第9話THE SEARCH FOR SKATEZOMBIE
1987年には、ボーンズ・ブリゲード・ビデオショウの第3作目となるあの名作「THE SEARCH FOR ANIMALCHIN」が発売された。
駒沢 POSSEの中で誰よりも早くこのビデオを入手したのが潮だったので、皆潮の家に集まってこのパウエルの新作ビデオにくいいる ようにして見入った。 失踪したスケート界の聖人「ウォントン・アニマル・チン老」を探してブリゲードが旅をするという映画のようなストーリー仕立てになっていて、スケ ート・シーンもハワイの「WALLOWS」のディッチに始ま り、S.Fのストリート、「RITCHMOND PLAYGROUND」でのランプ・トゥ・ウォールウォーク、パウエル・ファミリー総出演のランページ・セッション、 「PINK MOTEL」でのプールライディング、「BLUETILE LOUNGE」でのスケート・パーティーの模様、ラストの「チン・ランプ」と呼ばれる巨大エクステンション・ランページでのブリゲードの4人同時の曲芸ライディングに至るまで見所満載で、一同あまりの面白さに圧倒され自分達でもこんなビデオが作りたくて、いてもたってもいられなくなってしまった。
そこで、皆で知っているかぎりのスポットをまわって、こんなビデオを作ろうという企画がもちあがった。ホラー映 画、特にゾンビ物が大好きな潮の発案で、死から甦った謎の「スケートするゾンビ」が都内各所に出没し、悪行のかぎりをつくしているというニュースを知った駒沢POSSEが、こんな奴を野放しにしておいては、スケーターに対する世間の風当たりが更に悪化しちまうじゃねえかといって立ち上がり、自ら「スケート・ゾンビ」を探し出して退治するというナメきった設定のもと、早速クランクインとなった。
潮が嬉々としてゾンビ役を買って出たので、自前の服をビリビリに破いてもらい、絵の具で全身に特殊メイクを施し、冒頭のスケートゾンビの登場シーンを撮ることにした。
潮の家の庭になぜか丁度人が一人入れるほどの大きさのコンクリート製のマンホールがあったので、メイクした潮がゴムホースをくわえて中に入り、蓋を閉めて砂をかけ、合図とともにマンホールの蓋を押し上げて登場するということになった。この日の晩は都合のいい事に満月だったので、これを使わない手はないということで、満月のアップからカメラがマンホールにパンすると、グググッとマンホールの蓋が動き出し、さあいよいよバケモノの登場かと思われたが、潮がホースをくわえたままナニやら叫んでいるので 「出られねえんじゃねえ?」と気付く。見ればホースも思いっきり見切れているので、皆で爆笑しなが らマンホールの蓋を開けてやると潮が「死ぬかと思ったよ、バカヤロウ!」とボヤキながら出てくるので更に皆の爆笑を誘った。
聞けばままならない体勢からマンホールの蓋を押し上げようと試みたが、予想以上に蓋が重くとてもじゃないが持ち上がらないという。なんとか改善してこのシーンを撮り終えたが、このエピソードはしばらくの間公園で 他のPOSSE達に語り継がれることとなった。結局この思いつきだけの映画が完成することはなかったが、今でもこの日潮ゾンビを囲んで撮った写真が残っている。
つづく
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