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波動竜騎士 ドラゴエクィテス


このカードがアニメで登場したのは2010年で俺は小4だった。従兄弟の影響で遊戯王に手を出し始めてからは当時放送していたアニメ遊戯王5d'sを毎週水曜の18時から欠かさず観るくらいのカードゲーマー少年になっていた。とはいえまだ潤沢に金を持っていたわけではなかったので、当時俺が使っていたデッキというのは万代書店で安く売っていたノーマールカード500枚セットから適当に使えそうなカードを40枚選んだ、到底強いとはいえないただのカードの束だった。まあ当時は周りの友達と一緒に決闘して遊べるだけで良かったし、強さとかには全くこだわっていなかったのでそんなデッキでも楽しめていた。

5d'sではエクストラモンスターはシンクロモンスターしか登場していなかったのだが主人公不動遊星が唐突にこのモンスターを融合召喚したのが印象的で、当時の俺にはとてもカッコよく思えた。それにこのカードはデュエリスト・レボリューションというパックの表紙にもなっていた。

特に知識もない小学生の少年からしたら、パックで一番の当たりは表紙のカードだったし(実際には違う場合がほとんど)、少ない小遣いでちょっとしかパックを買えない俺達からしたら表紙のカードを当てるということは次の日クラスの男友達に自慢しまくるくらいの出来事だった。尚且つアニメでカッコよく登場していたので、俺は波動竜騎士 ドラゴエクィテスが当時めちゃくちゃ欲しかった。


このパックが発売された時期のある日、小6の兄が上履きのサイズが合わなくなったので母に連れられ兄と俺は近所の制服屋へ行った。そこの制服屋は学生服以外には婦人服と化粧品を主に取り扱っていた。兄の小学生にしては大きい足のサイズが影響していたのか、上履きを買いに来ただけなのに俺は店内で30分以上待たされていた。その時の俺は携帯もゲーム機も持っていなかったのでただひたすら暇で、狭い店内をウロウロ歩いていたりしたのだが、小4の俺には婦人服やら化粧品などを見ていても全く面白くなくすぐ飽きてしまった。店内を何周しても兄と母と店のおばちゃんは色々と話したり試し履きをし続けていて、遂に俺も嫌になって向かいにあるデイリーマートで時間を潰すと母に言ってデイリーへ一人で行くことにした。


カードゲーム少年の俺はデイリーに入ると真っ直ぐにパックが並んでいるコーナーへ行き物色を始めた。ここのデイリーはパックのサンプルが置いてあって、それをレジに持っていくシステムではなく実際に売り場にパックが置いてあるシステムだったので俺は色々なパックを触ったりして時間を潰していた。この当時の俺はサーチ(パックの上からカードを擦らしたりしてレアカードが入っているかを調べるもの)のやり方なんて知らなかったので、目的がある訳ではなくただ触りたい感情にしたがってパックを触っていた。そんなこんなで20分以上待っていても母達は一向に店から出てくる気配がない。いくらカード大好き少年でも流石に飽きてきたのでさっきの制服屋と同じように店内をウロウロと歩き始めた。雑誌コーナーで適当に立ち読みしたり、ショーケースに並ぶ美味しそうなパンを眺めたりいていて更に20分くらい経ったのだが母達はまだまだ出てくる気配がない。俺はデイリーにも飽きてきたのだが、制服屋へ戻った方デイリーの何倍も退屈だと思ったのでデイリーで母達を待ち続けた。それからはずっとパック売り場の前でぼーーーっと立って待っていた。計40分以上店にいて、遂にはパック売り場の前で棒立ちし始めた当時小4の俺を見て流石に心配になったのか、レジから店員が近寄ってきて「どうかしたの?誰か待ってるの?」と聞かれた。俺はお母さんを待っている、と伝えると少し安心した表情で店員はレジへ戻って行った。

デイリーに入ってから1時間以上になり始めると、もしかしたら俺の存在を忘れてもう家に帰ってしまったのではないかという思いがよぎり始めた。不安になってきたので一回制服屋へ戻ろうかと何度も考えたが、そうするとさっきの店員さんが変に心配するんじゃないかと思い躊躇った。そうして不安と戦っていると、コンビニのドアが開く音がした。俺はハッとして顔を上げると母と兄が迎えにきていた。母は、コンビニでこんな長い時間何してたの?と不思議そうに聞いてきた。そして長い時間待たせちゃったから遊戯王カードを買ってあげる、と当時の俺にとって何よりも嬉しい通達をしてきた。さっきまでの不安から一変して俺はテンションが上がり、発売したてのデュエリスト・レボリューションを上から2パックとって母に買ってもらった。

帰りの車内で聞くと、あの後ついでだから新しい体育着を買っていたりしたので時間がかかったらしい。まあパックを手に持つ俺にとってそんなことはどうでも良かった。そして勢いよくパックを開けた。遊戯王のパックは1パックに5枚入っていて、基本的には上から5枚目に字レア、当たりのパックは上から5枚目にウルトラレアが入っている。俺は意気揚々と上から5枚目のカードを確認するとそこには波動竜騎士 ドラゴエクィテスがいた。ずっと欲しかったカードが1パック目で当たったことに感動して俺は車内の兄と母にドラゴエクィテスを見せて自慢し続けた。

翌日小学校へ行くと、男友達に2パック買っただけでドラゴエクィテスを当てたことを自慢し続けた。みんなからいいなー、とかすげぇと言われてめちゃくちゃ気持ちよかったことを覚えている。

ドラゴエクィテスは実際にはシングルで200円くらいで買える、別に大したことないカードだったのだが当時の俺にとってそれは宝物だった。

俺の少年時代の良き思い出