ポチエの一言(2020.08号)
8月は「移住」「ワーケーション」「イノベーション拠点」などの、一言言いたくなるようなテーマがニュースにたくさん並びました。ポチエが少しそれぞれ一言つぶやきます。
移住といえども、「混んでいる都市へとわざわざ移住」する人々
コロナによる自粛が徐々に解除される中、移住の話題が目立った。個人的な印象だが、ニュースなどで見聞きするコンテンツのほとんどは「移住先の選び方」や「働き方」にフォーカスしているように思える。
さらに、その「移住先」に関するランキングをみていると大都市の近郊ばかりがランクインしていたが(コロナ禍で東京離れ? 住みたい街ランク、1位は本厚木)、このことについて思うことがある。
確かに、大都市の近郊は便利かもしれないけれど、密度問題はどうなのだろうか。混んでいるからコロナが大変だったんじゃなかったんだろうか。混んでいる所から混んでいる所へ移動をしたところで、根本的な解決にはいたっていない。(コロナ移住、結局「首都圏近郊」が人気なワケ)
結局スーパーに行けば人がたくさんいるし、近所の公園なども密度が高いかもしれない。人口の多い人気の都市に今まで住んでいたからこそ、コロナ中、移動や密問題で大変な思いをしたのではないか。移住先や働き方だけにフォーカスするのではなく、根本的な「なぜ移住をするのか」というところにフォーカスをしないと支離滅裂な話になりかねない。
移住のパターンは今後、以下の基準で変わるだろう。「今の仕事(例えば東京の職場)を辞める」または「今の仕事を維持」もしくは、「移住先で賃貸または、移住先で不動産購入」の基準だ。さらには今後、東京より起業しやすい街もかなり増える可能性があることを考えると、起業目的の移住もあるだろう。
そんな中、各自治体はこぞって「移住者を呼び込む」プロモーションに邁進中。 移住セミナーにサクラを呼ぶってことまでしてしまった自治体もあるわけで、このサクラ代は誰がどの予算でやっちゃったんだろう(国の移住セミナーが現金で参加者を動員「サクラ」に1回5000円)主催している市町村だとしたら、その市町村は移住先として問題がある。
国の予算だったら、さらに国策ということになるわけで「移住の国策」はさらに明確に提示されないといけない。これだけの人口移動の動態を誘発する事態なのだから、私たちには知る権利があると思うのだがいかがだろう?
イノベーション拠点の開設は一体誰のため?
7月、8月は軒並み開設されていったイノベーション拠点の記事を多く見かけた。(トヨタコネクティッド、スタートアップとの共創を推進する拠点を都内にオープン)(三菱地所、東京駅直結のイノベーション拠点をオープン 都心の再デザインめざす三菱地所、東京駅直結のイノベーション拠点をオープン 都心の再デザインめざす)
こういうのを見ると、東京はそのうちイノベーション拠点で埋め尽くされていくかもしれないと思う。企業はお金を投資し、施設を次々とオープンをさせている。
しかし、これは一体誰のため?何のため?
スタートアップ・エコシステム拠点都市の発表が政府からされたことが記憶に新しいが、こうみるとどうやら政府の動きも関係していると考えられる。こういう流れを見ると、一攫千金を狙おうとしている起業家たちが波に乗って踊らされているようにも見えるし、「起業をしなさい」とプレッシャーを人々に与えているのかもしれない。でもうまくいかなくなると、そのときは政府は知らない顔をする。これまでも何度も繰り返されてきた、そんなストーリーかもしれない。
実はそんな中でも、京都大学の室田浩司さんのコメント(エコシステムと政府)が国内スタートアップ事業の的を射ている。国内VCの多くに呆れているのだが、一方で、私は「彼らこそイノベーションを起こしてくれ」と切に願っている。
そして、何よりも政府がきちんと旗を振る必要がある。本気でスタートアップ支援をするなら今だ。
久々に1年前に寄稿した文章を思い出した(Cul De La 通信 第12号Cul De La 通信 第12号寄稿文「これからの都市計画」)のだが、そこで「今後重要なのは、ボトムアップ(起業家)とトップダウン(国策)のシームレスな融合が重要である」と考えていた。1年経っても、この融合にむけた動きはまだまだ前途多難だ。
福利厚生の延長にしかならない「中途半端」なワーケーション
COVID-19の影響による緊急事態宣言が解除され、それぞれの事業者がリモートワークを中心とした営業をはじめた頃に、ワーケーションに関する記事が目立ちはじめた。(温泉地などで遊び・働く「ワーケーション」の発想がダメすぎる理由)
去年くらいから良く見かける様になったコンセプトだが、コロナ禍により休暇も取れず、あちこちでストレスが浮き彫りになりはじめると、「安全に休暇をとりながら仕事を少し進める」という考え方が非常に魅力的に見えはじめたのであろう。
ただいくつか問題もある。受け入れ先がまだ少なく、長期滞在が可能かつある程度隔離された状態で、仕事がきちんとできる環境が整っている施設はものすごく少ないのである。(県庁舎32階にカフェ 10月中旬オープン)その場所は誰が何をしに来るのか全く設定されていない単なる「空き空間」が、地方に続出しているだけである。
さらに、今までサラリーマン経験しかない人々がいきなりワーケーションをとれ、と言われてもどうしていいのかがわからないという現状もあるようだ。(愛媛企業と専門人材仲介 ワーケーションでako)「疲れている都会の人が、田舎に行って休みながら仕事をしてみよう」的な話が多いけれど、結局、仕事も休暇も成立しない可能性は大きい。
結果として、各企業の人事部が介入する必要が出てきて、結局福利厚生の延長になってしまう話が多いと聞く。それぞれの人が自主的に、目的地、滞在日数、作業量、予算などを決めにずらく、中途半端なワーケーションになりがちなのである。
もう5年ほどワーケーション状態で仕事し続けている私から、いろいろお伝えできることはまだまだありそうなので今後も、ワーケーションは追って一言つぶやきます。