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ナレッジマネジメント

 ナレッジマネジメントとは、もともと「ファイヤー、フォゲット」と言われるように、社員が退職すると、それに伴いその社員が持っていたノウハウや無形の価値あるものが失われることのないように、組織の資産として把握し活用しようとしたものでした。

 狭義のナレッジマネジメントとは、ベストプラクティス(社内外の先進事例や成功モデルのこと)の共有に主眼をおくもので、IT利用の域を出ないものも多いと言われています。

 広義のナレッジマネジメントとは、「知識経営」とほぼ同義で、形式知だけでなく暗黙知も重視し、暗黙知と形式知の相互作用による知識創造を重視するゆるやかな概念です。

 こうした定義のなかで最も重要なポイントは「知識から価値が生み出される」ということで、ITは、主要な目的である価値創出のための資産、あるいは環境の一部にすぎないという点です。

 現在では、ナレッジマネジメントとは、知識の創造や共有・移転、活用のプロセスを通じて最大限の価値を引き出すための、プロセスデザイン、資産や環境の整備、ビジョン、リーダーシップを指すとされています。

 その一方で、ナレッジマネジメントへの期待効果としては「組織の基礎体力づくりへの取り組みである」という意見もありますが、中小企業の場合、こんなのんきな話ではなく、安価でしかも実効性のある取り組みが求められます。

 ナレッジマネジメントのポイントは、ナレッジのシェアリングをいかに効率よく行うかということであり、その前にすべきは、ナレッジを誰でも利用できる形に整えることです。

 こうした共有のナレッジを通じて新しいナレッジの創造へと連鎖反応させることが重要で、刺激が次の創造を生み、その創造がまた次の創造を生み出すという善循環が始まれば理想的です。

 多くの場合、ナレッジの多くは個人に帰属し組織で共有されないという個人の意識や企業文化が壁となり、ナレッジマネジメント実践を阻害します、そこで前にも述べたように、有益な知的資産を、利用されやすい形で提供した社員に対する報酬制度を考案するなどの仕組みづくりが必要になるでしょう。

 サッカーでは、ゴールを上げた(得点を上げた)選手だけでなく、その選手に有効なパスを出した選手も、アシスト数としてカウントされます。こうした、知的資産(ナレッジ)のアシストとして評価する仕組みが個人意識の変革を促すためにも有益だと考えます。

 ナレッジマネジメントシステムを本格的に導入した場合、その機能を利用して、アクセス回数(閲覧回数)の統計値は、そのナレッジごとでも、従業員ごとでも集計することができます。

 ナレッジごとのデータを見れば、各ナレッジの必要性が明らかになり、また、個人ごとのデータからは、従業員一人ひとりのナレッジマネジメント実践に対する積極性として置き換えることも可能となります。

  
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この記事は、「知的資産経営の実践」大学教育出版 2014年初版から抜粋・追記して記載しています。データ等は当時のものです。
 

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