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オフトンとオコメ

 かわいくてちょっとマヌケなオス猫「オフトン」に引き続き、やっぱりメス猫が愛しくて、オフトンの従姉妹がうちに来ることになった。念願のメス猫。「オフトン」は芳介が命名したが、今度の猫はハチワレ猫で、私の大好きな白黒柄で、もう、これはピアノだよなあって、私が名前つける番だろって思った。大好きな白黒といえばパンダ、シマウマ、ペンギン、そしてそう、愛しきピアノだ。ピアノの88鍵盤の88を取って、「パッパ」にすることにした。オフトンを引き取ってから、やっぱりヨチヨチの子猫を置いて留守にすることができず、あんまり親猫たちのいる場所に行けなかったので、友人が送ってくれる写真や動画を見ながら「パッパー」とか言ってパッパが来るのを心待ちにしていた。オフトンは大勢の猫や人のいる中で生まれたので、うちではちょっと寂しそうにそして不安そうに見えた。パッパがきたらきっと安心するだろう。そろそろ来週にでも引き取れるかなって頃にいよいよ実際にパッパに会ってみると、ずいぶん目のくりくりした独特な感じの子で、なんだかこの子をパッパって呼んだら、いよいよパッパラパーみたいだなって思ってしまった。名前、違うなって思った。

それで旦那さんに88に因んだ名前にしたいんだがいい名前ないかなって、相談してみた。早速いろいろ調べてくれて、「ヤソハチ」と提案された。。絶対やだ。女の子なのに。おばあちゃんになったらヤソハッツァンとか呼ばれてしまうんだろ。やだやだ言っていたら「やそじあまりやつ」と言われた。呼べるかっ。通称ヤソジーだろ。あんまりからかうのでぎゃあぎゃあ言っていたら「あとは米かなあ」といわれ、フワッと、いやドスンとか、「オコメ」の名前が降りてきた。

オコメちゃん、かわいい顔してるけど重心が低くて手足がガッチリしている印象。まさにオコメだ!

オフトンのお母さんカナちゃんと、オコメのお母さんミナちゃんは姉妹で、なんと去年の9月に誕生して、今年5月に出産したというヤンママ姉妹である。ミナちゃんは「モデル」、カナちゃんは「女優」と呼ばれていた。確かにたたずまいの美しい猫たちで、ミナちゃんは歩くとすらっとしていて、見惚れてしまう。オフトンのお母さんのカナちゃんもやっぱり美しく、そして女優らしく気まぐれだった。子猫たちを可愛がってたと思いきや、「もういいや、お姉ちゃんあとはよろしく」ってなる。私たちがオコメをやいやいかわいいなといじくってたら、カナちゃんは触るなと言わんばかりに、オコメの首元をくわえて違う場所に運ぼうと突然奪い去った。でも、運んでいる途中で嫌になって、晴れた空の下、隠れる場所もない土の上にオコメを置き去りにした。ミィミィ鳴くオコメは無防備で、太陽は照りつけるし、このままだと脱水するかカラスに狙われるだろう。それを見つけたミナちゃんが慌ててオコメをくわえて、物凄いスピードでもと居た小屋に連れ戻した。カナちゃんはまだ身体が小さかったから、子育てするにはちょっと無理があったのかもしれない。最終的には姉のミナちゃんが子猫全員のおっぱいをあげていた。

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この写真はオフトンを引き取りに行ったとき、最後のおっぱい飲んでいるところ。おっぱいをあげてるのは母ではなく叔母のミナちゃん。オフトンはこちらから3番目。ミナちゃんの向こう側にいる黒い毛玉がおそらくオコメ。オコメの顔はミナちゃんそっくりである。

 20日ほど早く生まれたオフトンは身体もちょっと大きくて、オコメがまだできないことを一歩先にできるようになる。オコメはいつもオフトンのことを目で追って、オフトンの後をついて回った。お兄ちゃんの真似をいつでもしたい。でもうまくできなくて、いつでも必死でテンションMAXすぎてチちょっと心配になる程。オフトンは、というと基本のんびりなので、オコメがオフトンの気づかない場所に果敢に飛び込んでいくのを見て、「そんな場所に入れるの?」と刺激を受けて冒険するようになった。そして、さすが「モデル猫ミナちゃん」の娘だけあって、オコメは美人猫で、オフトンはそんなオコメにメロメロに見えた。いつも一緒にいて、毛繕いを手伝い、そのまま一緒に眠った。得意の猫相撲が始まるとどうしてもオフトンがオコメを押さえにかかる。オフトンの力が強すぎて、オコメは無理〜〜と鳴く。それがなんとも色っぽくて、見てはいけないものを見ているような気持ちによくなった。嫌がってるからやめなよと引き剥がすことも何度もあった。こらこらオフトン と思っていたが、よくよく観察してみると、しつこいのはオコメだった。あんまりしつこいのでオフトンが抑え込みに入るという図式だった。どこかから飛び降りると、オフトンは大抵ズテッとズッコケをかますのだが、オコメはしっかり着地する。運動能力は圧倒的にオコメの方が上だ。成猫になったらオフトンはオコメにやられるかもなあ。ひょっとするとオコメはかなり強烈な女子かもしれない。

オフトンが気になって気になって、オコメはなかなかトイレでおしっこをしなかった。オフトンを追っかけているうちに気づくともう漏れる寸前で、ニャーニャー大騒ぎをし、なんだかキチガイみたいになって、一応どこかの隅っこまで行っておしっこをする。ニャーニャー大騒ぎをするのですぐわかるから、慌ててトイレに連れて行くのだが、運ぶ途中でおしっこ撒き散らすことも何度もあった。とにかくオコメは騒がしい。うんちをするときはトイレへ行けるのだが、「出るー出るー!」と大騒ぎする。ご飯の用意していると「くれー、ご飯くれ〜、早くよこせ〜〜、腹減った〜〜」とずっと大声で鳴きわめく。「ご飯欲しい人ー?」と聞くと、オコメは「さっきから欲しいって言ってんだろー」とツッコミ気味に、ニャーといい、オフトンは「にゃ〜」と一応小さな声で鳴く。返事したけど君たちは人、ではなく猫だけどな。

眠くなるとオコメは「眠い!眠い!」と騒いで、膝に乗ってくる。ズーピーゴロゴロと喉を鳴らして、「撫でろ撫でろ」最後まで大騒ぎして寝る。オフトンは若干ドン引きしているのか、我関せずなのか、オコメが騒いでいてものんびりと横を通り過ぎて、じっと見ている。トイレも粗相はしないし、うんちも見えなくなるまで綺麗に隠す。たまに私の膝が空いているとすっと乗ってきて、微かにゴロゴロと言って丸くなって静かに眠る。その感触が柔らかくってとっても気持ちい。かわいいな。まあ、どっちもかわいいんだけどな。

ようやく、オコメがほぼ自力でトイレに行くようになった頃、動物病院に猫ワクチンを打ちに行った。ワクチンの前に虫下の薬をもらいに何度か動物病院に行って、獣医の先生とお会いしていたので、オフトンとオコメのこともいろいろ話すことができた。この先生は話していてとっても安心する人だ。その上動物に対する愛情が溢れていて、猫たちをお任せしようという気持ちになれる。やっと猫たちと先生とご対面の日がきた。息子と一緒に2匹を連れて行った。オコメもオフトンも安心したのかとっても静かで、先生はあっという間に検温と体重測定を終え、2匹にワクチンを打った。

「2匹は兄弟じゃなくって、従兄弟なんだね、勘違いしてたよ」

とカルテを直す先生。オフトンは令和2年5月1日生まれ、オコメは令和2年5月23日生まれだ。

「それと、オフトンはオス猫で、オコメちゃんはメス猫って聞いてましたが、」

??

「どちらもオス猫ですね。」

ええええ!!???

「オコメちゃん、名前変えますか?」

衝撃の事実だった。そういえばオコメのお尻にほんわりと真っ黒い毛に覆われた玉スペースがあるような気がしたりしたこともあったが、そんなはずはないと揉み消している自分がいたのを思い出す。そうやって考えると、女子にしては大騒ぎで甘えん坊だなと思っていたが、バカが着くくらい奔放な弟分にドン引きする兄貴と思うと合点がいく。だけどずっと美人猫だと思ってきたから、そのイメージが拭えず、憧れのスーパーモデルからどんなに頑張ってイメージを転換しても、美輪明宏かピーターを思い浮かべるしかできなかった。だいいち、私は美人は好きだがイケメンは苦手だ。ちょっとマヌケ面がかっこいいことしてくれるとドキドキできるが、イケメンがかっこいいのはなぜだか気恥ずかしい。さらに、ズルって足を滑らしたりしたら、恥ずかしさが笑えない感じで、こちらがいたたまれくなってしまう。イケメンは大きな負荷であるとさえ思ってしまう。とてもイケメン猫なんて呼べない。

「お前の父は私だ!」

「嘘だあああああああああああ」

くらいのショックはあったが、3週間経って、だいぶオコメはオスだなと納得できるようになってきた。ずっとメス猫ばかり飼ってきたから、あんまりオス猫との暮らしを想像できなくはあるが、やっぱり何にしても猫だからOKである。結局うちはまた男子だけかあ。見渡すとソファーとハンモックに、旦那さんと息子とオス猫2匹がゴロゴロしている。広い家の端っこ一箇所でダラダラと。まあ、なんとも平和ないい光景ではある。しかし、今日は女子とお茶でもしに行こうかな。そしていつかやっぱりメス猫を飼っちゃうかもな。

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