Beps2.0 Pillar2入門

入門シリーズ第2弾です。

最先端の税務ってなんや?って聞かれたのでお答えします。
最先端の税務といったらもうPillar2一択です。令和6年4月1日施行なので未来の税務です。ちなみに、税務六法の令和5年版にはもうすでに載っているので誰もが条文にアクセス可能です。

本法法令が明らかになる以前はOECDが出しているコメンタリーやモデルルールをベースに議論がされていたので、国内法の定義はまだしっくり来ていない部分もあるのでモデルルールベースで話します。語の定義から書いたらそれだけで日が暮れちゃうので。

Pillar2とはなんぞや?という話ですが、その前に簡単に概要をお話します。
これまで、タックスヘイブンと言われるような軽課税国(代表的なのは法人税率0%のケイマン諸島)を利用した利益移転が租税回避であるとして世界的に問題視されてました(BEPS=base erosion and profit shifting)。
現状、日本においては外国子会社合算税制(CFC)により、一定の要件はあるものの、軽課税国での所得を日本親法人の所得として取り込む形で、軽課税国を利用した租税回避をケアしています。
が、Beps2.0は世界各国が協力して、軽課税国を利用した租税回避を許すな!とのことでグローバル・ミニマム・タックスという世界共通の最低税率を導入し、多国籍企業がどこの国または地域で経済活動行ったとしても最低限の租税負担を負うことになるような制度となってます。

Pillar2の適用対象となる法人はグループでの売り上げが7億5000万ユーロ(約1,100億円)以上の多国籍企業グループとなります。ここでいう多国籍企業グループとは国外にPEが一個でもあれば該当することとなります。なお、お隣の韓国ではPillar2の対象となるような企業が10社も無いとのことですが、日本においては1,000社以上が対象になるそうです。Big4で抱えられるクライアントの数は限られるので、相当数の会社が非Big4税理士法人でのPillar2対応が必要になると考えられます。

Pillar2は、文字通り第2の柱ということで、以下の3つのルールから構成されます。

出典:KPMG税理士法人HP

この中で、特に重要なのがIIRルールとなります。
 IIRルールとは国際的に合意された最低税率と子会社等の居住地国のETRとの差額をトップアップ税としてUPEで課税されるものとなります。
ここで合算される所得のベースは連結財務諸表の当期純利益に一定の調整を加えたものを国毎に合算し、カーブアウトの額を控除した金額となります。
ただし、すべての国でGloBE所得を計算する必要は無く、一定のセーフハーバーの要件を満たした場合には計算不要となっています。セーフハーバーには、導入から3年間経過措置として認められている経過的セーフハーバーと恒久的セーフハーバーがあります。経過的セーフハーバーについてはOnce Out Always Outルールが適用され、一度でもセーフハーバーの要件を満たさない場合にはその後の年度においてもセーフハーバーの適用を受けられないこととされています。
経過的セーフハーバーは①デミニマステスト②通常利益テスト③簡易ETRテストの3つで構成されており、適格CbCRの税前利益及び連結財務諸表の当期税金費用を用いてこれらの判定を行う必要があります。

また、IIRについては基本的にはUPEで課税されることとされていますが、JVやPOPEがある場合にはIPEでIIRが課税されることとなるので注意が必要です。

IIRの適用プロセスは以下の5つのステップに分解されます。
①CE(構成事業体)の特定
国ごとに対象となる事業体を特定します。
一定のパススルー事業体については無税国という括りで②以降の計算を行います。
②Globe所得(分母)の金額の確定
事業体ごとに、連結財務諸表等に一定のGloBE調整を加え所得を計算します。
③調整後対象租税額(分子)の金額の確定
事業体ごとに、実際の税額に一定の調整を加え、税額を計算します。
ここで言う調整後対象租税額は法人税等に加え、繰延税金費用(法人税等調整額)を含んだ金額となります。
④国別のETRとTop up税の確定
国ごとにETRを計算し、国際最低税率とETRの差分よりTop up税を確定させ、構成会社等ごとにGloBE所得に応じて配分を行います。
⑤グローバルミニマムタックスの計算
IIRに基づいて、持分割合等によりUPEに帰属する金額が決定されます。

と、ここまで書いてきましたが、正直誰がこんなんわかるの?とのことで、世界中から複雑すぎてよく分からんとの声が上がっているみたいです。まあ、令和6年4月まで時間ないですからね、ここから大きく変わるとは思わないですが、世界的な税制改革のBig waveに乗り遅れたくなければPillar2に挑戦するのもありなんじゃないですかね。

入門編なのでこの辺で。

ではでは。



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