short story series『知らない』 person 15
作・堀愛子
土曜日の夕方に電車で見かけた知らない男子高校生のことを話します。
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上原龍平(うえはらりゅうへい)17歳。
ジャージがちょっと暑いけど、電車の中ではもう暖房がついている。部活の重い荷物が肩に食い込んでいてぇ。さっき買って飲んだレモンの炭酸水みたいなのがもう炭酸抜けてるしあとちょっとしかない。この残してる分意味あるのかよくわかんないわ。飲もうかな。でも今飲もうとしたらこぼれるかな。めんど、いいや。
そういえば、今日、まっちーに会った。
中学の時の同級生のまっちーはみんなに好かれててメガネかけたサッカー部の友達だったんだけど、高校で離れて全然会わなくて。
さっき駅前でばったり。会ったの一年半ぶり。
相変わらず友達連れてたし、なによりメガネ外してて最初誰かわからなかった。
たぶんまっちー彼女できた気がする。勘。
俺はちょっとだけまっちーと話す時緊張する。
ちょっとだけ。
ちゃんと話せるし、「えーまじかー」とか「それはあれじゃね?」とか言えるけど。言えるけどでも、なんかまっちーはもっと遠くを見ている。
俺はまっちーと話す時レモンの炭酸水めっちゃ飲んで半分以上無くなったけど。
俺はなんか変だと思う。
まっちー、俺、本読むんだぜ。
絶対知らないと思うけど、俺家で読書するんだぜ、分厚いの。
まっちーと違って俺はツイッターなんてやってないし、彼女なんていない。でもちょっとだけ。
俺、まっちーに怖がられたいわ。
なんか急に寂しくなって最後の一口を飲み干す。めんどいけど、キャップを開けてこぼれないように飲んだ。
まずいなぁ。炭酸抜けすぎだろ。
もうあんまり会いたくないわー。
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ちょっとだけ変なのはみんな一緒だと思うけど、自分はちょっとだけ特別です。
2018年11月12日