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「自分にとっての最適な学び」を見つける「かまくらULTLAプログラム」から、学校に生かせること

鎌倉市の不登校生徒にも届くプログラム

全国の不登校者数は、全国で19万人と増加傾向です。
神奈川県鎌倉市でも不登校傾向にある児童生徒が4.6%にのぼります。子どもたちが生き生きと学べる場所として地域の中に新たな学習環境を提供できないかと、鎌倉市教育委員会と一緒に、今までにないような探究プログラムを開発しています。

その中で生まれたのが、昨年から始まり、今年も開催されるかまくらULTLAプログラムです。ULTLAは「Uniqueness Liberation Through Learning optimization and Assessment」の略で、「学びの最適化とアセスメントを通じた個性の解放」という想いを込めています。

学校に馴染めなくても、場所や学び方を変えれば学びを諦めなくていいと、SPACEは考えています。それぞれの子どもに合った学び方があるはずだと。
読み書きを中心とする今の学校の学習環境にたまたま合わなかった子たちにこそ、「自分にとって最適な学び方」とは何かを、試して、探して、日常に持ち帰ることが必要だと考えます。

学校や家庭にも、「かまくらULTLA」で得た知見や体感したことを共有し、本人の特性を生かし、ポジティブに捉えられる環境づくりのヒントにしていただくことを目指してプログラムを作りました。

観音崎博物館より提供された標本

今回のnoteでは、「かまくらULTLA」でSPACEが作り上げた学びの場をざっくりとご紹介します。
先生方や、学びに関わる全ての皆様に、ご参考になればありがたいです。

・普段の授業や探究学習として、取り入れられる部分があるかも?
・学校の学習環境にも、改善余地があるかも?
・地域や住民に加わってもらうことで、より魅力的な学びが作れるかも?

というような目線から、読んでいただけたらと思います。

「かまくらULTLA」を実現したチーム

昨年は鎌倉の魅力を存分に詰め込んだ、海のプログラム・森のプログラムという2つのプログラムを実施しました。
どちらも3日間、不登校傾向にある15名程度の、小学4年生~中学生の子どもたちが参加しました。

子どもたちに学びを届ける主役は、専門分野をもつエキスパート「ULTLAナビゲーター」です。学校とは全く関係のない、社会で活躍する大人たちが、子どもたちを新たな世界へ案内します。
異世界に放り込まれ、ワクワクしたり、びっくりする子どもたちに、通訳者としてサポートする「ファシリテーター」が伴走します。
また心理的な安全性を担保するために、少人数ごとに一人一人の子どもたちをケアする「コミュニケーター」も配置しています。

SPACEのスタッフだけでなく、大学生や、教育委員会の方々にも加わっていただき、不登校傾向にある子どもたちに手厚い支援を行いました。

チーム全体の関わり方として大事にしていたのは、それぞれの発想を受け入れ、子どもたちが安心して試していける場所を作ること。そしてその中で自己肯定感を育むことです。子どもたちが自分の可能性に気づく機会の提供を徹底してきました。

ULTLAの学び場の一つである浄智寺

学ぶ場所も、森、海、寺、テック企業など、学校とは全く違う様々な場所を学び場へと変身させました。
学校に馴染めない子たちが伸び伸びできるように、物理的な刺激の入り方、建築物の構造やマテリアルなど、その場所だからこその学びが得られるように、場の設計に様々な工夫を凝らしました。

鎌倉を味わい尽くすプログラム

学ぶ内容には、正解もなければ、成績もありません。子どもたちは提示されたテーマから、自由に考え創り、自らの世界を広げていきます。

いずれのプログラムでも根底にあるのは「自分学」という自分を見つめる視点を持つ時間です。一人一人、どんな学びのクセがあるのか、それを見つけやすくするフレームとしてアセスメントを行います。あくまで診断ではなく、自分自身を見つめるときのクセを発見できるようにするための視点を与えてくれるもので、そのフレームを持って様々なプログラムを受けることで、自分がどんな分野に興味を持っているのか、どんな特性を持っているのかを自分自身で発見していきやすくなるための道具として活用しています。ULTLAプログラムの醍醐味は様々に変化する自分自身を捉えるための試行錯誤の場の提供、といえるでしょう。

SPACEが開発するアセスメント

それでは、「海のプログラム」の内容を少しご紹介します。
全体の副題を「カタチのチカラ」と題し、海の生きものの生態や生存戦略という切り口で生命の多様性と環境についての興味を誘ったり、生きものである魚が食料になるプロセスを通して命が循環する仕組みや意味を問いかけました。

まずはダイジェスト動画を見て、プログラムの雰囲気を感じてみて下さい。


「究極の海藻サラダをつくれ!」
では、海藻の陸上養殖を行なっているSea Vegetagleの皆さんから海藻の生態を学び、実際に海藻を試食して分析した上で、オリジナルの海藻サラダを作ります。
さらに、海藻の陸上養殖に取り組んでいる方から、海水温度上昇により海の生態系に危機が起こっていることについても学びました。

自分で選んだ材料で作った海藻サラダ


「魚と人間の力比べをしよう!」では、地元の漁師の方から昔の知恵を教わりながら地引網で魚をとり、さばき、いただきました。魚も人間も生きるために必死であることを体感しました。

地引網で魚と力比べ


「魚をまつるシャリ型をつくろう!」では、お寿司の成り立ちの歴史や未来のお寿司の話を聞いて構想を膨らませながら、3Dプリンタでシャリ型を作り、新しい寿司を生み出しました。未来の食の可能性に思いを馳せ、家族を招いて振る舞ったりもしました。

命をまつる寿司型を3Dでモデリング中

どのテーマもそれぞれ、様々な切り口の興味のタネをたくさん散りばめ、子どもたちの自然な学習意欲を掻き立てて、体験から学ぶ知識活用型の学びを目指しました。
3Dプリンタでのシャリ型作りに夢中になって、プログラム終了後も型作りを継続した子どももいました。

教科学習の枠には収まらないものの、そこで個々が得た好奇心が、教科の学びにも循環してくると考えているのです。

学校でも活かせる、科目に捉われない体験

「学校外じゃなきゃ、あり得ない」と感じられたかもしれません。
学校では様々な制約がありますが、一方で探究学習の導入など、学校がこれまでにない新たな役割を求められていることも事実です。
決まった内容を教え込むのは、塾やアプリなど、様々なコンテンツが補助してくれるようになりました。

学校に集まるからこそできることを、学校が変わることで実現できるかもしれません。
そのヒントとしてSPACEが実施しているのは、科目に捉われない体験です。
例えば「魚と人間の力比べをしよう!」というプログラムでは、地元の漁師さんに教えてもらいながら地引き網の体験をしました。その体験は様々な目線で深堀することができます。魚の生態は生物の分野に、漁業が産業としてどう成り立っているかを考えれば政治経済に、魚食文化を考えれば歴史や古典にも通ずるものがあります。

漁師さんたちが獲れたての魚の捌きを実演

教科を越えるような体験を提供すれば、興味を持ちうるポイントが無数にあり、それらを深めるときに科目の学びと繋がっていきます。
先生の役割を科目ごとに縦割りにしすぎず、それぞれの先生が得意分野に応じてパスし合いながら、子どもたちの学びを邪魔せずに伸ばすことができたら、探究学習のひとつの理想形が実現しうるのではないでしょうか。

学校こそ、学びのホームになれる

SPACEの手法から学校に活かせるもうひとつの点は、学外との連携です。

例えば先生が、元々の経験もない中で、地引網体験をゼロから自分で企画するのは難しいでしょう。しかし、地域の核である学校の先生がお願いして、その分野のプロが協力・参画してくれる可能性は十分にあります。
未来の人材であり、消費者でもある子どもたちと、繋がりたいと思っている地域企業は多いはずです。全ての子どもたちにとって、学校は開かれています。その学校が学びのホームとして、学校外との連携を深めれば、子どもたちは学校内外で学びを広げ、深めていくことができるようになるでしょう。

由比ヶ浜をフィールドに学ぶULTLAキッズたち



「かまくらULTLA」の中で、特に探究学習においては、子どもたちを先生の専門性の中で制限せずに、外部のより広い学びに接続することが、重要になると感じています。

先生が教える人(ティーチャー)から、教えてくれる人を連れてくる人(ファシリテーター)になることで、子どもたちに提供できる学びの広さや深さは大きく変わってくるのではないでしょうか。


かまくらULTLAプログラムHP: https://kamakura-ultla.com
今年のプログラムはこちら: https://kamakura-ultla.com/programs
2021年のプログラムの様子はこちら: https://kamakura-ultla.com/archives


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