ピッチャーの球は浮き上がるのか(2)

前回の(1)では、どんなに速い球でも、ボールは減速しながら、しかも下に落ちながらキャッチャーに向かうと書きました。
ではその計算を実際にしてみます。
公式を知らない、というかもしれませんが、こういうものなので、なぜそんな公式なのかは後で学ぶことにしましょう。

まず、水平方向で考えてみましょう。
ですが、空気の抵抗はとっても複雑で、考えることが難しいです。
計算をするのは至難の業です。
ということで、現代の科学の力を使ったスピードガンの記録を見てみましょう。
投手のリリース直後を初速、キャッチャーに届く付近を終速とします。

このように、ボールが重力に従って飛んでいく運動を「放物運動」といいます。
もっとかっこよく言えば、
「斜方投射」といいます。
縦方向(鉛直方向)はボールを真上に投げ上げた運動と同じ動きをします。
横方向(水平方向)は同じ速さで進みます。

キャッチャーに向かう方向=横方向(水平方向)は、投手の球速そのものです。
例えば、150キロで投げたとします。ちゃんと単位をつけて言えば、150Km/hです。1時間で150キロメートル進むということです。
これを秒速にします。つまり1秒あたり何メートル進むのかに換算すると、
150Km=150×1000m
1時間=3600秒なので、
150×1000メートルを1時間で進むので、1秒あたり、
150000÷3600=41.666…メートル(四捨五入して41.67メートル)進むことにになります。
ピッチャープレートとホームベースまでの距離は18.44メートルなので、
ピッチャーが投げてからホームベースを通過するまでの時間は、
18.44÷41.67=0.4425…秒となります。
あっ!という間です。

そして、この時間でどれくらい落下するのかを考えます。
重力のはたらくと上下方向、つまり鉛直方向です。
仮に、ピッチャーが真横に投げたとすると、ボールが指から離れた瞬間に、鉛直方向の速さは0になります。
なので、ボールをぽとんと手放して、自然に落下する動きと同じように落下します。これを自由落下といいます。0.4435秒でどれくらい落下するかというと、物理の公式では、
$${x=1/2at^2}$$
となります。xは落下距離で、aとは加速度を入れます。地球上での場合、重力加速度gと言って、
$${g=9.8m/s^2}$$
なので、9.8をあてはめます。
tは時間なので、先程出した、ピッチャーが投げてからホームベースを通過するまでの時間0.4425秒を入れればいいので、
求めたい落下距離xは
$${x=1/2*9.8*0.4425^2}$$
$${x=0.959}$$
となります。つまり、1メートル近く落下していることになるのです。


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