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Hitchin’ A Ride 3

そして遂にヒッチハイク当日を迎えた。もう10月だってのに残暑が厳しい日で、頰を撫でる熱い風に少しだけげんなりしたのを覚えている。

最初のヒッチポイントに選んだのは東京都世田谷区にある用賀IC近くの大通りだった。人生初のヒッチハイクなのもあって、ポイントについてから実際に行動を始めるまでに多少の逡巡があったものの、意を決して歩道のギリギリに立ち、A3の画用紙に「大阪方面」とだけ書いたものを頭上に掲げ始めた。

正直言って最初の10分くらいは少し恥ずかしさもあって、「あぁ、俺にもまだ羞恥心が残っていたのだなぁ」と感慨にふけったりもしていた。

見晴らしの良い大通りだったので、ドライバーの視界には入っている感じはしたのだけどなかなか反応がない。反応があったとしても、チラッと見て目を逸らすか、露骨に笑われるくらいだった。

でも慣れというのは恐ろしいもので、暫くするとそれらの反応も全く気にならなくなり、運転している人達の顔を観察する余裕も出てきた。

開始から30分程度が経過して、「なかなか反応がないなー」とか思っていると、1台のミニクーパーが減速して歩道に近づいてきた。助手席の窓が下がり、「神奈川までしか行けないけど、それでも良ければ乗せるよ」と40代くらいの男性が話しかけてくれた。
これは僥倖とばかりに「ありがとうございます!全然大丈夫です!」と返すと、目と鼻の先にあったコンビニを指差して「それじゃあそこで乗せるから、あのコンビニで待ってるね」との事だった。

初めてのヒッチハイク成功に心の中でガッツポーズをしながらコンビニに停車している男性の車まで向かった。

『Hitchin’ A Ride 4』に続く。

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