ピッチャーの球は浮き上がるのか(1)

この世界は物理の法則にしたがって動きます。
絶対の絶対です。例外はありません。
では、
「豪速球はボールが浮き上がってくる」
「ノビのある直球」
これはどう言うことなのか、物理の法則に従って考えてみます。

まず、地球上で、ボールのような物体が投げ出されたら、どのような法則で動くのかをまとめてみます。

物体の動き(運動)は、力によって決まります。
力がはたらくと、その方向に加速します。
たまたま反対側から同じ大きさで押し返されれば、その運動を同じ速さのままずーっと続きます。
これが世に言う、慣性の法則です。
机の上に置かれたリンゴが動かないのは、止まっているものは止まり続けるという慣性の法則です。
エアホッケーのパックのように、動いているものは同じ速さで動き続けるという慣性の法則です。

投球の場合は、ピッチャーが振りかぶって腕を振ってボールを押し出します。
この時、ボールを指が押すので、ボールは加速します。
そして、リリースポイントに辿り着き、ボールは指から離れます。
指から離れ、ボールは空中に投げ出されます。
当たり前ですが、空中にあるボールにはもう投手は触れていないので、これ以上押すことができません。
つまり、指から離れた瞬間から、もうボールが速くなる事はないのです。
もう一度ボールに着目してみます。
空中のボールにはたらく力には何があるでしょう。
ご存知、重力です。
重力は真下に向かって(地面に向かって)はたらきます。
と言う事で、重力によってボールは下に向かって加速します。
あとは、ボールがキャッチャーに向かってぐんぐん進むことになるので、空気の抵抗力を受けることになります。
なので、ボールには、後ろ向きに(ピッチャーの向き)に力がはたらいているので、ちょっとずつ後ろ向きに加速します。
後ろ向きに加速?ややこしいです。
加速とは速度が変わる割合ということなので、つまるところ遅くなるということになります。

ということで、ボールの動きをまとめます。
ボールはキャッチャーに向かって、ちょっとずつ遅くなりながら進む。
しかもちょっとずつ落下しながら。

ということになります。
つまり、ボールが加速したり、浮き上がったりしません。
加速するとは、キャッチャーの向きに力が必要になるわけですが、そんな力は無いわけです。
浮き上がるとは、重力よりも大きな上向の力が加わることになるのですが、そんな力も無いのです。

ボールにスピンがかかったら、上向の力も生まれるだろ、と思う人もいるでしょうが、重力に勝る事はありません。

次の投稿では、実際に計算してみようと思います。

ちなみに、重力の向きのような、上下方向を「鉛直(えんちょく)方向」、
それと直角な横の方向を「水平方向」と言います。
縦や横は、見る人によって変わるので、鉛直と水平の方が正確に伝わります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?