第17話初めてのアメリカ3 VENICE DOGTOWN大瀧君と
俺達4人にはアメリカでスケートスポットを巡る以外に、絶対にやろうと決めていた事があった。ひとつは銃を撃つ事、そしてマリファナを自由に吸いまくってやろうという事だった。
そこで、ヴェニスのドッグタウンスケーツで働いている大瀧君を頼ろうと、有名なスケートショップ「STREETS OF VENICE」へ行き、大瀧君の連絡先をもらった。潮が「MOVIN'ON」の撮影で一緒だった高橋ですけど、マリファナを分けて欲しい」との旨を大瀧君のアンサリングマシンに残して、サンディエゴに戻る道すがら、シューティングレンジを発見したので、早速銃を撃つ事にした。
映画の影響もあって、中学、高校とモデルガンばかりいじくっていたおバカな俺は、潮と一緒に喜々としてシューティングレンジに入り、カウンターで銃を選び始めた。実弾が50発付いて40ドル程だったので、俺は回転式のリボルバーとオートマチックの2種類、リボルバーはあの映画「ダーティハリー」でクリント・イーストウッドが使用していたスミスアンドウェッソンM-2944マグナムと、オートマチックはやはり映画「ゲッタウェイ」でスティーブ・マックィーンが使用していたコルト45ガヴァメントを選んだ。オートマチックは店員から簡単な講習を受けるのだが銃の扱いに慣れていた俺はすぐにレンジに入れてもらう事が出来た。
うす暗いレンジ内には予想以上の発射音が鳴り響いていて さすがにビビった。イヤープロテクターが無ければとてもいられない程だ、ズシリと重い実銃に実弾を込めていると心底 ゾクゾクして、右手に銃をにぎり、ターゲットに向けて左手で右手首をしっかりとホールドして44マグナムのトリガーを引いて人生初の実銃を撃った。心地良い反動が両手を伝わってきた。コルトガヴァメントはオートマチックなので撃つとスライドの右側から空の薬が飛び出した。
やはり実銃はモデルガンとは違う。横のレンジの潮もニヤニヤしていた。合計100発を撃って、紙製のターゲットと空薬莢を土産にコンドミニアムへ戻ると、 大瀧君から連絡があり、「OKだから遊びに来い」との事で、ヴェニスのエル・ポヨ・ロコというメキシコ料理店で待ち合わせとなり、俺達4人は狂喜した。
翌日、俺達は二日つづけでフリーウェイ405号線に乗り、北へ向った。ベニスブルヴァードのイグジットで降りて西へ待ち合せのメキシコ料理店に着くと、大瀧君はすでに店の屋外の席にいて、ブリトーを食べていたので、俺達は握手してからソッコーでタコスを食べ、大瀧君にベニスのスポットを案内してもらうことになった。
まず、ベニスパビリオンに行き、ストリートスケートをし、それから雑誌やビデオ で有名なベニスハイスクールの校庭に行った。ベンチでロックンロールスライドしたり、バンクでオーリーなどをして 時間を忘れて滑った。大瀧君がベンチを超高速でロックンロールスライドするのに目を見張らされ、ホンモノのドッグタウナーの骨太な滑りだとうならされた。
夕方になると、大瀧君が「今、ルームメイトがいなくてベッドもあるから今日はもうオレん家に泊って行け」と言ってくれたのでお世話になることにした。
俺はずっと憧れ続けてきた大瀧君と丸一日中一緒で夢を見ているようだった。大瀧君の家はベニスビーチから近く、かなり危険なエリアだったがそんなことは俺達4人にはどうでもいい事だった。
リビングで車座になって早速マリファナを吸いながら、 飲み始めた。テレビにはBGMがわりに「EASYRIDERS MAGAZINE」のビデオが流れていた。俺は突然大瀧君からジョークで本物のショットガンを突きつけられたりして、ホールドアップし、皆の笑いを誘った。
俺達は 大瀧君のドッグタウンスケーツライフの話を聞きながら マリファナを廻し吸っていたが、ふと大瀧君が隣室 へ行って戻って来るなり、1ドル礼をまるめて1人づつ隊室へ行くようにうながされた。隣室の鏡台の前には人数分の純白のラインが引かれていた。
つづく