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東南アジアのPlacemakingを理解するコンテクスト。

しばらく前になってしまいましたが、2019年11月3日から8日まで、マレーシアで開催されたPlacemaker Week ASEANに参加しました。

国際的なPlacemaker weekのイベントはオランダ、アムステルダムから始まったもので、これまで欧米各地で開催されてきました。2019年はASEANー東南アジアの都市をテーマにした内容でマレーシアが舞台に。首都のクアラルンプールに拠点を置く第三セクター機関であるThinkcityがホストになり開催されました。イベントは国際会議という名前が付いていましたが実務者が多く参加しており、参加者は他の実務者との交流を楽しんでいたのが印象的でした。(私は実務者ではないですが、いろいろなお話聞かせてもらいました)

プログラムはペナン島の世界遺産登録地での視察&ワークショップから始まり、米国の団体Project for Public SpacesのCynthia Nikitin氏の講義兼ワークショップ(以前ソトノバで「Placemakingの5つのステップ」について英訳をさせていただきました)、各国の実践者のプレゼンテーション、研究者のキーノートスピーチなど非常に様々でした。

すべてまとめる余力がないため、、私が関心を持っている東南アジア(+東アジアとして香港)の取り組みについて、東南アジアの都市ならではの事象と、それを理解するための文脈/コンテクストについて紹介したいと思います。

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(Day-3 ワークショップにて、ウォーターフロント開発地の評価をまとめる)

このイベントで興味深かったのは、地方行政の計画と実施が不在の東南アジア+香港共通の問題ともいえる「そもそも公共空間が不足している」という事態に対して各国の実務家がどのような取り組みをしており、克服しようとしているかという点でした。

WHOの定義によると、緑地面積*は1人あたり9㎡以上が理想という指標がありますが、アジアの何カ国かを比べてみると、例えば

マレーシアの首都クアラルンプール 11㎡ (Pemandu’s  annual report 2013)

インドネシアの首都ジャカルタ 7.1㎡ (中央統計庁 2013年)

香港 2.86㎡ (写真参照)

ミャンマーの首位都市ヤンゴン 0.41㎡  (NGOアナザー・デベロップメント 2019)

というように、基準に達していない国も多い状態です。

*当該面積は農地や山林を除く、主に公園や広場面積と思料

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(Day-4, ASEAN Panelにて、香港の緑地面積について紹介)

そんななか、各国では解決策として既存の空間に公共空間をつくりだす動きが盛んになっているようです。これが、まさにPlacemakingということ。

例えばOne Bite DesignのSarah Mui氏の発表では、

集合住宅における家族の居住スペースすら十分にない香港では、彼女がプロジェクトを開始するにあたって地域の人々が「家族写真を撮れる場所が欲しい」と言ったことを受けて、商店街の空き店舗の1階を開放し、小さなフォトスタジオをつくり、地域の人々が自宅の居間のようにくつろげる場を提供したこと。そうやって家族という単位のコミュニティが外へ広がっていき、地域社会とかかわりを深めていくという変化が報告されていました。

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(Day-5 プレゼンテーションにて、Mui氏の発表)

同じく香港でDay-4のパネル発表では

広場を訪れる人々に小さくて軽いキューブを貸し出す取り組みが紹介されました。それぞれが思い思いの場所にキューブを置いて腰掛けることで、近くに座った知らない人どうしの会話が生まれる様子を見ることができ印象的でした。

また、私が仕事で訪れているヤンゴンでも、Emilie Roell氏がDoh Eain(ミャンマー語で私たちの家という意味)の活動を紹介していました。かつてヤンゴンでは路地で談笑したりイスを置いて日中滞在する人が多かったものの、近年は人口も増え生活環境が悪化し、路地がゴミ捨て場のような状態になっている場所も多いとのこと。彼女らは路地を清掃し、壁に明るいペイントを施したり、地域住民が利用しやすくなるよう整備をしているようでした。

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(Day-5 プレゼンテーションにて、Roell氏がかつてのヤンゴンの路地利用について紹介)

このような取り組みは、欧米や日本でもあるような正統派のアプローチなのでしょうが、改めて東南アジアのコンテクストに照らして考えると理にかなっているというか、効果的な取り組みなんだろうなと感じました。

私自身、東南アジア社会とかかわる中で、新しい公共空間をつくりだすのは非常に難しいことだろうと容易に想像できます。例えば行政が所有している公有地は利権がらみで開発が困難とか、そもそも地方政府の予算が十分でないとか、政策決定者が重要視していないため計画立案が難しいとか、原因は分かっていながらも簡単には解決できない状況があります。

だからこそ、既存の公共空間や民地を利用して、地域住民にとってのCommonな場所をつくりあげている事例(必ずしも正式な制度に則っていなくても形として公共の場ができているという事実)を知ることができて興味深かったです。また、そのような状況だからこそ、東南アジアでPlacemaking が流行っていることを納得できる気がします。

個人的には、東南アジア諸国でPlacemakingの活動を支える素地がどのようにできあがっているのか(団体と地域住民の関係とか)、このようなトレンドを計画に昇華させることができないかなど、もう少し知りたいなという気持ちがあります。。

ちなみに今回取りあげたミャンマー、ヤンゴンのDoh Eainという団体。近々詳しい活動内容を聞くことができそうです。またどこかで報告できるかも、楽しみです!


終◆



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