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アライアンス戦略

 企業の活動を中核的な強みに集中する一つの方法は、目標とする成果を達成できそうもない事業部門や、異なった経営スタイルが必要な事業部門を売却し、身軽になることだと言われています。

しかし、この自社だけではメリットが見込めない事業部門を利用して他社とアライアンス(複数の企業とのさまざまな形の連携、共同行動関係)を構築すると、この経営資源を今後も利用し、またこれが成長するとその利益を手にすることができる可能性が生まれ、同時に、この事業部門が抱えている問題も軽減できます。

 また、アライアンスを活用すれば、全面的な投資や経営の手間がなくても収入を生むことができると言われ、

さらに「協調によってこそ、一社では対応できないほどの多様性を求める消費者のあくなき欲求を満足させることができる」(フォード社自動車グループ社長)

の言葉にあるように、アライアンスは自社の可能性を広げてくれるものだと言えます。このアライアンスを考えることが「補完資産の利用」という知的資産経営の取り組みでもあります。

戦略的なアライアンスのおかげで、パートナー企業双方は、

 ①新製品を開発する能力、
 ②原価を削減する能力、
 ③新技術を取り込む能力、
 ④他の市場に参入する能力、
 ⑤競争企業より一歩先を行く能力、
 ⑥世界市場で生き残るために必要な経営規模に到達する能力、
 ⑦自社の中核的な技能に投資するもっと多額の現金を創出する能力、
この7つの能力を大幅に拡大することがその目的となります。
『アライアンス戦略』ジョルダン・D・ルイス著より引用

 買収の場合には、経営にとって重要な要素が壊れることが非常に多いと言われていますが、それを維持しながら目的を果たせることが、アライアンスが検討される理由です。

この3つとは、
 ①強力なマネージャー・グループがとどまる。
 ②経営の独自性が確保できるので、活力が保持される。
 ③経営の推進力が維持される。

次に実際にアライアンスを検討する上では、まず次のことを考えてみる必要があります。
 ・企業双方の目的は何か。
 ・協定書に盛り込むべきいろいろな事項は何か。
 ・各テーマに関する経営者の当初の懸念は何か。

仮に、合弁企業を立ち上げた場合、合弁会社は独立した組織体ですが、複数の親会社が所有しており、親会社の立場から見ると、合弁会社は他のどんな種類のアライアンスの場合よりも共同で管理できる対象となり、その分軋轢も起きやすいものになります。

 他方、小さな企業(事業者)でも、すぐにでもできそうな小さな事例としては、アライアンスにより、特定の地域ごとに共同で雑誌広告等を掲載することにより、相互に費用を抑えて、広い範囲の読者層にメッセージを届けるという方法があります。

また、商店街の複数の商店で、共通クーポンの付いたチラシを共同で限定数量発行し、お客さまの来店により回収されたクーポンの数によってチラシの印刷会社から一定の金額が還元されるという、ゲーム的要素を加えた取り組みなどもあります。

 こうしたアライアンスを合弁事業や共同出資の形で実施する場合には、適切な契約の前に、どのような組織と立場で加わるのかという、次の事業ストラクチャーの検討が必要になります。

  
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この記事は、「知的資産経営の実践」大学教育出版 2014年初版から抜粋・追記して記載しています。データ等は当時のものです。
 

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