楽曲と真剣に向き合った、アイドルの原点とは向き合わなかったシャニアニ アニメアイドルマスターシャイニーカラーズ感想
まずはじめに
アニメアイドルマスターシャイニーカラーズ1stシーズン10話まで、およびenza版アイドルマスターシャイニーカラーズのコミュのネタバレを含みます。
シャニアニの良かった所
タイトルにもある通り、楽曲に真剣に向き合ってくれた部分。
16人全員漏らさずに描こう、表情豊かにしよう、視線の細かな揺れ動きで感情を表現しよう、楽曲の魅力を伝えよう、楽曲をベースにしてユニットの方向性やアイドル性を表現しよう、ステージ毎に音響を変えよう。
この取り組みは素晴らしかった。
3Dモデルに関しても2Dアニメに寄せすぎるのではなく、アイドルの動きに差異を付ける事やリアル寄りの動きにするという意味ではこれが正解だったと思う。
歌をメインにしたストーリーという視点で見れば特に良かったのは2話。
仕事でライブに来れなかった人にも見せたい、より多くの人に知ってもらいたいと普段届かない所に自分たちの歌を届けようとするアンティーカ。
歌詞の掘り下げは既存プレイヤーからも新しい視点で新鮮味があった。
知らない人に届ける、これはアンティーカのユニットテーマとして掲げられている物の一つで代表的なのがストーリー・ストーリーの恋鐘だろう。
アイドルは何も知らない人にネットで叩かれるのが常。
でもそれってちゃんと自分たちの事を知らないだけ。
じゃあ全員に知ってもらえば解決!
これが月岡恋鐘の思考。
強い、強すぎる。
アンティーカは宇宙一ばい。
4話の放クラ回も周りを巻き込んで盛り上がろう!という放課後クライマックスガールズがライブを通してどうしたいかがよく表現されていた。
1~3話で地道に商店街で仕事をこなしていた事も4話に繋がっていて、話の途中で視点が切り替わって分かり辛いと文句も出ていたザッピングもこれがやりたかったんだなという事がここで分かるように出来ている。
評判が悪かった6話、7話のW.I.N.G.編だが個人的にはめちゃくちゃ好きだ。
正直アニメの構成でイルミネの1stライブに客が集まっていたのもW.I.N.G.に出場出来るのも全く意味が分からないので8~10話の要らん部分を少しずつ削って5話の前にW.I.N.G.予選編などがあると良かったなとは思っているが、アイドル達が自分たちの練習風景や仕事を撮った密着映像とドキュメンタリーという形で大会本番を全て省略して負けた後の姿だけを見せるというのは非常に好みだった。
ライバルユニットという存在を描く事がまず不可能であり、同じ事務所のユニット同士の争いという形にもしたくない。
楽曲は既存曲ばかりなので11話12話にライブシーンは置いておきたい。
そしてこの子達を優勝させるのは『あなた』の仕事ですよというメッセージ。
その辺を考慮すればこの形しか無いなと思っている。
朝の番組であの尺無いだろというツッコミどころはあるが、一番惜しい所まで行ったからこそ朝のレッスンまで時間があるのに寮に居ないしユニットメンバーで一緒に番組を見ていないアンティーカの悔しさを描けている。
そして次に進む為の準備を誰よりも早く進めているのもアンティーカ。
事務所で一番売れている説得力がある。
その後、摩美々がまだレッスンを続けようと言う場面はここまで摩美々の不真面目さやサボり癖が描かれてないので勿体ない場面。
2018年のアイドルたちはキャラクターとして悪い部分があるのをちゃんと見せて個性を際立たせていた。
アニメはそれが無いせいで起伏が無いと言われている気がする。
今の担当アイドルが好きなPから見れば「ウチの担当が誤解される!」と言われそうな事も平気でやっていたのが2018年のシャニマスだが、灯織以外そこと向き合ってないように感じられた。
会場に笑顔の花を咲かせられていたなら成功だと笑うアルストロメリア。
3話の脚本が酷すぎて描き切れていなかったアルストロメリアのスタンスはここでしっかり描けていた。
果穂の涙が負けて悔しいではなくて、皆と頑張ってきたこの時間が終わるのが寂しいなのも良かった。
巻き込んで盛り上げるだけではない、年齢がバラバラな5人で過ごす放課後はいつか終わる事を知っているからこそ、少し寄り道をさせてよと寂しそう笑うのも放課後クライマックスガールズのユニットの魅力の一つだ。
そして10話の合宿シーン。
全員バラバラの揃わないダンスは本当に良かった。
これぞ3Dアニメでやる意味があると思えた。
以上がシャニアニの良かった部分。
シャニアニの悪い部分
アイドル以外の絵作りが全て雑。
音楽が記憶に残らない。
間の取り方が酷い。
脚本はそこまで悪くない、絵と演出が全てを台無しにしている。
背景で語る、演出で魅せる、それがアニメじゃないんですか!?(CV:結川あさき)
で、ちょっとここからは脚本というか1話の話です。
櫻木真乃の軸の不在
まず6~7話感想で何故イルミネに触れなかったのかという部分から。
イルミネーションスターズというユニットは他のユニットと違って全員高校1年生の女の子だ。
そして実は全員が全員自分の事が好きじゃない。
変えたいと願う気持ちを奥底に秘めた子たち。
そんなスタートラインの3人が仲良くなって、自分には無い他の二人の凄い所を見て尊敬しあって、私の隣に貴女が居て欲しいんだ!というトライアングルを形成していく。
自分には無い物を持っている事に嫉妬するのではなく、この子が隣に居てくれるから私は私でいいんだと思える、この子達と前に進めるなら私を好きになれる。
そんな関係性だ。
コミュが進めば進むほどイルミネの3人が厳しい世界で優しい視点を忘れない子たちである事、無いと知りながら永遠という言葉を信じてやまない事、他者とのコミュニケーションや対話がこのユニットの成長の肝だというのが分かっていくのでイルミネーションスターズがステージで見せたい瞳に輝く無限の可能性というのも理解出来るようになるのだけれど、アニメの内容では3人の関係性だけで終わってしまうためアルストロメリアのテーマと区別し辛い。
まだまだ上手く行かない事ばかりだけど頑張っていこう、他の二人の良い所は私が良く知ってるしステージを見た皆に楽しんでもらえたら。
これどっちのユニットの話か分かります?分からないと思う。
enza版のコミュもすっ飛ばしているのでアニメだけ見た人にはなんでこの子達が主人公なのか本当の意味で理解されていないんじゃないだろうか。
とても描くのが難しいのが彼女たち。
そしてその伝わり辛さ。
その1番の理由が櫻木真乃の軸の不在。
彼女の1番最初のファン。
そう、鳩さんだ。
一切ふざけてない、真面目な話なので聞いて欲しい。
櫻木真乃は鳥と話す、そしてほわほわしている。
彼女がクラスで浮いている理由はここにある。
そしてプロデューサーが何故真乃をスカウトしたか。
すでにファンが居たからだ。
プロデューサー=最初のファン。
アイマスの不文律の否定。
それを信号機のセンターでやってのけた事に俺は感動したんだ。
すでにファンが居る歌声を持っているからシャニPは真乃をスカウトしたんです。
これが櫻木真乃の一番大事な部分で、原点だと俺は思っている。
真乃が悩みを話すのも家で飼っている鳩のピーちゃんと公園の鳩さんだ。
鳩さんが居る事で真乃は今抱いている感情の言語化が出来る。
鳩さんを通して自分と対話する事で自分の輪郭を形作っていく。
それをアニメで一切書かずカットしたせいで櫻木真乃が何故アイドルになったのかが全く伝わらない1話になっている。
シャニソンではフォローされてる?部屋に一瞬だけ映る見切れピーちゃん?11話冒頭にちゃんと出てくる?
知らねーよアニメに最初から出して会話させろっつってんの。
さっきも書いたがイルミネーションスターズにおいて重要な要素に「対話」がある。
その対話を1話から取り上げてしまった事がすでに櫻木真乃を描く気が無いように感じてしまった。
これは【ほわっとスマイル】TRUE ENDのネタバレになるが、W.I.N.G.に優勝して忙しくなり、公園に来る時間が取れず鳩さんとお話しする時間が無くなった、でも今充実してて楽しいんですと語るシーンがある。
鳩さんは櫻木真乃の成長を描く上で不可欠な要素のはずなんだ。
教室から見上げる空の色の演出で感情の移り変わり?
好きだよ俺もそういうの。
実在性(笑)を大事にしてるもんね、鳥と話す女の子が主人公じゃダメだよね。
ふざけるなよ
2018年を描くなら2018年のアイドルと向き合ってくれ。
真乃は鳥と話せ。
摩美々は仕事をサボれ。
夏葉はダンベル持って読書しろ、プロテインを料理に入れろ。
凛世は……ニコニコでもロボット扱いだからいいか……
なんせ初期のアイドルから向き合う事をシャニアニは避けている。
今のシャニマスを基準にしてキャラクターとして描く事を避けて、悪い部分を描くのを避けて、リアルな空気感を描きたいのにそれに絵が追い付かないくらいならもっと普通のアニメにして欲しかった。
そんなキャラクターたちが少しずつ成長してリアルな方向に世界の見え方も変わるのが2018~2019のシャニマスの面白さだった。
それを描いて欲しかった。
そして2019~2020を描くseason2には期待してる。
頑張ってくれシャニアニ。
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