カレーはフリースタイルへ 〈前編〉
文・撮影/長尾謙一
〈スパイス・ハーブが決め手のカレーソース〉
・スパイスが決め手のカシミールブラックカレーソース
・スパイスが決め手のバターマサラソース
・ハーブが決め手のグリーンカレーソース
〝エスニックカレーソース〟を自由自在に使いこなす
〝カシミールブラックカレー〟〝バターマサラ〟〝グリーンカレー〟この3つのエスニックカレーソースを使って、いったい幾通りのカレーが考えられるだろう。
カレーは、すでに「多様化」から「自由化」へ進みはじめている。
本格エスニックカレーのレトルトカレーソースが発売された
今回、本格エスニックカレーを手軽に提供できる3つの〝レトルトカレーソース〟をご紹介したい。エスニックカレーは仕込みに手間がかかりそうだからとメニューに組み込めなかったお店には、喜ばしい知らせではないだろうか。
「スパイスが決め手のカシミールブラックカレーソース」は、甘い香りのスパイスとガーリックの旨みを合わせてスパイスが後を引くような重厚感のある黒いカレーソースに仕上がっている。
また「スパイスが決め手のバターマサラソース」は、バターと生クリームをリッチに使いクリーミーでコク深い味わいの赤いカレーソースに、そして「ハーブが決め手のグリーンカレーソース」は、エキゾチックなハーブの香りとココナッツミルクのコクを持つ緑のカレーソースに仕上がっている。
本格的な味ももちろんだが、レトルトパウチで、1パックが1kgという使いやすい容量にも注目したい。
この〝レトルトカレーソース〟があれば、誰もが簡単に本格エスニックカレーを提供できるのだから素晴らしい。
決め手になっているスパイスやハーブは生き生きと香り立ち、アプローチしてくる。
カレーはフリースタイル
ルウを使うとろみのあるカレーは親しみやすく変わらぬ人気を持ち、さらにエスニック料理の人気から本格的なエスニックカレーを提供する店も増えた。そしてそれに加えて新たにスパイスカレーがブームになりカレーは多様化した。
そもそもカレーには〝これがカレーだ〟という定義はなく、肉、魚、野菜、果物のすべてを素材として、和、洋、中などジャンルの束縛も受けない自由な料理だ。スパイスカレーの登場も自然な流れと言える。
下のカレーは、3つの〝レトルトカレーソース〟でつくったスパイスカレーだ。「カシミールブラックカレーソース」には鶏レバーを、「バターマサラソース」には鮭を、「グリーンカレーソース」には豚ひき肉と枝豆を合わせた。
エスニックカレーを組み合わせてスパイスカレーのスタイルで提供するのもおもしろい。カレーはフリースタイルなのだ。
さて、今回は2人のシェフに〝レトルトカレーソース〟を使ったフリースタイルのメニューをつくっていただいた。どんなスタイルを見せてくれるのだろうか、ご覧いただきたい。
『and CURRY』 カレーはフリースタイルへ①
カレーという食べ物自体、とても懐が広い料理だと思います。
主宰 阿部 由希奈 さん
素材が主役でスパイスは脇役
私がカレーに魅せられたのは 〝ネパリコ〟というネパール料理のお店で〝ダルバート〟というカレー定食を食べたのがきっかけでした。
それまでネパールのカレーは食べたことがなくて、知っていたのは欧風カレーとせいぜいタイカレーだったのです。
スープのような豆のカレーと野菜を炒めたおかずとご飯を組み合わせて食べる国があるのかと、大きな衝撃を受けました。混ぜて食べる習慣もおもしろくてとても新鮮でした。
それを皮切りに、インドには東西南北にいろいろなカレーがあることや、スリランカやタイでも地方によってカレーや料理が分かれていたりすることを知るとどんどん楽しくなって、のめり込みました。
私はあくまでもスパイスは脇役で、主役は野菜や肉、魚などの素材だと考えています。それぞれのおいしさを際立たせるためのスパイス構成を設計できるように心がけています。
まずは素材を見て、「この素材のおいしさが一番伝わるのはどんなカレーだろう?」と考えるスタイルです。
個性あるカレーを創作するための大きな武器になる
カレーという食べ物自体、とても懐が広い料理だと思います。どんな食材でも受け入れてくれますから、アレンジがしやすいという点では個性的なメニューがどんどんできます。
トレンドのスパイスカレーは、カレーをオリジナルにアレンジして、創作料理として仕上げていくスタイルです。今回のような「スパイス・ハーブが決め手のカレーソース」があると、これをベースにして創作をはじめることができるので、メニューのレベルを一気にステップアップさせることができます。
この3つのソースをつくるには相当の手間がかかりますし、たくさんの種類のスパイスを大量に買うと余ってしまって在庫になりがちです。ですから、ここまでの状態に仕上がった商品になっているというのはロスも少ないですし、新たなカレーの創作に取り組むきっかけになるのかなと思います。さらに少量のレトルトというのも使いやすくて助かります。
カレーは他の料理よりもお店の個性を出すことが簡単にできると思います。こうしたカレーソースはとても大きな武器になると思いますね。
「カシミールブラックカレーソース」をフライのソースとして使う
●ナスのカレーフライ
カレーをまとわせてフライにしたナスがジューシー
「カシミールブラックカレーソース」で〝ナスのカレーフライ〟をつくってみました。普通のナスでいいのですが、今回は皮が緑の米ナスを使いました。
米ナスを厚めに切り、横にスリットを2本入れます。そして、それぞれのスリットにカレーソースをたっぷりと塗り込んでカレーの層をつくることで味がしっかり入ります。カレーをまとわせてフライにしたナスがとてもジューシーで、ご飯もお酒も進む一品になります。
「カシミールブラックカレーソース」は重厚感あるスパイシーなエスニックカレーだけではなくて、フライのソースなどさまざまな使い方ができます。この汎用性がカレーの魅力なのです。
赤いカレーソースをご飯に混ぜてカレー風味のライスをつくる
●バターマサラオムライス
卵の中の赤いライスはクリーミーで甘くなめらか
次は、「バターマサラソース」でオムライスをつくりました。卵で包むケチャップライスは、普通はトマトケチャップのご飯ですが、それをカレーで仕上げてみました。鶏肉、玉ねぎ、ニンジン、ピーマンを炒めてご飯に混ぜました。
このソースは万人に愛される味付けで、どちらかというと甘めで、小さなお子様も大好きな日本人が食べやすい味です。
卵を焼いてケチャップライスならぬバターマサラライスにのせて、最後に「スパイストッピング 焙煎スパイステイスト」を添えて焙煎したクミン、コリアンダーの風味をアクセントにしました。カレーオムライスって新しいですよね。
「グリーンカレーソース」を麺メニューに
●グリーンカレーヌードル
ココナッツが香るコクのあるグリーンカレーヌードル
最後は「グリーンカレーソース」と中華麺のコラボです。「グリーンカレーソース」に水とおろし生しょうが、おろし生にんにくを加えて煮立たせてつくったスープを、茹で上げた中華麺に。
その上にラムのひき肉、細切りにしたニンジン、もやしを炒めてトッピングしました。ポイントはシャキシャキの野菜と麺とで食感の印象が変わるところです。
ラム肉を使うとより無国籍感が出ますし、麺はフォーなどもいいと思います。
「グリーンカレーソース」はココナッツミルクのコクがしっかりしていて、後味のバランスがとてもいいので、その味をいかして手を加えすぎないように考えました。
(2021年9月30日発行「素材のちから」第42号掲載記事)