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【中国ドラマ】スキャンダル俳優がAI技術で別人に顔交換された「蜀錦人家」。表情が自然すぎてビビる

2019年の紅白歌合戦。国民的歌手の故・美空ひばりがAI技術によって「よみがえった」。本人にそっくりな画像が、本人にそっくりな声で、本人が言いそうなことを話した場面は、物議をかもした。
 
現在は、5年前よりもAIの技術が日常に浸透しており、顔交換アプリをはじめ、さまざまなAI技術を気軽に利用できるようになっている。しかし、エンタメの世界では「実在の人に似せた動画をつくること」への抵抗感はまだ根強いのではないか。
 
――という私の感覚を軽々と超えていったドラマがある。
 
中国で11月下旬にスタートした古装ドラマ『蜀錦人家』(英題:Brocade odyssey)で、スキャンダルを抱えた1人の俳優の顔がAI技術で別の俳優の顔に差し替えられているのだ。

『蜀錦人家 予告編』(差し替えられた俳優は0分23秒~28秒頃登場)

下記の記事でも触れたが、中国の芸能界で活躍するためには、愛国心と私生活のクリーンさを求められる。スキャンダルを起こすと、ことの重大さに応じた期間、芸能界を締め出されてしまう。当然、ドラマにも出演することができなくなる。

しかし、中国のドラマは撮影から公開許可を得て公開されるまで1年程度かかる。つまり、撮影から公開の待機期間に出演俳優がスキャンダルを起こすと、お金と時間をかけたドラマが「お蔵入り」の危機に陥ってしまう。
 
万が一、スキャンダルが発覚したらどんな制裁が下されるかわかっているだろうから、タレントは私生活の管理には細心の注意を払っているだろう。しかし、それでも何かやらかしてしまう人はいるし、スキャンダルの煙の香りに過敏なネット民もいる。
 
蜀錦人家』で顔が差し替えられた俳優、張昊唯(チャン・ハオウェイ)は、脱税などのスキャンダル疑惑がかけられ、いまだ疑いが晴れていない。撮影済のドラマについては、彼の顔を入れ替えて放送する方針が決定されている。

彼がこのドラマで演じていたのは、主人公の女性に思いを寄せる役。かなり大切な役である。顔だけ別の俳優の顔に差し替えられているものの、体は本人が演じている。嫉妬の表情が出てくるが、瞳の揺らぎや表情がちょっと不気味。

顏交換技術が用いられている
表情はごく自然で、技術の進歩に驚く

しかし、おそらく、事前に「AIで顔交換された」と言われなければ、気づかないほど精巧であることは間違いない。「言われてみれば」なんだか眼の光がないなとか、生え際がヘンだなとか、いろいろ気づきが出てくるのだが、あくまでも「言われてみれば」のこと。

何も知らされずに見れば「この役者、なんか演技がヘンだな」「肌の補正、強すぎないか?」程度の感想しか抱かないと思う。映像技術の目利きでなければ。
 
それにしても、道義とか倫理とか不気味さとかそういう心理的な問題を全てなぎ倒して、公開のために超合理的な選択をする点にカルチャーショックを受ける。「作品と演者のプライベートは別だろ」とか「顔はダメで体はいいんかーい!なんて、ことを議論する余地も余裕もないのかもしれない。
 
ちなみに、伝統技術を軸に展開する肝心のドラマの内容は「主役が中川大志に似ている」と思いながら、いつも寝落ちしてしまうので、このドラマの感想は「AI技術すげえ」という感想で終わる可能性が高い
 
なお、AIで顔が差し替えられた俳優は、他にもいくつか待機ドラマがあったため、それらのドラマでも顔が差し替えられる可能性が高い。
 
もう半年以上前から「まもなく公開!」と言われて続けている『爱情有烟火』(英題:Love has fireworks)の公開が遅れに遅れているのも、このスキャンダルのせいではないか、言われている。

『長相思』の檀健次(タン・ジェンツー)と、『柳舟记』の王楚然(ワン・チューラン)の共演のドラマは、もしかしたら、顔の差し替え作業が終わったら、見られるようになるのかもしれない。



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