カレーはフリースタイルへ 〈後編〉
〝エスニックカレーソース〟を自由自在に使いこなす
〝カシミールブラックカレー〟〝バターマサラ〟〝グリーンカレー〟この3つのエスニックカレーソースを使って、いったい幾通りのカレーが考えられるだろう。
文・撮影/長尾謙一
〈スパイス・ハーブが決め手のカレーソース〉
・スパイスが決め手のカシミールブラックカレーソース
・スパイスが決め手のバターマサラソース
・ハーブが決め手のグリーンカレーソース
『クリスチアノ』 カレーはフリースタイルへ②
フリースタイルを探れば探るほど、カレーは楽しくなります。
シェフ 佐藤 幸二 さん
いろいろなカレーが提供されるようになり、業態の垣根がなくなった
このところ外食店でいろいろなカレーが提供されるようになったのは、昔に比べて日本で手に入るスパイスの種類が圧倒的に増えたからでしょう。カレーに対して向上心のある人が知識を吸収して技術を手に入れてどんどんレベルを上げて、今は業態の垣根がもうなくなっていますね。
「カレーって何だろう?」って考えると、日本人が想像するいわゆるカレーは、これを食べるとご飯がすすむかとか、スパイシーさを感じるかとかそういったぼんやりしたもので、味噌汁と豚汁の違いのように料理の境目ってどこにあるのだろうって思います。
スパイス料理を〝カリー〟って言いますから、スパイスを使っていれば何でもカレーなのでしょう。つまりフリースタイルなのですね。
いろいろ考えながらカレーをつくるのは凄く楽しくて昔よりも探求することが多くなったと思います。
それぞれのカレーソースの完成度が高い
今回の3つの〝レトルトカレーソース〟は、まずエスニックカレーのソースとしてそれぞれのソースができすぎといえるほどよくできていて、凄く完成度が高いと思います。これに具材を加えれば本格的なエスニックカレーが簡単に誰でも提供できるのでとても便利です。
また、ソースは1kgのレトルトパウチ入りで1パックあたり約6人前のカレーが提供できますから、3種類のメニューを提供したとしてもロスを最小限に抑えることができます。大型施設のフードコートなどへ行くと、食べられるカレーのバリエーションに限りがあったりしますが、こうした商品を使えば一気に楽しくなるのではないでしょうか。
黒くずっしりと辛みのある「カシミールブラックカレーソース」は、見た目以上にさらっとしていて塩味が控えめでしたので、メニューの自由度が高いと思いました。「バターマサラソース」は味に艶があってソースやタレとして焼き物に相性がいいと思います。「グリーンカレーソース」はマンゴーやリンゴやパイナップルなどの果物にも合うと思います。
フリースタイルでカレーを考えると、それぞれのソースが自由度の高い楽しいカレーをつくってくれるのではないでしょうか。
「カシミールブラックカレーソース」でビリヤニをつくる
●豚と玉ねぎのカシミールカレー(ビリヤニ風)
重厚なスパイス感をパラパラのご飯の中に染み込ませる
「カシミールブラックカレーソース」は、ビリヤニをつくる時に使うグレイビーの代わりとして使ってみました。具材は野菜でも肉でもシーフードでも、何を加えてもいいのでおもしろいカレーができます。
今回は豚バラ肉と玉ねぎを炒めて「カシミールブラックカレーソース」を加えて煮て、そこに適量の白飯を入れて蓋をして加熱しながら蒸らします。
火からおろした後に5分ほど寝かせてから混ぜると、ビリヤニ風に仕上がります。グレイビーをつくる手間も省けますし、ビリヤニでは分かりづらければドライカレーとしていろいろ展開できます。
「カシミールブラックカレーソース」はさらっとしていて塩味が強くないので、応用性がとても広いですね。
タンドリーチキン用のミックススパイスは要らない
●タンドリーバターチキン
スパイシー&クリーミースイートの最強タンドリーチキン
次は「バターマサラソース」で 〝タンドリーバターチキン〟をつくってみました。あら塩でマリネしておいた鶏モモ肉をフライパンで焼き、「バターマサラソース」、ヨーグルト、「セレクトスパイス ガラムマサラ」を加えて煮込みレモンを絞ります。
タンドリーチキンがこんなに簡単につくれるのですね。ミックススパイスも必要ありません。5種類の焙煎スパイスやナツメッグなどのスパイスがつくり出す複雑で深みのある香りがクリーミーでコクのある甘さにしっとりと溶けて、ハイレベルの仕上がりになります。
スパイシーな肉に甘いソースをつけて食べるサテのようなものにアレンジしてもおいしいと思います。
具材で遊んでグリーンカレーに牛肉を使う
●フレッシュバジル入りビーフグリーンカレー
ハーブの香りとココナッツのコクの中に牛肉の旨みをすっきりと楽しめる
「グリーンカレーソース」は具材で遊んでみました。通常グリーンカレーというと鶏肉を使いますが、牛肉を使ってみました。別に決まりがあるわけではなく、おいしくなればいいのです。
「グリーンカレーソース」にほんの少し水を加え、マッシュルームと牛バラ肉を加えて弱火で10分間煮詰めます。ここでポイントなのは、牛バラ肉を茹でこぼして脂を取っておくことです。
こうすることで、ハーブの香りとココナッツミルクのコクを壊すことなく上品な牛肉の風味が加わって、鶏肉では味わえないグリーンカレーを味わうことができます。
好きな肉や魚、旬の野菜など何を入れても相性がよく、とても自由度の高いカレーソースです。
(2021年9月30日発行「素材のちから」第42号掲載記事)