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西原理恵子の過去の育児系「金言集」を読んでいたら、悲しくなった

一昔前の育児情報誌を読むと、「今はこの情報、絶対NGだろうな」という内容がある。
 
「十年一昔」なんて言葉もあるが、最近では3年スパンくらいでどんどん変わっているような気がする。
 
インターネット空間の育児情報の「アウト!」「セーフ」のボーダーラインの変化は特にめまぐるしい。

■過去10年の育児情報「アウト」「セーフ」の変遷


2010年頃には、特定の食品や菌が科学的根拠もなく、もてはやされるような状況が放置されていた。
 
2015年ころからはバイラルメディアが激増する中で、素人の執筆者による眉唾な情報、例えば「熱が出たらキャベツ枕」的な記事が繰り返し炎上した。

2022年6月の今、Googleはちょっとあやうい情報を排除するのがどんどん上手になっている。そうはいっても「妊娠後期 胃もたれ」などと検索すると、自社のサービスを啓発するのが目的のオウンドメディアの記事がトップに出てきて、医師免許のない人が記事監修していたりするけれど。

……とそんなふうに、過去を振り返りたくなったのは、2014年の雑誌を読む機会があったからだ。
 
当時は「なるほどね」と読んでいた記事を、8年ぶりに読むと「やべー」と思ってしまう。
 
時代が変化して、自分の感覚も変化したのかもしれない。今なら、根拠のないことをこんなに自信たっぷりに断言するのはちょっと無理……と思った箇所も数多くあった。
 
その1つが漫画家の西原理恵子氏の育児金言集だった。
 
6月初旬、数々のヒット作を世に送り出してきた彼女の家族のブログが拡散され、ネット空間がにわかに騒がしくなったのは記憶に新しい。
 
過去に彼女の育児エッセイ漫画を読んで、しみじみ、ほっこり、ゲラゲラと感情忙しく家族の事情を消費“させて頂いた”ことがある1人として、ほのぼのとしているように見える家庭でも、視座を変えると地獄なのかもしれないと、育児中の親として怖くなったし、誰かの苦悩も知らずに無自覚にコンテンツを消費してきたことを反省した。
 
そして「うちは、概ね普通に幸せ」と思いこんでいる家庭が、家庭の姿を鏡に映してスクリーニングしたうえで是正する術がなかなかないことに絶望したりもする。
 
育児情報は、今もヤバい情報があふれている。影響度を持つ人の「金言」や「育児ハック」はどこかの家庭で収集され、その片りんが少しずつ培養されているのかもしれない。
 
過去に「金言」ともてはやされた言葉たちが、誰かの心にくさびのように突き刺さっている可能性があるかもしれないので、「そんなことはないよ」という意味も込めて、ここで引用しておく。
 

【サイバラ金言集(『MAMA MALIA vol2』より引用)】

<娘には自分のトリセツが、息子には過去の彼氏のトリセツがききます>

『MAMA MALIA vol.2 』(光文社)

娘と自分は別人格なので、自分のトリセツはきかない過去の彼氏と息子だって別人格なので、トリセツなんて一切役立たない。 

 <仕事が好きな女は子育ても同じ。だって同じ現場だから。>

 →「ケアする」現場は、「稼ぐ」と言う現場とは全く異なる。

<私の子育ての目標は、息子をニートにしない、娘を売春婦にしない>

→明らかな職業差別。

 <仕事のできない女の話は聞くな>

→仕事できる・できないの評価軸だけで、話を聞くか聞かないかを決めると、触れる意見が偏る。私の場合には、自称・不器用で仕事できない友人のアドバイスに何度となく救われている。

<子どもを殴らない、借金しない、男に頼らない><収入さえあれば子どもは育てられます>

→収入だけじゃ育てられない。たとえ豊かな収入があって家事をアウトソースできたとしても。
 
私たちは不確かな時代を生きている。

今日の金言は、明日のクズ紙幣」かもしれないと心に留めておくと同時に、同じ雑誌にあった内田春菊の言葉を紹介しておく。
 

<子育てのコツは、頭の古い人の意見を聞かないこと。そういう意味では、みなさんも決して私の真似をしないこと>


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