おじいちゃんへ
今日あなたは、山を登り切り、そして私たちの手が届かぬところへ行ってしまった。
頂上からはどんな景色が見えましたか?めんどくさがりで、動くのが嫌いなあなたが山を登ったのだ。きっと、さぞ素晴らしい景色が広がっていたんだろうと思います。
でも、もう少し待って欲しかった。だって私はあなたのことを何も知らない。あなたは何も教えてくれなかった。何も教えてくれてないのに、山を登ってしまった。
あなたがどんな家で育ったのか。戦争中の疎開先の新潟は?仕事での辛さは?世界を旅する番組を見るのに旅行を嫌うのはなぜ?
分からないことが多すぎて、あなたと2人リビングになった時、私は無言を貫くことが多かったです。いつしかその空間が嫌いになり、そして避けてもいました。
でも今思うと、もっと話しておくべきで、あなたを知るべきだった。だってあまりにも早すぎたから。
あなたがたまに話してくれる、戦争中イチジク畑に逃げ込んだ話。実は好きだったんですよ。
一緒にご飯に行ったことも、片手で数えられるくらいしかありません。あなたが好きなナポリタンをレストランで食べながら、私の知らないあなたの昔を、聞いてみたいものでした。
頑固で自己中心的でワガママなあなた。仕事仕事で友達もいなかった。下品なとこも嫌だった。そんなあなたを軽く見下し、なんて嫌な人なんだと幾度も思いました。
でもなぜだろう。今思い返すと、楽しい思い出が多いのです。
あなたが得意げにチャーハンをつくる姿。夏祭り絶対にあなたが壊す水風船こと。頑張って育ててた小さな葡萄たち。
実はただ不器用で、周りにかっこよくありたい、そんな人なんだと気がつきました。
本当に今更なのです。遅すぎたのです。最後まであなたは、私に弱いところを見せてくれなかった。今日も絵を見せるとニコッと笑ってくれた。なんて強いんだと思いました。
最後まで生きようとするあなたは本当にかっこよかったです。お疲れ様でした。
強くなります。見ててください。
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