【詩】某夜更け

ネオンが夜を支配する街から
見放された古いアパートのワンシーン
レポートの最後の一文字を打ち込んだ
新聞紙で5年前愛した男の名前を見つけた
心の支配者へ苦情の手紙を書きつけた
明日の展覧会の原稿を書いた
尊敬する詩人のスクラップをなぞった
お気に入りの銘柄の箱を翫んだ
日課のデッサンを描いた

彼らは仕上げに火をつけた
キャバレーのマッチで
フランベの名残で
ジッポライターで
コンロの火で
煙管の残り火で
暖炉の燻りで
裏庭の焼却炉で

希望を
絶望を
安らぎを
誠実を
愛情を
憎しみを
ペルソナを

弔った

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