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ワン・イーボー(王一博)が日本の小説に初登場!?『パッキパキ北京』めちゃおもろい【読書感想文】
綿矢りさの小説『パッキパキ北京』(集英社)は、年度替わりのバッタバタの生活で疲弊した心に効いた。
「癒す」でも「ほっこり」でもない。「何か楽しいこと、したい!!」という前向きな読後感をもたらす。
主人公は、自分の欲望に正直。フレネミー(友人の顔をした敵)のマウントも、不測の事態にも動じない。
そんな主人公が、コロナ禍後期の中国に駐在中の夫に呼び寄せられる。
夫は、ハイキャリアな雰囲気で、文学の素養があり、中国文化に詳しい。だが、異文化にはなじめておらず、疲弊している。
対して、主人公は、北京で遭遇した未知の食事も、ファッションも、通販サイトも臆せず試し、加速度的にお気に入りを増やしていく。言葉が通じない現地の人とネットでつながり、翻訳アプリを活用して対面で交流する。
規範にこだわらない。人のために我慢したりもしない。イヤなことは引きずらない。自分が「楽しい」「快感」と感じる道を選び、自分自身のアドレナリンの放出方法を隅々まで心得ている。
先週読んだ『自分以外全員他人』の、人に迷惑をかけずに暮らして自分の欲望を見失った主人公とまるで対照的だ。
この小説は、北京の疑似生活体験を楽しめるのだが、中国で現地放映中のドラマを好んで視聴する私がつい折り目をつけてしまったページがある。
『陳情令』などに出演し、Weiboでは4000万以上という驚異的なフォロワー数を誇るトップ俳優「王一博(ワンイーボー)」が出てきたページだ。
テレビやネット広告に引っ張りだこのワンイーボーがやたら目につく感じ、なんとなく想像できる。ほんの6行の描写だが、日本の小説にワンイーボーが出てくるのは、初めてではないだろうか。(もし、既にあったら教えてほしい)
『パッキパキ北京』は、「ここではないどこかへ」と願いながら、「今」の沼に足をとられている人におすすめだ。
今の生活を貪欲に楽しむヒントは、意外とすぐそばに転がっているのかもしれない、という気持ちにさせてくれる。
【参考】
パッキパキ北京(単行本)綿矢りさ
https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/pakkipaki/