脊髄損傷とアルコール
「飲み会に参加してみたいけれど、自分にはハードルが高いのでは?」と感じている脊髄損傷の方も多いかもしれません。しかし、ちょっとした知識や準備をすれば、飲み会をより安全に、そして楽しく過ごすことができます。
今回は脊髄損傷者に対するアルコールの影響や飲み会の時にあると便利なアイテムについて解説し、実践的なヒントをお届けします。脊髄損傷者の方が飲み会を楽しむために知っておきたいポイントをお伝えします。
1)アルコールが脊髄損傷者に与える影響
アルコールは神経系や循環器系に影響を及ぼします。
脊髄損傷者の場合、次のようなリスクが考えられます:
• 自律神経過反射(Autonomic Dysreflexia, AD)の誘発
アルコールやカフェインを多く含む飲料を摂取すると急激に膀胱に尿が溜まってしまいます。そのことが原因で第6胸髄(T6)以上の脊髄損傷者では血圧が急上昇するADが起こる場合があります。これは命に関わる危険な状態です。
• 体温調節機能への影響
アルコールは血管を拡張させるため、体温調節がより難しくなります。これにより冬場は低体温症、夏場は熱中症のリスクが高まります。(T6以上の損傷により体温調節障害は顕著となります)
• 転倒や外傷のリスク
アルコールによる酩酊は、車椅子操作のミスや車椅子からの転落リスクを増加させます。
2)アルコールの吸収率や利尿作用による影響
脊髄損傷者は、アルコールの吸収や代謝にも注意が必要です。
• アルコールは吸収が早い
脊髄損傷による筋量の減少や代謝変化のため、健常者よりもアルコールの影響が早く、そして強く現れることがあります。脊髄損傷後の初めての飲酒の際は少量から始め、自分の限界を把握することが大切です。受傷前のペースで飲まない方が良いでしょう。
• 利尿作用と排尿管理
アルコールは利尿作用があるため、頻回に排尿をする必要があります。これが自己導尿による排尿管理を行う脊髄損傷者にとっては非常に不便です。そのため飲み会の前には出来るだけ膀胱を空にしておく、お店のトイレの位置を確認し、自己導尿できるスペースがあるのか確認しておく、必要に応じて適切な排尿管理方法を準備しましょう。
以下にいくつか挙げておりますので参考になさってください。
3)飲み会のときの便利グッズ〜排尿関連物品
飲み会を安心して楽しむために役立つグッズをご紹介します
• 携帯用カテーテル
使い捨てのものを持参すると、外出先での排尿が簡単になり荷物が多少減ります。
• 尿取りパッドや防水シート
万が一のために持参しておくと安心です。座席が布製の場合にも安心して座れます。ちなみに座敷のように地べたに座る場合は車椅子クッションを床に置き、壁を背もたれにすると良いです。それなりに座位バランス能力が高くないとしんどいですが。
• 小型ポーチや収納ケース
排尿関連物品をさりげなく持ち運ぶのに便利です。飲み会の場で目立たないデザインのものを選ぶと良いでしょう。小型ポーチには手指消毒用アルコールや手清綿、フィルム石けんなども入れておくと便利です。
• レッグバッグ
飲み会の時だけレッグバッグをつける方もいますし、500mlの空のペットボトルを持参して、そこにカテーテルを入れて排尿する方もいます。
4)まとめ
アルコールを安全に楽しむためには、アルコールが身体にもたらす影響を理解すること、自分の体調や環境を考慮し、事前準備を怠らないことが重要です。
飲み会は、社会交流やリフレッシュの良い機会です。適切な知識と準備があれば、あなたにとっても楽しい時間になるはずです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事が、飲み会に参加する際の不安を解消し、新たな一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。これからも、役立つ情報をお届けしていきますので、ぜひまたお立ち寄りください。