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【映画に出てきたモンを食う】第48回「パプリカ・チキン」(『リンダはチキンがたべたい!』より)

 その週に見た映画。そこに出てきたメニューを食べる。
 そういう趣味の報告。
 今週は『リンダはチキンがたべたい!』より、「パプリカ・チキン」でした。

 いやね、この『リンダはチキンがたべたい!』の入場者特典で名刺大のカードがもらえるんですけど

 裏側に「パプリカ・チキン」のレシピが載ってるんです。それは本当に素晴らしい、素晴らしいとおもうんです……が!!!

 多少なりとも料理をやってる人なら「このレシピはヤバい」ことに気がつくと思うんです。
別にこれといって難しいことをやってるレシピじゃない。何がヤバいかって、たぶんこの通りに作ったら「なんかぼんやりした味の、微妙な料理ができあがる」ってことなんです。
だって鶏肉を煮るのが「白ワインとトマト」だけなんですよ! あのですね鶏肉というのはちょっと強めに塩を効かせた方が旨味が出るわけですよ、なのに下味ゼロで煮込むだけだし。
煮込み料理なんだから食材から出た出汁、ここでは鶏肉出汁を野菜に吸わせるもんだと思うんだけど、なんか仕上げに混ぜるだけだし、塩コショウするのがこの段階だけでハーブとかコンソメとか(いや、いきなり「ブイヨンを少し加えて」って言うぐらいなら煮込み始めからコンソメ入れろし)全然無いってどういうことよ!?

 料理がそれなりに好きな人がほぼ無意識にやってるコツとして、「複数のレシピ(最低でも2~3種)を比較する」ってのがあると思うんです。
先に書いたように、このレシピは「ヤバい」のって「料理できる人なら経験と勘で埋めれる調理の行間が省かれてる」ところで、まぁ名刺大のカードに収めるって条件があるから仕方ないんだけどね……。
 そこで同じ料理でも複数のレシピを比較する意味がでてくる。「基本的な工程」がどの程度に省略されてるか? 「共通してる調理」はどこか? 「そのレシピ独特の部分」はどれか? っていうのを確認することで「自分の技術で可能か」「絶対にやらなければならないことは何か」「目指す完成形を思い描けているか」というのが見えてくるわけですよね。
たとえば餃子を作ろうとしたとき、あなたがイメージしている餃子は「野菜たっぷりのサッパリとしたもの(ショウガ風味)」か「肉肉しいパワフルなタイプ(ニンニクがしっかり効いている)」か「食材の歯触りが残っていっるやつ(粗びき肉と白菜)」か「肉と野菜が渾然となった一体感が欲しい(ひき肉、みじん切りネギ、ニラ、キャベツをしっかりこねたもの)」かで、材料も作業内容も焼き方もタレの味付けも変わってくる。
最初から「こういう餃子だ!」っていうのがあればいいけど、複数のレシピを比較検討することで「何を作るか?」が初めて具体的になることがほとんどだと私は思ってます。

 ということで、ここからは『リンダはチキンがたべたい!』入場者特典レシピをベースとしながら、他のレシピも参照しつつ、私の勘が大量に含まれた調理をしていきます。
上画像のレシピと異なる部分を太字にしております。

①鶏むね肉を何か所かフォークで刺し、塩コショウ酒パプリカパウダーでマリネし少し寝かせる。いまはダイエット期間中なので鶏もも肉じゃなくて鶏むね肉を採用。

②玉ねぎ、トマトは粗いみじん切り(どうせ煮るから適当でOK)。パプリカは「パプリカ・チキン」って言うぐらいだから主役の素材としてやや大ぶりに切る。

③マリネした鶏肉を強めの中火で、表明に少し焼き色が付くぐらいに。フライパンから取り出す。どうせ後から煮るんだし、ここはサッと表面に香ばしさをつけるだけで十分。

同じフライパンにオリーブオイルを敷き、玉ねぎを炒める。半透明になったらトマトとパプリカを追加し、軽く塩をして(水分の抜けが良くなるように)しんなりするまで焼く。

フライパンに隙間を作り、鶏肉を戻す。取り出していたお肉が温まったぐらいで、白ワイン・塩・コショウ・砂糖・味の素・ニンニク・適当なハーブ類(トマトベースだからバジルと、鶏肉だからタイムとローズマリーあたり。まぁ家にあるものを雑に入れるぐらいでたぶん問題無し)・明らかにトマトのパワーが足りてないのでトマトペーストとトマトケチャップ・顆粒コンソメ・パプリカパウダー・隠し味にウスターソースをフライパン一周分たらす

⑥レシピ通り90分煮る。トマトとワインの酸味が気になるので、最初20分ぐらいは蓋をせずに。60分ぐらいで唐辛子を4~5本(ちょっと辛め仕様)加える。水が足りないようなら適宜足す。仕上げにバターを一欠け
煮たものがこちら。

⑦家庭料理なんだからラフに盛り付け。煮込むのに使ったのと同じワインを合わせていただくとなお良い。

⑧旨い! 私はあんまりパプリカを煮込み料理に使ったこと無かったんだけど、厚みを残したままクタクタになってて、それが旨味をたっぷり吸って……しっかり煮込んだ白菜に近い感じがあったけど、それよりはちょっと原型が残っている。これはおいしいわ、パプリカの可能性を感じた。

 以上、大変おいしゅうございました。ごちそうさまです。
残ったスープを使って、今夜はリゾットを作ります。絶対おいしい。

 映画評はこちら。
映画評の最後にちょっと触れてるけど、このレシピが「そのままでは絶対にイマイチ」なのが良くてですね。
リンダのお母さんは料理が苦手だから、きっとこのレシピのまま作ってしまう。それだと過去の「お父さんの幻想」から抜け出せないわけですよ。
だけど他の人の力を借りることで、おいしい「パプリカ・チキン」が出来あるがる。
 父親の思い出を大切にしたまま、だけどそれだけじゃない、その先を思わせる。これから自分たちがどうなっていくかが「初めて具体的になる」ための契機として、やっぱこの映画の特典としてこの(不完全な)レシピが正解だと思いました。


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