ワインのおかわりを呼ぶシャルキュトリー
文・撮影/長尾謙一
料理/横田渉
ワインに合うシャルキュトリー5種
シャルキュティエがつくる本格派テリーヌが解凍してカットするだけで簡単に提供できる。風味の違う個性的な5種類の味わいで、ワインはさらにおいしさを増す。
・ポークのテリーヌ
・カラブリア風テリーヌ
・ラムとオリーブのテリーヌ
・仔牛のテリーヌ
・プロシュットコットのゼリー寄せ
(素材のちから第37号より)
細かな手仕事でつくられたテリーヌは、ワインを楽しむ最高のおつまみ
ワインにチーズは定番だが、もう一つ欠かせないのが〝シャルキュトリー〟だ。〝シャルキュトリー〟はハムや生ハム、ソーセージやサラミ、テリーヌやパテなど食肉の加工品のことで、独自のレシピでつくるそのバリエーションは実に豊富だ。
ワインと相性抜群の〝シャルキュトリー〟はもっと外食店で広まっていいはずなのだが、つくり方がかなり難しく手間がかかる。シャルキュトリーをつくる職人はシャルキュティエと呼ばれ、彼らの肉を選ぶ力や加工する技術は専門性が高く、店でつくって提供するには少しハードルが高い。
そこで、「ワインに合うシャルキュトリー」としてモンテ物産(株)が販売するテリーヌを5種類ご紹介したい。
試食してみると、実に丁寧につくっているのが分かる。原料の厳選は言うまでもないが、特に豚は九州産にこだわっている。仕入れた肉の部位を丁寧にトリミングし、チョッパーにかけて挽き、独自のレシピでつくった材料を網脂を敷いたテリーヌ型に流し込む。これを適切な温度と時間で火入れし冷却していくが、この火入れこそ仕上がりを決める重要な技術の一つだ。
豚、仔羊、仔牛と肉種にもバリエーションを持たせ、オリーブの実、バジル、タイム、セージなどのハーブやスパイス、レンズ豆やひよこ豆、ピスタチオなど、たくさんの素材を組み合わせてつくられる5種類のオリジナルテリーヌは大量生産ではなく、一つ一つ丁寧に仕上げられるのだ。なめらかに溶ける脂の旨みをワインと一緒に楽しむと、この上ない最高のつまみに思わずもう一杯おかわりしてしまう。
今回、それぞれのテリーヌに合うワインをモンテ物産(株)のスタッフの皆さんに選んでいただいた。シャルキュティエの細かな手仕事と、おかわりをしたくなるワインとのマリアージュを拡大したテリーヌの断面を見ながらご紹介したい。
「ポークのテリーヌ」
●「ポークのテリーヌ」の特徴
「ポークのテリーヌ」は九州産の豚肉を100%使用し、豚肉とレバーの鮮度には特にこだわっている。豚肉のしっかりとした食感が持ち味だ。豚肉の旨みとマルサラ酒、レバー、香辛料の香りがとても心地よいオーソドックスなテリーヌだ。
●ワインとのマリアージュ
マルサラの風味がきいた「ポークのテリーヌ」には、マルサラと同じ産地であるシチリアの赤ワイン、「パッソ・デッレ・ムーレ」をお勧めいただいた。土着品種のネーロ・ダーヴォラをオーク樽で10か月熟成させて造り出されるこのワインは、重さや厚ぼったさを感じさせないエレガントな仕上がり。
マラスカチェリーやスパイス、バニラなどの豊かな香り、心地よいタンニンがあり、マルサラや香辛料、レバーの香りが感じられる味わい豊かな「ポークのテリーヌ」とお互いを引き立て合う。
「カラブリア風テリーヌ」
●「カラブリア風テリーヌ」の特徴
ンドゥイヤの香りと辛みを感じられるカラブリア州をイメージしたテリーヌ。ンドゥイヤとは唐辛子料理で有名な南イタリア、カラブリア州の特産品。豚肉に唐辛子を混ぜ込み、腸に詰めて熟成したペースト状のサラミ。ひよこ豆の旨みと食感もあり、ほどよい辛みの中に熟成した肉の旨みを感じる。2種類のパプリカも使いテリーヌに赤みを出している。
●ワインとのマリアージュ
「カラブリア風テリーヌ」には、カラブリアのワイン「ドゥーカ・サンフェリーチェ」がいいらしい。「ドゥーカ・サンフェリーチェ」は平均樹齢30〜40年の古木から収穫された土着品種のガリオッポを、樽を使わずに熟成させたワイン。
古木に由来するエレガントで複雑な果実味となめらかなタンニンがあり、ンドゥイヤのほどよい辛み、ひよこ豆のやさしい味わいも包み込んでくれる。
「ラムとオリーブのテリーヌ」
●「ラムとオリーブのテリーヌ」の特徴
仔羊とバジル、タイム、ローズマリー、セージ等のハーブ類を組み合わせた涼やかなテリーヌ。仔羊を別に塩漬けすることで肉の旨みを凝縮させ、ハーブ類と組み合わせることで仔羊独特の香りを引き立たせる。混ぜ込んだグリーンオリーブの食感と香りがテリーヌ全体の風味にアクセントをつけ、完成度を引き上げている。
●ワインとのマリアージュ
ラムといえばローマのアバッキオ(乳飲み仔羊のグリル)が有名。そこで「ラムとオリーブのテリーヌ」には「ローマ・ロッソ」をお勧めいただいた。モンテプルチアーノをベースに、ラツィオの土着品種であるチェザネーゼと国際品種のシラーをブレンドしたフォンタナ・カンディダの「ローマ・ロッソ」。
チェザネーゼの力強い果実味とシラーのスパイシーな風味が仔羊の旨み、ハーブの香りと好相性だ。
「仔牛のテリーヌ」
●「仔牛のテリーヌ」の特徴
塩漬けし旨みを凝縮させた仔牛のすね肉を12時間かけてやわらかくなるまでじっくりと火入れしている。仔牛肉を火入れした煮汁も煮こごり状にしてテリーヌに混ぜ込むことで、仔牛の旨みを感じられるように仕上げる。仔牛独特のやわらかな食感と旨みが楽しめ、レンズ豆のプチッとした食感が口の中で楽しいアクセントになっている。
●ワインとのマリアージュ
仔牛のデリケートな味わいには、やさしい「ピノ・ネーロ」がお勧め。サン・ミケーレ・アッピアーノ社のベースラインであるリネア・クラッシカの「ピノ・ネーロ」は、大樽での発酵・熟成により、やわらかい味わいに仕上がっている。
ラズベリーなどのベリーの香りが心地よく、奥行きのある豊かな味わいとなめらかな口当たりが仔牛の食感とよく合っている。
「プロシュットコットのゼリー寄せ」
●「プロシュットコットのゼリー寄せ」の特徴
九州産のハムと国産バジルを豚100%の自家製コンソメで固めたテリーヌ。自家製のコンソメは豚肉と香味野菜でブイヨンを取り、さらに豚ミンチと香味野菜で炊き込み味を深める。噛んだ時のコンソメゼリーの食感とプロシュットコットの旨みと、涼やかな見た目が楽しめる。
●ワインとのマリアージュ
「プロシュットコットのゼリー寄せ」は、フランス・ブルゴーニュ地方の〝ジャンボン・ペルシエ〟というハムとパセリをゼリーで寄せた郷土料理をイメージさせる。
これには樽で熟成したイタリア・ピエモンテ州のシャルドネ、「アンペリオ」がお勧め。「アンペリオ」は30%をバリックで発酵・熟成させており、繊細な樽の風味とすっきりとした酸がゼリー寄せの旨みとパセリの香りによく合う。
(2020年3月31日発行「素材のちから」第37号掲載記事)
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