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【韓国ラブコメ】「悪いあるある」を巧みに回避した韓ドラ『社内お見合い』の見事な構成

殺伐とした社会に、ラブコメディのドラマはときめきと癒しを届けてくれる。

しかし、中には残念なラブコメは少なくない。

ラブコメオタクの私が途中離脱したパターンを分析したところ、以下の7つの要素があったので列挙してみた。


1. 女主に共感できない

モテ人生を歩んできた男主がこれまで出会ったことのないような女性と出会うことで恋に落ちる展開は、ラブコメの定型。その女主が、がさつ、無鉄砲、酒乱、ギャーギャーと怒ってばかり、暴力的……というケースがままある。

女性をメインターゲットとしたラブコメは、男性主人公と同等に、女主の魅力が大切だと思う。

自我をむき出しにしてありのままにギャーギャーと怒っていたら、いつの間にか相手から好かれていた、というパターンには、食傷気味だ。

「そりゃ、男主も恋に落ちるわ」という説得力が欠けると、とたんに共感できなくなる。

2.男主が偏屈・幼稚すぎる

男主の「ツン(冷たい態度)・デレ(ベタぼれ)」を楽しむラブコメは多いが、「ツン」のときの言動がひどすぎるケースが見受けられる。

先日、料理をテーマにした中国の新作ラブコメ『DINE WITH LOVE』を楽しく見ていたが、一瞬で熱が冷めたシーンがあった。女主が用意した誕生日のサプライズディナーを男主が台無しにするシーンで。

男主は誕生日にトラウマを抱えていたのだが、それを理由に相手をひどく傷つけるのは、いただけない。まだ思いが通い合っていない段階であっても、著しく共感力が欠けているシーンを見ると、興ざめしてしまう。

いずれ女主にベタぼれの「デレ」になることはわかっていても、「ツン」のときの最低限の思いやりは必要なのだ

3.ヒーロー像が紋切型すぎる

その時代の理想の「ヒーロー像」をラブコメの主人公はさまざまな形で体現する。

一昔前にはちょっと強引な男主が「壁ドン」をしたり、女主をドキドキさせるために顔を近づけて耳元でささやいたり、絡んできた酔っ払いを暴力で撃退したり、足をくじいた女主を無理やりお姫様抱っこしたり……という場面がよくある「型」だった。

しかし、「この場面にこのアイテムを入れておけばいいでしょ」という意図によってそうしたシーンをぶっこまれると、男主のキャラがぼやける事態がよく起こる。

ちなみに最近は「料理上手」「掃除好き」「機転が利く」「生理用のナプキンを買ってきてあげる」みたいな寄り添い系の男主をよく見かける。ただし、当初のキャラとのかい離が見られる場合があるので、文脈の無視は避けて欲しい。

4.女主のライバルが意地悪すぎる

三角関係、四角関係はドラマの醍醐味だ。

恋のライバルが、嫉妬に駆られて意地悪になり、主役カップル成立を妨害し始めたり、ジェラシーをむき出しにする場面はよくある風景だ。前半から後半までライバルがチョロチョロつきまとってずっと邪魔をし続けるドラマだと、逆にライバル役の人が気の毒になってくる。

いやがらせをが延々と続く展開によって、視聴者は刺激に飽きてくる。

5.男主のライバルが魅力的すぎる

対して、男の主人公のライバルが魅力的すぎるのもまた問題だ。

主人公の男性は不器用で冷たいのに、わき役の男性がかいがいしく女主をケアしていたりすると、わき役に感情移入しすぎて、見ていてつらくなってしまうこともある。

6.優しかった男主のライバルが「闇落ち」する

さらに、ずーっと優しく女主を優しくサポートしてきた2番手の男性が、恋が叶わないと悟って、急に悪人になって恋路を邪魔し出すパターンがある。

ライバルの俳優が自分の「推し」だったりすると、もう悲劇である。

7.延々とすれ違いが続く

互いに好き合っているのは周囲の人にも視聴者にもバレバレなのに、すれちがう2人。

昔の恋人の登場、親の反対、家族の急病、急に訪れたビジネスチャンス、トラウマ克服、互いの勘違い……などなど、さまざまな障壁があるが、じらす時間が冗長に続くと5倍速ボタンが欲しくなる。


ハマれない条件を巧みに避けた最近の王道ヒット作は『社内お見合い』

ここまでハマれないラブコメにありがちなパターンについて列挙してきた。

ちなみに、今Netflixで大人気の『社内お見合い』は、お決まりのテンプレートがてんこ盛りなのに、上記の条件を全て避けて作られていて、もう「見事!」しか言いようがない。

女主は仕事熱心で情に厚く、男主はジェントルマン。悪役の出番は限定的で、ムダなすれ違いはなくとんとん拍子に話が進む。紋切型のハマれないラブコメを劇中のドラマでパロディ化しているところが巧妙。

王道でいて新しい。今後の展開が楽しみだ。


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