クッキー缶、違国日記、男の話は平行線
3月10日
自分の好きなようにすることが、結果まわりもハッピーにする人はすごい。
会社の先輩が世田谷区の焼き菓子屋さん『甘雨』のクッキー缶を会社に持ってきた。月に1回しかオンライン販売を行わない、こだわりのお店だそうだ。
缶にはキラキラかがやく宝石のようなクッキーがぎゅうぎゅうに敷きつめられていて、ふたを開けたときにオフィスメンバーの顔がいっせいにパ〜っとあかるくなったのがわかった。ひとり占めしてもいいくらいなのに。おかげでおいしいクッキーをいただけてしまった。来月自分でも買ってみようと思う。
帰宅して、録画の『光る君へ』を観る。なんでこんなに現代語で話してんじゃい!と心が離れてしまうこともあるが、なんとか遅れずについていっている。道長がまひろに贈った恋文の破壊力に悶える。恋文だったからまだよかったものの、面と向かって伝えていたら心臓がもたなかったかもしれない。
3月12日
編集者の同僚の誕生日。お茶の水駅から徒歩数分の老舗『神田 近江屋洋菓子店』ですてきなショートケーキを買った。やさしいクリームと濃い赤のいちごがおいしい。ショーケースにはモンブランや季節のタルトも並んでいたので、またちょっとしたときに訪れたい。
オフィスに戻る途中に中央大学を見つけた。御茶の水って大学がたくさんある。出版社や小売店も多いし、活発な街だ。
メモ✍️
「落とし穴がおおすぎてまっすぐ歩けない」by 柳下さん
※日本道路交通情報センターの話
3月13日
必要にせまられて「キャッチコピー」を考えた。自分の作業領域から離れた存在だと思っていたが、そうでもなかったみたいだ。いつも側から入るくせがあるため、今回もまずは共同書架から数冊の本を選んで読んでみた。大事らしい言葉をメモにとる。
📍「そりゃそうだ」じゃなくて「そういえばそうだよね」を引き出す
📍ターゲットが潜在的に思っていることを「言ってあげる」ことが大切
ふむふむ、なるほど。提出したコピーは納得できる内容じゃなかったけど、いつもとちがった頭のはたらかせ方が予想のほか楽しかった。コピーの練習もすこしずつしてみよう。
寝る前に『違国日記』を読んでいる。すると、これまでにあまり、感じたことがない気持ちになる。水を打つような、かき混ぜるような、床に横たわるような、つかのまの午睡のような。甘ったるくなく、ほろ苦くて、落ち着く。
強くてやさしい言葉。砂漠の中にポツンといるような、孤独すら寄り添ってくれない、本当のひとりぼっちを感じている少女。孤独に水を与えたら、いつか何かがわかるのだろうかと悩むすがたに心を打たれる。一気に読むのに気が引けちゃって、すこしずつ読んでいる。
3月14日
外打ち合わせの帰りに、チームでランチへ。うちの会社のテンションがあがる瞬間ベスト1位は「おいしいごはんを食べるとき」だと思う。ビルの階段を上がり、欧風カレー『ガヴィアル』へ。私は初心者なのでビーフカレーの甘口を注文。ここはじゃがいもを1個か2個で選べるのだ、太っ腹である。ルーは具だくさんでビーフの旨みが凝縮されていた。すこしずつ白米にかけながら、ものの数分でおたいらげ。うーむ、おいしかった!
ラジオで聴いたフレーズが耳に残る。
早めに帰宅したので『アニー・ホール』を観た。1977年につくられたというが、まったく信じられない。気の利いたセリフにセンスがいいファッションや構成。90分という尺も完璧だ。ハゲは強いが、ロマンスグレーは弱いという主張。私は逆に、薄毛のロマンスグレーに魅力を感じた。リリー・フランキーに我々がなぜか抱く感情と同じだ。
3月15日
オフィスに着いたら、「再配達を待っているが時間がわからない」と言い渡され、皆は取材へ行ってしまった。生活していると、いつ来るかわからない配達員を待つ時間がある。
先輩と映画の話をした。彼女は『DUNE』が大好きで、最新作のPART2は先行上映ですでに2回も鑑賞しているという。DUNEの何がそんなに好きなのかと聞くと、「やろうとしているすべてに意味(意図)がある」からだという。とても大事なポイントだと思う。芸術作品にしろ、映画にしろ、「ブワッとつくるんで、そっちで勝手に理解してくださいね」という態度はあまり好きではない。説明しないのであれば、説明しないなりの構成が必要だ。巨額の予算をかけてまでの感想が「おもしろかった」の一言で終わるようではつまらない。だから、彼女がいうことにはとても賛同できたし、映画の話からどんどん掘り下げていくことができて楽しかった。
PART2を観にいくまえに、地球の歩き方的『デューン 砂の惑星』ガイド 前編・後編を読むべし!
退勤後、神保町の寿司屋『もり一』へ。ビールで乾杯し、今週の頑張りをたたえあった。骨の折れる作業が多かったのだ。おつかれ生、である。
同僚が「聞いてくださいよ!」で話しはじめる。そう言われるとこちらは「なんだなんだ!」となるわけで、その語り口には真似できない"凄み”を感じる。この「聞いてくださいよ!」には、彼女が戦っている“世の中”のどうしようもなさや、ままならなさが詰まっている。ああ、提唱者なんだと、しみじみ思う。
高円寺に移動して、おでん屋に入った。話のテーマは野望にはじまり、夢や寿命にまで転がった。「どれくらい生きると思いますか?」の質問に、ある人は30歳か80歳。ある人は、今日死ぬかも知れないと思って生きている、と答えた。私は長生きがしたい。おじいちゃんを謳歌するんだ。
メモ✍️
男の話は平行線。女はマントルまで掘り進める。
時代は1億総副業時代。副業で稼ごう。