【中国ドラマ】『失笑』の「お笑いライブシーン」で真顔になってしてしまう
11月に配信された中国の現代ドラマ『失笑』(英題:smile code)。
主人公の女性(キャスト:沈月/シェン・ユエ)は、昼間は駆け出し記者として働きながら、夜は副業でコメディアンをしている。大都市で一人暮らしをする経済力がなく、薄暗く古びたシェアハウスに暮らす。
主人公の男性(キャスト:林一/リン・イー)は、幼い頃に母親を失ったことがきっかけで自分の感情を認識することができない「失感情症」になった男性。
医師のすすめで小劇場のスタンダップコメディに足を運んだ男主は、ステージに立つ女主と出会う。彼女の笑顔を見ると、なぜか痛む手首。自分の感情が動いているからだ、ということにまだ気づいていない。
笑わせる彼女と、笑えない彼は少しずつ距離が縮まって……。
――というラブストーリーだ。
女主との出会いをきっかけに、過去にとらわれた男主の心が少しずつ溶解していく様子が丁寧に描かれる。
男主を演じている林一は今回も惚れ惚れするほど美しく、女主の沈月の太陽のような笑顔もまぶしい。
しかし、ものすご~く残念だったのが、物語を支える柱の1つである、女主のスタンダップコメディの台本である。
例えば、こんなお笑いシーンがあった。(要約)
女主「私のシェアハウスには、日本語を勉強している男の子がいるんだけどさ、半年間かけて覚えた言葉は”バカヤロー!”だけ」(客は大爆笑)
女主「彼と同じ部屋のもう1人の男の子は、ナンパが大好きで、よく女の子に“うちに来なよ”って誘ってる」
「仲良しの2人の会話はこんな感じ。
“うちにきなよ”“バカヤロー!”」(オチなので、客は爆笑して拍手でたたえる)
このドラマ、こんな感じのライブが幾度となく繰り返されるので、笑いは笑いでも、あぜんとして、きょろきょろ周りを見回してから苦笑いするような感情がこみあげてくる。
劇中、ライブに来ても、真顔でピクリとも笑わない男主に対し、女主は「コメディアンにとっての屈辱は、笑ってもらえないことよ」的なことを言うのだが、「だって笑えないし……」と思ってしまう。
中国語を英語に直訳した字幕で見ているから、もしかしたら、私が細かいニュアンスを読み取れていないのかもしれない。だが、中国語の書き込み(翻訳ツール利用)を見てみたら、ことコメディの場面に関しては「コメディの場面が絶望的につまらない」と辛辣なクチコミが目立っていた。
そんなこんなで、物語が進んでくると、official髭男ismの『subtitle』の歌詞が脳内でぐるぐる回り始める。
「凍り付いた男主の心」を「太陽」で溶かすような明るい女主のふるまいは、前半はよかったのだ。やがて、女主が変われない男主に業を煮やし始めると「だいぶ傲慢」で幼稚に見えてきて、イライラしてしまう。その対比で、女主に思いを寄せる同僚男性の共感力の高さや、女主の母親の成熟性がきわだってしまう。
今回紹介したドラマ『失笑』は、地域制限がかかっており、日本の『We TV』では視聴することができないが、いずれ日本にも上陸することが予想される。コメディの場面はいただけないこのドラマだが、母娘の親子関係、サブカップルの恋愛など、見所は多いので、日本語字幕で視聴したい。
日本での配信がスタートした折には、2人の距離感が近づいていく様子を楽しみつつ、スタンダップコメディの内容にも着目して欲しい。もしかしたら、ちゃんとした日本語字幕になったら、笑えるのかもしれない。