中国ドラマは「過干渉な母親」の登場率がなぜ、高いのか?人気ドラマ『承欢记』を見て考える
「ヘリコプターペアレント」は、いつも子どもの近くでヘリコプターのようにホバリングして、あれこれ口を出す過干渉な親を表す言葉だ。
中国の現代ドラマを数多く見ているが、成人している主人公の母親が「ヘリコプターペアレント」の頻度が高い(ときどき父親も)ように感じる。ドラマに癒しを求めている私は、母親登場シーンで嫌気がさして、視聴を離脱することもある。
先週スタートした中国の話題ドラマ『承欢记』をゆるゆると見始めたのだが、母親のキャラが、まあ強烈。
【承欢记1話 (杨紫(ヤンズー)、シューカイ(許凱)主演)】
サービス業に従事する女性主人公(キャスト:杨紫/ヤンズー)は、人格者で仕事ができる女性。恋人はちょっと頼りないけど仲はよい。
対して、主人公の母親は、「結婚の延長線上の恋愛」について、自分の価値観を女主にぎゅうぎゅうと押しつける。夫の経済力に不満を募らせているので「自慢の娘が自分と同じ苦労をしないために」と恋愛に口を出しまくる。
「娘のために」といいながら、娘の希望には無関心で、自分の世界=子どもの世界で、自分の考えこそが正解。恋人の経済力を理由に娘の交際に反対していた母親が「彼が実は金持ち」と知った後の手のひら返しのシーンは、イライラして飛ばし見した。
6話まで視聴したが、主人公2人が同じ画面に映るシーンが少なく、クセの強い母親のシーンが多いので「もっと男主のシューカイ(許凱)見せてくれ」という気持ちになる。
「個と個」の恋愛を望んでも、「個」が属する「家」や「会社」などがくっついてきて、主人公の幸せの邪魔をする描写は、アジア圏のドラマの「あるある」かもしれない。
このドラマは、「家」絡みのシーンの不快度がものすごく高い。仮に今後の展開で仮に母親が改心したとしても、現実はそうはいかないから、ご都合主義だと感じてしまいそう。
「子は苦労して育児した親に従うべき」「大切に育てた優秀な子は、自分の“私物”」「手塩にかけて育てた“私物”は、親が納得する相手以外との結婚はNG」という一部の親世代の考えも垣間見える。
あまり好きな言葉ではないが、日本では「毒親」という言葉が認知されつつある。自分の幸せや人格を壊しかねない親とは「距離を置く」「別々に暮らす」という選択肢も社会的に許容され始めている。
親族の結びつきが強い文化圏では、いざというときに頼れる心強さがあるかもしれないが、親族から逃れられない苦しみもありそうだなぁ、と推察する。
いずれにしても、子どもをうまく管理しながら、「タイガーマザー」(超スパルタの管理型母親)となって「孟母」(孟子の教育熱心な母)のごとくより良い教育環境を与え、きちんとした仕事につかせ、ヘリコプターのように張り付いて、ラクをさせてくれる相手と結婚させるための親の計らいは、子を苦しめることもある、という認識が若い世代にじわりと広がっているのかもしれない。
――とクセの強い親が何人も出てくるこのドラマを見ていると思う。