人の噂も75日、というのはスマホやSNSがなかった頃の話で
「君が面白半分で言ったことに尾ひれや背びれがついて変なデマになっちゃってんの!お願いだから訂正してくれ!」
と怒っているのは大田。それに対して三田は反論する。
「火のないところに煙は立たないって言うじゃないですか。大田さんならやりかねない、ありうる話だと思うから広がるんです。僕が訂正したところでまた誰かが言いふらしますって」
「だからってよぉ、俺が酒に酔って道端のカーネルサンダースとペコちゃんとサトちゃんムーバーを家にお持ち帰りしたっていうのはないわ。ありえないし、面白くない」
「大田さんが無駄にマッチョだからですよ。その立派な大胸筋と上腕筋がなければ運ぶの無理無理と思いますけど、ああ大田さん、あのムダマッチョな人ね、ありえるね、って自ら信憑性増してるんです」
「ペコちゃんぐらいなら運べるかもしんないけど、カーネルとかサトちゃんは無理だろ!」
「いやー、分かんないっすよ。酒飲んだ時の大田さんてめちゃ元気ですし、スナックのママをお姫様抱っこしたりするし、三つまとめてじゃなくて一晩一体ならいけそうと思いました」
「そうやってお前が妄想したことをさも真実のように話すから、みんなが信じちゃうんじゃないか!」
「でもこれ見てください。カーネルと大田さんが肩を組んでいる写真、カーネルと大田さんがキスしてる写真、終電きちゃいますよと言ってるのにカーネルから離れずにめそめそ泣いてる写真」
「たしかに俺はカーネルが大好きだ。あのがっちりとした体格、あの優しい瞳をみると吸い寄せられる。でも家にカーネルがいても何もいいことないだろ!仮に連れて帰ったとしても翌朝戻すわ!」
「もうこの際、ケンタッキーのお客様窓口みたいなとこにお願いして一体購入したらどうすか?カーネルを僕にください!絶対に幸せにします!って。これうけるわー。Twitterにメモっとこ」
「だからぁ、そういう妄想をネットに書くんじゃない!」
◇◇◇
翌朝。自宅玄関に2メートル近い人影があり驚く大田。
「あー…またやっちゃった…」