先が読めるからおもしろい!アジア圏ラブコメのテンプレート20選
社会派ドラマもサスペンス映画も見る気力を失ってしまった。ニュースがサスペンス、日常はドキュメント、ネット世界は罵詈雑言のバイオレンスな今、ハッピーなものだけ見ていたい。というわけで、この1年、アジア圏のラブコメディを重点的に見ていた。
それまでは縁のなかったお気楽な韓流・華流のラブコメを見まくっていて気付いた「ラブコメの法則」を書き記しておく。
1. 恋に落ちる前のヒロインは転ぶ・よろめく
最初の印象は最悪。「ほんっと信じられない!」と言っているときに、フラッとよろめいて、男性主人公が女性主人公をキャッチ……という展開はだいたい2話くらいで登場する。
2. 豪快に飲み食いするヒロイン
ラブコメの世界では串焼きをクチャクチャと豪快に食べ、酒(タイアップの瓶酒や缶チューハイ)を飲んで「カーッ」と言う女性が魅力的なのだ。豪快は正義らしい。
3. 「おしん」のような不憫なヒロイン
不憫な主人公も好まれる。家族がいなくて天涯孤独。おばあちゃんと2人暮らし。非正規労働の賃金で家族を養う。親が無実の罪を被っている、など。総じて、貧しい主人公はひたむきに仕事をがんばる。そんなところが社会的地位が高いヒーローの庇護欲を刺激する。リアルの世界とは違うところだ。
4. ハプニングで感じの悪いあいつとキスするハメに…
主人公の2人がお互いの意外な面をちらっと垣間見て見てちょっと意識し始めたころ、2人は転んだり、池に落ちたり、階段から落ちたりする。そしてなぜか唇が触れ合ってしまうのだ。
華流・韓流ともにかなりの割合でアクシデントキスが登場する。私が無作為にそういうドラマを選んでしまっているのかもしれないが、全16話なら4話前後、全30話なら7話前後、つまり1/4程度のところでアクシデントが起こる。近年、1話~2話で発生するケースが増えており、早期化している。
5. 男装してもバレないヒロイン
時代劇でも現代劇でも女性が男装して「男社会」に紛れ込む設定はよく見られる。殿下の側近、学生寮の人気者と同じ部屋、男ばかりの職場など。そして、ヒーローに愛されてしまう。たいてい主人公はメイクバッチリである。「絶対バレるやろ!」と突っ込みながら視聴するのも楽しいものだ。逆の設定もあればいいのに。
6. トラウマで記憶喪失
幼少期のトラウマにより事故や事件の記憶を失っているケースはめちゃくちゃ多い。夜間の運転、エレベーター、水際……ふとした瞬間に過去のトラウマの映像が断片的に浮かび上がる。
7. 記憶を失っていたが幼少期にじつは出会っていた2人
しかも、失われた記憶の中でじつは出会っているんだ、主人公の2人は。潜在意識の記憶が親愛の気持ちを駆り立てる。物語の後半で既に両想いになっている2人は、お互いの過去に気づいてさらに愛が燃え上がる。
8. 親族に反対される2人
アジア圏には家父長制が根強く残る。愛が通い合っても家柄が釣り合わなければ文句を言う親がいる。若い頃には「結婚するな」というくせに、ある一定の年になると「いつ結婚するんだ」と言って婚活をさせる親は、どこの国にもいるもんだ。
9. カップル間の経済格差
カップルの一方が華やかな社会に身を置くストーリーも多い。男性であれば、御曹司、たたき上げ社長、芸能人、人気スポーツ選手など、最近は女性社長や大女優や人気作家が愛を知るケースもある。
10. 真実の愛を知らないヒーロー
何かにつけ金に物を言わせる親の背中を見て心に孤独を抱えていたり、天涯孤独で誰にも誕生日を祝ってもらったことがないなど、温かい日々を知らずに育ってきた男性主人公がよく登場する。だからって、恋愛対象に依存しすぎてはいけないのだけれど。
11. そして、相手に尽くす喜びを知る
恋をして、砂漠のような乾いた心が「与える喜び」に埋め尽くされていく主人公。相手が笑うと自分もうれしい。心に吹く爽やかなそよ風よ。
12. それってストーカーじゃ…
ところが、ヒーローがヒロインを意識するようになると、そのヒロインが誰かと仲良くしているのを許せない! 独占欲が生まれ始める。だから、何時間でも待ち伏せするし、SNSでつぶさに相手の動向をチェックする。プレゼントしたアクセサリーにGPSしのばせる男性主人公もいたな。それは愛という名の支配だろ。
13. おそろしい「トンデモ設定」も
犯罪まがいのトンデモ設定もある。特にビックリしたのは華流ドラマで、女主人公に近づきたい男主人公が、病院にニセの診断書を作らせて主人公に白血病と告知させ、自分がドナーだと名乗って近づくという設定。身の毛もよだつ話だが、男の主人公が見目麗しいので、最後まで視聴してしまった。
14. 中盤で両想い、終盤で別れ、最終話でハッピーエンド
さて、だんだんと惹かれ合う2人は中盤で一度愛を確かめ合ってキスをする。ハプニングではなく、ガチなキスだ。だが、幸せな日々は続かず、一波乱起きる。でもご安心を。全16話なら、だいたい14話と15話はトラブルが延々と続き、16話では丸く収まる。このあたりは2倍速で見ても差し支えない。
15. いつの間にかわき役も恋を温めてカップルに
女主人公の友達と、男主人公の友達はかなりの割合でカップルになる。わき役カップルのほうが恋の展開が早かったりする。
16. 「恋のライバル」のほうが主人公より魅力的な展開も…
ラブコメディに三角関係・四角関係はつきもの。主人公がわき役からも求愛されるのはセオリーだ。ところが、時々わき役のほうがずっと魅力的なパターンがある。これを英語で「second lead syndrome」(2番手症候群)というのだと英語圏のクチコミを読んでいて知った。
17. 増加するキテレツ設定
韓国・中国・台湾のドラマはSF設定が増えてきた。魔法使い、ロボット、宇宙人、人間アレルギー、人口心臓、人魚、タイムスリップしてきた過去の人、パラレルワールドの住人……。もうヒトとヒトの恋愛では刺激不足なのかもしれない。
18. 見逃しがちなエンディングの後の「おまけシーン」
最近のドラマでは、1話が完結したからすぐに次の話を再生してはいけない。エンディングテーマの途中に、劇中の作品の補足的な場面が挿入されていることがある。胸キュン狙いの映像だ。
19. ハッピーエンド
終わり方はいつもワンパターンだ。抱擁、手繋ぎ、キス、ウェディング、受胎告知……など。ドラマはどこかで終わらせなければいけないから仕方ない。しかも、バッドエンドだと、大陸の口コミサイトは荒れる。そりゃワンパターンにもなるだろう。でも、幸せってもっと多様だよ。
20.最後まで見て、オープニングでネタバレしていたことに気づく
華流ドラマに限った話だが、ひどくカルチャーショックを受けたことがある。オープニングテーマ・エンディングテーマ、weiboの公式アカウントで早い段階で結末を意図的にネタバレしていることがよくあるからだ。
ドラマの最終回で「エンディングテーマの映像やん!」と何度驚いたか知れない。が、そのような経験を繰り返して気づいた。「このドラマはハッピーエンドだから安心してくださいね」「これは悲恋ですよ」のサインであり、「だから文句言うな!」の意味ではないかと。
今晩も悲しいニュースを見てざわめく心の安定のために、何も考えずにラブコメを見る。ちなみに、エンディングテーマでまだ見ぬ主人公のウェディングドレスのシーンが流れているので、きっとハッピーエンドなのだろう。