教組幹部から構成されており、当然反日左翼勢力である。
 現在の委員長の立場でありながらこの組織の顧問を続けているとするならば、極めて不適切な行為であることは明白だ。
 レポートを上げてくるNGO団体の顧問を、委員会の委員長がしていることが、倫理的に大きな問題であることは論をまたない。
 しかも彼女は日弁連にも所属しており、ダブル、トリプルで皇室典範改正を要求する要素に満ち満ちている。
 とすれば、当然、今回の女子差別撤廃委員会の皇室典範改正要求の本丸は、林陽子委員長ということになる。鄒(ゾウ)副委員長はカムフラージュと見てよいだろう。
 林陽子氏が鄒(ゾウ)氏に皇室典範改正の情報を流し、彼女に話をさせたのだ。
私はそう見ている。

林陽子。東京第二弁護士会所属。この写真を見れば、どういう人物かおわかりになろう。近年は虹色運動(LGBT)にも積極的にコミットしている。まさに全身左翼。

外務省の大罪は消えない
 
 しかし林陽子氏を女子差別撤廃委員会に推挙したのは外務省であり、彼女のバックボーンを調べることなく委員に推薦したことには大きな責任がある。
 ただ、外務省のこの体質は、なかなか治らないに違いない。外務省に大きな問題があるからだ。
 外務省には人権条約履行室という部署があり、統合外交政策局の中に入っている。ここでは、先般述べた人権条約で、国連から勧告を受けたものを、粛々と守るための政策立案を行う仕事をしているのだ。
 本来であれば、反日左翼NGO団体がマッチポンプ的に行った提言を、国連が何もわからず勧告したものであるから、守るという前に反論を行うのが筋であろう。この国連マッチポンプ詐欺のカラクリを知っていれば、当然のことだ。
 しかしその茶番の提言を守ろう!という奇特な部局が存在しているのだ。もはや開いた口が塞がらない。
 
 まだまだ国連のマッチポンプ詐欺を、我々がジュネーブまで行って、監視する必要があるようだ。 
 
 初出 

(追記)
なでしこアクションのHPブログ「もぜひ合わせてお読みください。問題の核心がより深く理解できると思います。


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