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『1982年生まれ、キム・ジヨン』を読んで泣く日本人女性が怒った理由
「女が賢すぎると会社でも持て余すんだよ。今だってそうですよ。あなたがどれだけ、私たちを困らせてるか」
これは以前、日本でも話題となった、1人の女性の半生を描いた韓国の小説『1982年生まれ、キム・ジヨン』に登場する“エラい男性”の言葉だ。
この本を読んだ女性のリアクションは日韓で異なり「韓国人女性は怒り、日本人女性は泣く」のだという。
しかし、『1982年生まれ、キムジヨン』を読んで、泣いたであろう日本人の女性が怒っている。
先日、五輪の委員会で“エラい人”がこんなことを言った。
<女性がたくさん入っている理事会は、理事会の会議は時間がかかります>
<女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです>
<私どもの組織委員会にも女性は何人いたっけ? 7人くらいか。7人くらいおりますが、みんなわきまえておられて。>
ますます苦しくなる国民生活と切り離され、ますます膨張して暴走する大会運営を抑止しようという発言だったら、女性であろうと男性であろうと活発にされるべきだ。わきまえるべきではない。
「この案に異議はありませんか」
「……」
「じゃあ、この案で進めます」
みたいに、独裁的なリーダーのもとでトップダウンで物事が進む組織のほうがよほど怖い。
政治は生活だ。がしかし、生活の運営を「家内」に丸投げしてきたであろう人たち、多くの女性が担ってきた「家庭・子育て・地域」の“雑事”を見下しているように“見える”人たちが、国会や企業のトップに就いている。
2021年、私たちの生活は傷みに傷んでいる。収入が激減した人、感染症の患者と日々対峙しているにも関わらず差別を受ける医療従事者、ケアをするべき家族を持つ女性のダメージは甚大だ。
2020年12月6日付の新聞記事によれば、この1年間で爆発的に広がったウイルスの影響で世界各国で家事や子育てといった家庭内の無償労働が女性に偏り、女性の収入減少は雇用環境の悪化につながっているという。
しかし、相変わらず、大切なことは男性比率がきわめて高いエラい人集団が密室で緊密に連携して、決めている。安心・安全な場所で、集団外では通じない内輪向けの冗談で笑い合いったり、長年培った不文律を大切にしながら。
あの発言主を「(五輪の知見については)余人をもってかえがたい」と形容した政治家がいた。
仮に「キムジヨンを読んで泣くしかできなかった」読者たちに、怒るエネルギーを与えたなら、前出の発言主は「余人をもってかえがたい」人物となるのかもしれない。