非支配株主持分がある場合における親子間適格合併の税務調整
サマリ
非支配株主持分がある場合の親子会社間の合併については、会計上は親会社持分と非支配株主持分に分けて仕訳が検討される
税務上は子会社の利益積立金及び資本金等の額をそのまま引き継ぐこととなるため、税務調整が必要となる
会計処理
親子会社間の合併は共通支配下の取引として整理されるため、子会社の資産・負債は原則として親会社に簿価受入される
親会社は、子会社から受け入れる資産・負債の差額(=簿価純資産)を持分比率により親会社持分相当額と非支配株主持分相当額に区分(按分)し、それぞれ処理する
親会社持分相当額:抱き合わせ株式との差額を特別損益(抱き合わせ株式消滅差損益)に計上する
被支配株主持分相当:合併対価として交付した株式の時価との差額をその他資本剰余金に計上する。ここで、合併により増加する株主資本の内訳は合併契約において定めるものとされている。合併契約書において資本金、資本準備金等を増加させない定めがある場合には、その他資本剰余金で受入を行うこととなる。そのようなケースでは、結局のところ被支配株主持分相当額がその他資本剰余金に振り替わることとなる。
税務処理
子会社の利益積立金及び資本剰余金をそのまま受け入れる。
具体例
<前提>
親会社A社は子会社a社を吸収合併することとした。a社にはA社のほか外部のW社が出資しており、持分はA社が2/3、W社が1/3である。
当該合併は税務上の適格合併に該当する。また、合併対価としてW社にA社株式が交付される。A社の増加株主資本はすべてその他資本剰余金とする。<数値例>
a社の合併直前における諸資産は300M、諸負債は120Mである。いずれも会計・税務での簿価に差はない。
A社のa社株式簿価は会計・税務とも110Mである。
合併対価として交付されるA社株式の時価は55Mである。
a社の合併直前の利益積立金額は15M、資本金等の額165Mである。
<会計処理>
・親会社持分:諸資産200M/諸負債80M+関係会社株式110M+抱き合わせ株式償却益10M
・非支配株主ち分:諸資産100M/諸負債40M+その他資本剰余金60M
<税務処理>
・諸資産300M/諸負債120M+利益積立金額15M+資本金等の額165M
・資本金等の額110M/関係会社株式110M