short story series『知らない』  person 08

作・木庭美生

午後7時40分ごろ。女。31歳。

最悪。やっぱり目立つな。

鏡を見てため息。潰してしまおうか、跡になるかな。

額で存在を主張してくるヤツ。ニキビに悩まされている。

仕事終わりに某ハンバーガーショップ。もう一度ため息、いや、ゆっくり息を吐き座り直す。左手でコーヒーを持って右手には揚げられたポテト。

やっぱダメね。高い化粧水使っても、いい洗顔料で洗顔しても、できるときはできるわ。

コーヒーをトレーに置くと思ったより力が強かったらしく想像していない大きな音が立つ。

おいてあったスマホの画面が光る。あ、メール。彼から。そんな気分になれなくてスマホをカバンにしまう。私のニキビを見て指差して笑ってくる同僚もいれば、気にしないと言ってくれる彼もいる。でもそのどちらの方がいいとかはなくて。私にはこの額にこれでもかと言わんばかりに主張してくる存在が大問題。たとえ彼が気にしなくても私は気にするから。ああ、斜め前の席でキャーキャー騒いで楽しそうにしてるJK集団が羨ましい。私だって昔は、と、どうしようもないことを考え始めてしまう。

まあ、できてしまったものはしょうがない。明日には無くなってるといいなと思いながら今日も好物の揚げられたポテトをかじる。

2018年10月31日

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